ジャスト召喚
結局二人ともいなくなった。
「ずっとって、たぶん60Kmぐらいだと思うの」
ラヴィが言っているのは、バーチャル世界の距離だ。現実世界でも、それでも20Kmはある。
「久々に、飛翔アイテム使う?」
飛翔アイテム
初期の移動に使っていたアイテムで、歩くのより早い。しかし、一回行ったところは、ゲートをくぐれるようになるので、高レベルになると使わなくなる。だから、アイテムがいっぱい余っていた。
「そうだな、上から、浮を島も見たいし」
異次元ポケットから、浮遊石を出して剣にセットした。こうした方が、アイテムを割って一挙に使うより長持ちだ。その代り、ずっと剣にぶら下がっていることになる。しかし、レベル100にもなると、腕力が違う。剣士なので、片手で平気で持っていられるだろう。
浮遊アイテムを剣にセットしたのを見て、ラヴィが背中に抱き着いて来た。いつもだと、肩にとまるのだが、今は、大きすぎる。
「おいおい、サポートパートナーの竜になれよ」
「どうやって?」
「仕方ない、試してみるか。一回、セットを外すぞ。ステータス加算系の召喚でやってみよう」
「そっか、ジャスト召喚だと、サポートメインだもんね」
ステータス加算系のジャスト召喚は、召喚獣攻撃のエネルギー充填のバーは出てこない。だから、強力な召喚獣攻撃は出来なくなる。代わりに召喚獣のレベルによってプレーヤーのステータスを上げることができる。普通は、魔法使いしかいないパーティーが、前衛と後衛のメリハリをつけるのに使う。
「ジャスト召喚」
ライトボードの召喚獣の項目を替えると、ラヴィが、炎に包まれていつもの翼竜になって表れた。
「すごいぞ、サイズも少し大きいし、砂漠の秘宝と緑の宝珠のデザインがかっこいい」
「ぎゃう?」
「ちょっと待ってろ」
真実の鏡を出しっても、元のラヴィが映るだけだと思ったオレは、銀食器の皿を出した。ちょっとゆがむが、結構映って見える。
ラヴィは、皿の前で、何回も回って自分を映し、何回も砂漠の秘宝と、緑の宝珠に触って自分を確かめた。
こうやって見ると、確かに、女の子だよな
ラヴィを見ていて納得した。慌てて、衣服の項目を調べた。サーフセットが元に戻っている。なら、また、バトル召喚を掛けたら、ラヴィは、裸で現れることになる。一度家に帰して着替えさせればよかった。ラヴィ―の項目に、アイテムポケットが増えているから、現実の服は、そこに収納されるのだろう。
まあ、いいか、後で言えば
そう思って、剣を帯剣して鞘を持って飛ぶイメージをした。自分の全身と、肩に乗っているラヴィ―が緑に光りだしてふわふわ浮かぶ。ヒロは、一挙に大地を蹴って加速した。
「ぎゃおーーーーーん」
ラヴィが、気持ちよさそうに雄たけびをあげた。
上昇し、飛距離を伸ばしつつ、大地に着地する。そこで、また蹴る。ヒロたちは、浮き島の南半球を目指した。