転生者の町
浮き島の南側に行くと小高い山が終わり、平野になった。そこに町があった。アリーシャの家は、町から外れた森の中にあるのだが、この町が気になる。だから、この町を見下ろすことができる丘の上で、移動するのをやめた。
「ぎゃうん?」
ラヴィが、たぶん、アリーシャの家は、まだ遠いよ。と、声をかけてきた。
「あの町だけど、浮き島に来るときに、転生者の町を先に調べといただろ。似てないか」
「あぎゃー」
「ちょっと寄っていこう」
そんな話をしているときに、ノーマの復帰サインがコールされた。ラヴィを翼竜にしてしまったことだし、約束だから、呼ぶことにした。
「ノーマ召喚」
「ただいまー」
ノーマは、緊張がとけて、緩い感じで現れた。
「ぎゃう」
「ラヴィ、翼竜に戻っちゃったの!」
「ジャストモードだよ。アリーシャの家が遠かったから浮遊アイテムを使ったんだ」
「成る程。それで、ここは、どこ?」
ノーマは、辺りを見回した。
「浮き島の南半球さ。ラヴィも、人形に戻りたいかい」
「ぎゃ! ぎゃうぎゃう」
「このままでいいって。いやな予感がするんだって」
「オレもだ」
ノーマは、魚人族の可愛い格好をしていた。スパンコールのようなキラキラ輝く服を着ている。
「悪いんだけど、布の服を、魔導士のローブを羽織ってくれないか。じゃないと、魚人だってばれる。それから、普通に歩く様にしてくれ。浮くなよ」
「エルフ界って、勝手に来ちゃいけないんだったっけ」
「それも含めてさ。あの町は、ラヴィもオレも見覚えがあるんだ」
ノーマは、魔導士のローブを着て全身を覆った。
おれたちは、町まで歩くことにした。町の入り口に来たとき、いやな予感が当たった。入口の看板には、『エルフに転生おめでとう』と、ある。ここは、転生者の町だ。
町に入ると、エルフしかいない。
エルフたちは、ヒロを見つけて集まってきた。
「火龍王だ、火龍王が来たぞ」
火龍王とは、オレの二つ名だ。ラヴィが、火龍最高峰なので、そう呼ばれている。
こいつらも、巻き込まれていたんだ
オレは、ノーマに目くばせした。
「全部、オレが答える」
「わかった」
「ぎゃう」
町の中央広場まで歩くと、そこから先には、進めそうもないぐらい、エルフが集まってきた。ここで、おれは、新しい浮遊アイテムを剣にセットした。何があるかわからない。いつでも、ノーマを抱えて、ここから飛び上がれるようにした。
その一団から、見覚えのあるエルフが出てきた。
おれとラヴィもパーティー戦を経験している。最終ボスは、二人だけで勝てる相手ではない。パーティー戦をやると、向こうも情が移るのか、ギルドに誘ってくれる。だが、随分前から、その気になれなくなっていた。だから、「また、ボス戦で」と、言って別れる。何故なら、Lv20の時に、ギルドに入ったが、ギルドマスターに、「輪が乱れるからやめてくれ」と言われた。強すぎるのだ。おれは、また野良に戻ることになる。それを2度やり、もう、繰り返す気にはなれなかった。2度目は、ラヴィも嫌な思いをしている。
だが、この人は、嫌いではない。
Lv20の時のギルドマスター、シャオンは、おれと同じ剣士で、楯役なのだが、指示を出すために、中堅によくいるマスターだ。そのせいで、個人の実力はいまいち。どちらかというと、まとめ役で、雑務を引き受けてくれるお人よしだった。
「シャオンさん?」
「ヒロさんは、人のままここに来たんですね」
「ライナー渓谷を超えて、オーロラテイルのダンジョンから転移しました」
「・・・・・・、・・・・・・、・・・・・・」
シャオンが、黙りこくってしまった。そこに、同じギルドの人だろう。女性型のエルフが、シャオンの肩を揺すった。
シャオンが、ぽつぽつと話し出す。
「バベルの塔は見ていたんです。あなたは、レベル100ですか?」
「そうです。転生しませんでしたから」
「ここは、バーチャル世界ではない。ヒロさんも、そう、思っているでしょう」
「そうですが、ライトボードが出ます。ラヴィもサポート召喚されているので、ゲーム機能が残っていると思っています」
「ぎゃう」
「私たちは、ライトボードも、アイテムも出せない。ただのエルフです」
「そんな・・・」
「私をサーチしてみてください」
おれは、ライトボードを出して、シャオンをサーチした。エルフ、Lv5とある。
「エルフです。レベルは5」
「そうですか、1よりましだ。スキルはどうです」
「生きてます。やっぱり薬剤師を伸ばしたんですねLv86です」
「本当ですか!」
シャオンに生気が戻った。
「みなさん、聞きましたか。ゲーム機能は、全部死んでいない。今は、レベル相当のスキルしか使えないでしょうが、鍛冶スキルのある人は武器を作ってください。各職業スキルの人は、持ち場に。私たちのスキルは生きてます」
どよどよっとここに集まったエルフから、雑多な声が漏れた。
前に出たくなかったが、仕方ないか
おれは、元ギルドマスターを助けることにした。
「みんな、この世界のことは、オレが調べる。それまで、頑張ってくれ。よみがえりの転生システムが生きているかどうかは、わからない。現実世界をサーチ出来ない状態なんだ。みんな、死なないでくれ、ここで一番強いボスは、レベル20.キノコ人間だ。気を付けろ」
「何処にいました?」
「東の果てです。そこが、ゲートの出口でした。そこから来たんです」
おれは、もう一度声を上げた。
「さっき町の周りのモンスターを見た。最高で、レベルで5だ。シャオンさんは、もう、レベル5ある。オレのギルド長だったんだ。話を聞いてやってくれ」
やっと、どよめきが消えた。
おれは、小声で、シャオンに話した。
「すぐに戻れるかは、わかりません。でも、必ず戻ってきます」
「よかった。一番強い人のレベルがそのままでよかった」
シャオンは、泣きそうだ。それを先ほど、肩を押した女性のエルフが勇める。
「シャオン、みんなにもう一度声を掛けましょう。生きねば」
シャオンは、ずっと、まとまろうと、みんなに声をかけていたが、聞いてもらえなかった。やっと前に進める。




