空中戦
ヒューガ将軍は、善戦していた。赤目の飛びムカデは、無傷に近いが、青目の飛びムカデは、陥落寸前だ。青目を助けに行こうとする赤目に、ヒューガが立ちふさがっていた。おかげで、他の兵士は、安心して青目を攻撃出来た。
ヒューガをサポートしているバーダ兄弟の弟、ホウの背中にシャーンが乗っている。ここにヒロが来た。
「戦況は?」
「順調だ。だが、時間が掛かる」
「ギャオーーン〈来たか〉!」
ホウの所にいるヒロを見つけたヒューガ将軍が、赤目をけん制しつつやって来た。
「ヒューガ、通信は、聞いていたんだ。反重力生物なら、ガイガイオウが対応できる。ガイガイオウも、反重力生物だ。重力には反発しているが、反重力同士なら同じ土俵だろ。ガイガイオウを乗せて戦ってくれ。だけど慣れるまで時間がかかるとおもう。それまで、オレが時間稼ぎをするよ」
「分かった。ホウ、ハイと替ってくれ。シャーン、秘策があるんだろ、オレも一緒に青目に行こうか」
「ギャオーーーーン(赤目を頼む)」
「ヒロ、すまん。アリーシャを呼んでくれ。ホウと、空中戦の打ち合わせができた。後は、攻撃するだけだ」
シャーンは、空中をジャンプで、飛び回る気だ。頭と足には、攻撃が通る。無茶をするのが目に浮かぶ。
「了解」
アリーシャが居れば、いざというときがあっても、シャーンが地上に落ちることは無い。ヒロは、シャーンの作戦を認めた。
「アリーシャ、シャーンを頼む。無茶する気だ。地上に落ちそうになったら助けてやってくれ」
・わかった
召喚獣の間で、ヒロの通信は、みんな認識している。ラヴィとノーマが、それぞれ、ゼオとアギトに、このことを伝えた。
アリーシャが、カインに乗ってやってきた。カインには、ヒロと同じ飛翔装置を付けている。アリーシャも単独で飛べるが、遅い。カインには、レーザービーム砲がある。いざとなったら、これでアリーシャを守る。
ヒューガとホウが、青目に向かった。それを、赤目が追う。ヒロは、赤目を、ライトセーバーでジャストガードした。赤目からすれば、自分の口元に飛び込んだヒロは、格好の得物のはずなのに、大きく吹き飛ばされてしまう。怒った赤目が、ターゲットをヒューガから、ヒロに変えた。
「ライトセーバーは、電磁波の光刃で、出来ている。重力波に強いんだよ」
たぶん言葉は通じないだろうが、種明かしをするヒロ。赤目が、口の鎌でヒロを鋏もうとする。ヒロは、また、ジャストガードで、赤目を吹き飛ばした。
コォーーーーーーーーー ギギギギ、ギギギギ
飛びムカデは、歯ぎしりするように、目を更に赤く光らせた。
コウとシャーンは、善戦しているワイバーン達の中に飛び込んだ。青目は、胴体の足を、ほぼ、捥がれで、まる裸同然だ。しかし、健常で、他の足より長い前足が残っている。この足に、翼をひっかけられたワイバーンが、戦線離脱を余儀なくされていた。
ハイと、ガイガイオウのコンビは、青目の前から動かず、青目を引き付けている。そこに、コウとシャーンが突っ込んだ。コウが、青目の真ん前に突進、シャーンが、ジャンプして、青目の頭に爆発するキックをお見舞いした。
「ライダーキック」
これ、ヒロの命名。
コウは、すかさず、反転して、シャーンの着地点に移動。シャーンを回収する。これを、永遠に続ける気だ。
青目は、今までで、最大の攻撃を受けてしまった。コーーーと吠えながら、ギギン、ギギンと、シャーンと、コウを追いかける。そこに、ヒューガがやってきた。
「ハイ! コウと替れ。ガイガイオウは、オレに乗れ。オレを反重力で支えてくれ。なんでも、反重力同士なら引き合うそうだ」
「ギャウ?(なんだって?)」
「やってもいいが、体が急に軽くなるぞ。自分の力に、吹っ飛ばないでくれよ」
「実践で、やるしかないだろ」
