6/6
【エピローグ】
灰熱病は、三週間で終息した。
患者の数がゼロになった日、ソニアが王都からの知らせを持ってきた。彼女は珍しく表情を崩して「本当に助かりました」と言う。僕は「よかったです」と返す。それだけで十分だった。
リオン・クラウスという名前が王都に広まっているらしい。行商人が教えてくれる。ギルドでも話題になっているとか、どこかの貴族が興味を持っているとか、色々聞こえてくる。
畑のブラックリーフは今日も元気だ。
フィアは朝から来て、デビルモスの収穫を手伝っている。手つきがずいぶん慣れている。最初は腰が引けていたのに、今は僕より丁寧に扱う。
ガルド爺さんは縁側で昼寝をしている。膝の湿布が効いているらしく、最近はよく歩くようになった。いいことだと思う。
その午後、ソニアが来る。
「ブラックモスの花が咲いたと聞いて」
「誰から聞いたんですか」
少し間がある。
「……通りすがりに」
グラン村に通りすがる人間はほとんどいない。終点の村だから。でも、何も言わない。
〈アイアンベルが機嫌がいい。〉
「そうか」
今日も毒草は元気だ。
それだけで、十分だった。




