銃と包丁
◇南天
南天へ向かって徐々に距離を詰めるメイドの周辺には、大量の包丁が浮遊している。
そしてそれらはメイド守るように周回していた。
現状、近接戦闘は不利と判断した南天はメイドから距離を取り、上着のポケットから直径一センチほどの鉄の球を一つ取り出して右手の親指の爪側に当てた。そしてそれを人差し指を畳んで押さえる。
そこへ圧縮させた空気を一緒に閉じ込めると、鉄の球は高温で真っ赤に染まる。南天はそれをメイドに向け、左目を閉じて狙いを定めた。
「隼の一撃!」
親指を一気に弾いて鉄球を飛ばす、この時、南天の指は銃口と化す。必殺の指弾だ。
南天の指先から放たれた鉄球は、ライフル弾に並ぶ速度で飛び、メイドの周りを飛ぶ包丁をひとつを粉砕。包丁に当たって軌道がそれた小さな鉄球は、メイドの肩を貫いた。
メイドはよろめくも、顔色を変えずに豊満な胸の谷間から複数本の包丁を取り出し、自身の周辺に浮かべて再び、ゆっくりと南天を目指して歩きだす。
「御行儀ノ悪イオ客様ハ、ハイジョシマス」
「排除されるのはキミだ」
「んー!んー!んー!」
英に投げ捨てられて横たわっていた救出対象者が突然うなり声を上げた。
メイドが救出対象者の方を見やると、がぱっと口角が裂けて血濡れの笑顔を見せた。
「ゴ主人様ァァ!ナンテ、ナンテ、素敵ナ姿ヲ?!」
救出対象者はメイドにでも助けてもらおうと算段していたのだろうか、今はメイドの顔を見て恐怖で怯えている。
「コノ、アリサ!興奮シテ興奮シテ興奮シテ興奮シテシテシテシテシテ!!!オ股ガ八裂テシマイマスワーーーーッ!!」
体をガタガタ震わせて絶叫したメイドは、股からずるりと巨大な包丁取り出した。血と体液で濡れたその包丁をひと舐めるすと、狂気に満ちた表情で救出対象者へと切りかかる。
「ふ!ふんーーーッ!ふふん!んー!」
体がすくみ上がっている救出対象者は、股間を自身の汚物で汚しながら首を横に振り続ける。
「小鳥の群れ!」
南天は両手の指の間に挟んだ鉄球三発ずつを加熱させてメイドへ投げつける。
先ほどより威力は落ちるが、包丁を叩き落としてメイドの注意を自分に引きつけるには充分だった。
メイドが首だけを百八十度回転させて南天を睨む。
「妬カナイデ下サイマシ、オ客様モ、後デ極楽へ送リマスカラ」
「悪いが俺を先に気持ちよくしてくれないか?メイドさん」
南天がメイドに向かって手招きすると、メイドは巨大な包丁を頭の上に振りかぶる。
「デハ!オ望ミ通リ!先ニ!真ップタツニシテ!サシャーゲマスワ!!」
メイドが南天に襲いかかる。
「大量消費は好ましくないが、致し方無し…」
南天はポケットから精一杯握れる分の鉄球を取り出した。
メイドをギリギリまで引きつけると掌の中の鉄球を空気で圧縮させ、大きく振りかぶってメイドへ投げつけた。
「雉撃ち散弾!」
ドパーーーーーン!!
襲いかかったメイドの至近距離で、大量の熱せられた鉄球を投げ付けたのだ。
強烈な炸裂音が鳴ると同時に、メイドの胸から上はバラバラに吹き飛んだ。その散らばった肉片や眼球が救出対象者の顔に当たり、彼はショックで失神した。
「胸……もうちょっと近くでじっくり拝みたかったなぁ…」
南天は千代草が聞けば怒るような台詞を呟き、炭化して消え逝くメイドを見送った。
*次回、『ドラゴンと壊れた人形』