ガイガイオウが、ヒューガに飛び移った。ガイガイオウが、ヒューガを軽くする。最初、ヒューガは、ギャーーーーーーーーと、驚くほど、上空に舞い上がってしまった。
「浮くことを考えるな。移動だけ考えろ」
「すごいな、衛星軌道まで、吹っ飛ぶかと思ったぞ」
「実際そうなる。気を付けてくれ。ヒロには悪いが、少し練習だ」
二人は、そこで、旋回を始めた。
青目の飛びムカデは、シャーンのライダーキックで、目がにじんで、ずいぶん前が見えなくなっていた。死に物狂いで、前足を振り回す。シャーンがそれにひっかかり、コウが着地点を見誤った。地上に落ちて行くシャーン。
「コウ・フウ」
シャーンに、虹色に滲んだ空気の壁が掛かる。アリーシャが、シャーンをコウ・フウで、支えた。
「アリーシャ、来たか」
「無茶しないで。カインが居なかったら、間に合わなかったわ。私を待ってよ」
「カイン、ありがとな」
「バウ!」
「オレを、コウに送ってくれ。あの、邪魔な、前足を狙いたいんだ。サポート頼む」
「わかった。マ・フウ」
アリーシャが、シャーンをバインドした。コウが、すかさず、シャーンを拾う。
「アリーシャ、行くぞ」
「飛びムカデの前にエアーバリヤーを張るわ。それを蹴って」
他の者には見にくいが、シャーンには、虹色に滲んだ空気の層が良く見える。シャーンは、この、空気の壁を蹴って、多角的な攻撃をする。捉えにくい前足に、横からライダーキックをお見舞いした。
「ライダーキック」
ボガン!
コォーーーー
今まで、胴体の足を落としても、平気な顔をしていた青目が、悲鳴を上げた。この足が無くなるのは困るのだろう。
「悪いな」
シャーンの攻撃は、これで終わらない。別の場所にできた空気の壁を蹴り、ダブルキックを青目の前足に当てる。
「ダブルキック」
ボガン、ボガン
コオーーーーーーーーーーーーー
左前脚が落ちた。
青目が逃走を始める。
「アリーシャ、逃がすな」
「エルフ使いが、粗いわ。エアーバリヤー、コウ・フウ」
空中に巨大なバリヤーが形成され、逃げる青目の前に壁となって表れた。
空中で、予期しない壁にぶつかった青目が、混乱する。
勝気だ。コウが、ここにいる、全ワイバーンに、通達した。
「ギャオーーーーン〈総攻撃〉」
ワイバーン達に体を縦割りにされ、身もだえする青目。戦意を完全に喪失した。それを見た赤目が、ギギギギ、ギギギギと、警告音を発する。青目の戦意がその音に反応して復活する。しかし、片手を捥がれ、反撃が弱い。
「アリーシャ、オレのエネルギーを満タンにしてくれ」
「フウ!!!」
シャーンの腰にある風車が高速回転を始め、光り出した。
「コウ、頼む」
コウが、飛びムカデの頭めがけて突進した。シャーンがそこからジャンプ。
「ウルトラ、ライダーキック」
これも、ヒロの命名。
シャーンの足は、炎のように燃えだした。そして、更に明るく光る。その光が全身に伝播した。一瞬、ずれたのではないかというぐらい、シャーンが、飛びムカデの前で加速した。
ドガンと最初、青目の頭に当たり、その後バッゴーーーーーーーンと、大爆発。
ギギッ?
飛びムカデが、意識を失って地上に落ちて行く。
ドギャオーーーーン
歓声を上げるワイバーン達。
それを見た赤目が、ヒロを置いて、東の山に逃げだした。
そこに、壁のように立ちふさがる東のワイバーン達。ハガラ将軍が、「ヒューガは、何している」と、怒りながら、前線に出て来た。
ハガラ将軍の獲物は、蛮刀。空中で、踊るように舞う。スピードタイプの人だ。ヒューガも、最近そうなった。ヒューガは、ハガラ将軍に師事した。ハガラ将軍は、弟子のヒューガが可愛いものだから、よけい腹が立つ。「赤目をタオ草原から出すな」と、戦士たちに厳命した。




