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捨てられた薬師は、のんびり毒草園を育てます  作者: ジェミラン


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3/6

【第三幕】定着 ―― 小さな日常

三ヶ月が経つ。


畑は、見違えていた。


雑草だらけだった荒れ地に、いまは色とりどりの植物が整然と並んでいる。濃い緑のブラックリーフ、紫がかった茎のデビルモス、白い細い花をつけるアイアンベル。毒草ばかりだが、きちんと世話をされた植物というのは、なんというか、顔つきが違う。


村の人たちは近づいてはこないが、通りすがりに遠巻きで眺めるようになった。「なんか綺麗だな」と言っている声が聞こえる。以前は「気持ち悪い」と言われていたらしいので、前進だと思う。


ある朝、ガルド爺さんが畑まで来た。


「リオン、ちょっといいか」


「どうしました」


「膝がな。長年の付き合いなんだが、最近とくにいかん」


爺さんは右膝を指でとんとんと叩く。長年の農作業で痛めているらしく、雨の前日は特にひどいという。


僕は棚を少し探して、小さな布包みを取り出した。


「これ、試してみてください。ブラックリーフから作った湿布です。ひと晩貼って、様子を見てみて」


「……毒草の湿布か」


「はい」


爺さんはしばらく布包みを眺めて、それから「まあ、お前が言うなら」と受け取っていく。


翌朝。


「リオン!」


ドアを勢いよく開けて爺さんが飛び込んでくる。朝食の途中だったので、少し面食らう。


「どうしました」


「なんだこれ! 嘘みたいに楽になってる! 三年ぶりにまともに歩いた気がする!」


爺さんが右足をその場で二、三回踏み鳴らしてみせる。顔が笑っている。


「よかったです」


「よかった、じゃないぞ。これ、もっと作れるか」


「在庫はありますから、必要な分だけ持っていってください」


それから早かった。


爺さんの膝の話はあっという間に村中に広まって、次の日から村人が畑に来るようになった。腰が痛い、頭痛が治まらない、子どもが夜に咳をする。一人来ると二人来て、三人来ると五人来る。


薬代を聞かれるたびに、野菜でいいですと答える。


最初は「それでは悪い」と遠慮された。でも僕が本当に野菜しか受け取らないので、そのうち皆、素直に持ってきてくれるようになった。おかげで食卓が豊かになる。カブとニンジンが増えすぎて少し困っているが、悪い困り方ではない。


フィアは毎日来る。


最初は手伝いのつもりだったはずが、いつの間にか調合の見学になり、気づけば助手になっていた。本人はそれを特に気にしていないようで、「じゃあ次は何するの」と毎朝聞いてくる。


「先生、この草の名前は?」


ある日、フィアが薄紫の花をつけた株を指さす。


「デビルモス。見た目は怖いけど、これを煎じると睡眠薬になる」


「睡眠薬!」


「ただし、量を間違えると」


「どうなるの」


「三日寝る」


フィアは「三日」と繰り返して、それから「怖っ」と言いながらも株をじっと観察している。怖がりながら興味を持つのがフィアのやり方で、僕はそれが悪くないと思っている。怖いと知った上で近づける人間は、ちゃんと扱い方を覚える。


夕方、調合を終えて道具を洗いながら、空を見上げる。


秋が深くなって、日が落ちるのが早くなる。畑に灯りがいる時間も増えた。それだけのことだ。


特に何もない日だった。

そういう日が好きだと、最近気づいた。悪くない、なんてものじゃない。ここが、いい。

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