ドラゴンと壊れた人形
◇千代草
「私は怒ってるんですよ!」
千代草はホワイトドラゴンのペット、シロを使ってラバーマスクの少女を抑え込んでいる。
ドラゴンの巨体で地面に無理矢理ねじ伏せられている少女の前にしゃがみ込んで説教をしているのだ。
「まず、純愛とは何か……それは複数で一人の異性との行為におよぶ事ではないのです。愛し合うなら一組の番でなければ私は認めません!乱パは駄目!絶対!」
身動きが取れず、しかも千代草から倫理観を押し付けられた少女は観念したのか、紫色の瞳を元に戻し、泣いて千代草に哀願をはじめた。
「ごめんなさい、あの男が突然わたしたちの屋敷にきて、むりやり体を……うう、うわぁ〜ん!」
あの男とは救出対象者のことだ。
千代草は男の方を見やる。今、彼は汚物を垂れ流して失神している。
縛られた汚い体の救出対象者を0.一秒だけ見た。救出すべき対象者だが、かなり不快で生理的に受け付けないタイプの男だと思った。
「そう…貴女は被害者だったのね。可哀想に…シロ、離してあげて」
慈愛に満ちた声色と表情でシロに命じると、シロはぐるると喉を鳴らしてゆっくりと少女を解放した。
「まだ歪みは閉じていません。さぁ、貴女は元の世界へ戻りなさい」
少女はぐねぐねに曲がった体を起こす。
「あ、ありが…と……トトトトーー!」
少女の瞳が再び紫に変色した。そして、体の全ての関節からジャキジャキと鋭い刃が突き出る。
「アリアトーーッ!オネーチャン!」
少女は千代草に飛びかかったが、不思議とその距離は縮まらない。むしろ千代草から離れてしまっていた。
「ガ?」
なぜか攻撃をスカされた少女は首を傾げて千代草を見つめる。
千代草は、ハァーとひとつため息をついた後、腰に両手を当て、この仕組みの解説をはじめた。
「これは私が異世界から持ち帰ったお土産の能力のひとつです。アッチの世界で使っていた補助魔法を現実世界で演算、再構築したオリジナルの魔法、『好き避け』です。貴女は私に触ることすら出来ません」
「ギィユァァァーーー!」
奇声をあげる少女は、両腕を振り回しながら千代草へ向かって走り出したが、その場でずっと足踏みをしているだけで距離は一向に縮まらない。
「残念です…せっかく生きるチャンスをあげたのに……シロ!」
ばくん!
シロが大口を開けて少女を頭から膝下まで齧り取る。あとに残ったのは、少女の脛から下だけだった。
「お腹こわすから飲み込んじゃダメ」
千代草は指をバッテンにしてシロに見せると、シロはごりぼりと数回咀嚼した後、口から少女だったモノをベッと吐き捨てた。
*次回、『魔王と猫耳』




