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お前を、この異世界から排除《ドレイン》する。 ー内閣府デジタル庁異世界転生救済課ー  作者: ねず ただひま
嚆矢濫觴(こうしらんしょう)の章

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茫漠(ぼうばく)

えんじゅ



「とんだ玉無しネ!この男は!」


 黒いセダンで高速道路を走る鳶尾いちはつは、ルームミラーに映る後部座席のえんじゅに向かってそう言い放った。


「今日の班長会議でどデカい花火打ち上げる言うといてこのざまネ!」


「ん〜まぁ、そないガミガミ言わんといてぇや」


 大股開いて座っているえんじゅはタバコの煙をくゆらせた。


紫雲英げんげの奴、行方不明の部下は()()だの、ハシバミには通常任務をさせとっただののたまうもんじゃけえ、なんぞ裏があると考えてしもーたわ」


「それ、ブラフの可能性は無いネ?」


「あるじゃろ……ワシらの事、何処まで調べとんのかのぅ。もしくは、……いかんのぅ、吾亦紅われもこうは諜報部員だそうじゃ。うたことないけぇ迷ったわ」


「あぁ〜、こりゃ駄目ネ、まんまと紫雲英げんげの策にハマってるネ」


 鳶尾いちはつは呆れたと言った感じの声を出した。


「ぼく、もうすこしでおぐるまさんをころしちゃうところだったよ」


 助手席の合歓ねむはただニコニコとしている。


「それにしても探してほしいちゅう人物の情報が入ったこのUSB、誰のことやと思う?鳶尾いちはっちゃん?」


「それは多分、わたしらの友達パートナーネ……」




九鬼くき



「おかえりなさい!九鬼くき班長!施覆花おぐるまさん!」


 千代草ちよぐさが班長会議に出向いていた二人を元気よく出迎えた。


 奥にははなぶさ南天なんてん鉄線てっせんも居る。


 九鬼くき班のメンバー全員がここに居るのは珍しい事だ。


 ここは九鬼くき班専用のオフィス。昭和中期の商店が軒を連ねる中に、『はなぞの製菓』の事務所としてひっそりと世間に紛れ込んでいた。目の前には川があり、その川沿いには、今は満開の桜の木々が並んでいる。


 今は夕刻、オフィスの前を一般人が往来している。仕事や学校を終えて家路に就く者、買い物をする親子。犬の散歩をする者。こんなごく当たり前の平和な生活の中に、異世界転生救済課は溶け込んでいる。


「あぁ、ただいま。千代草ちよぐさ


「おーい、鉄線てっせんちょいとコイツを見てくれ」


 施覆花おぐるま鉄線てっせんにUSBを投げ渡した。


「これは?」


「今日の会議で渡されたモンや、こいつをプロジェクターに写してくれ」


「了解。ん?お前その傷どうした?」


 鉄線てっせん施覆花おぐるまの額の絆創膏を見て聞いた。


「んふふ♪なんでも」


 妙に嬉しそうな施覆花おぐるまを見て鉄線てっせんは首をかしげる。


「なんか悪い物でも食べたのか?」


 そしてUSBメモリーをパソコンに差し込んで準備をはじめた。


「馳走やったで♪」


 施覆花おぐるまは冷蔵庫から缶コーヒー取り出し、喉を潤した。


はなぶさ、今日の調査の報告を頼む」

 九鬼くきはトレンチコートを自分のデスクチェアに掛けて、共有スペースのソファに座った。


「はい」


 はなぶさ九鬼くきと対面する形でソファに座り、一台の壊れたスマートフォンを取り出してテーブル上に置いた。


迷子ロストチルドレンの落とし物です。消えたこどもの両親を問い詰めたら、ネペンテスの使用を認めましたよ。それと、例の如くアプリの入手方法は誰も覚えていませんでした」


「そうか……。その子どもは、やはり病()()だったか?」


「そうです。心臓に重大な疾患がありました。近所の者には怪しまれないように『隣県の大きな病院に入院させた』と言っていたそうです。しかし、親族にバレて児相に通報されたようですね」


 九鬼くきは天を仰ぐようにソファーにもたれかかった。


「ネペンテスを使って、親が重病のこどもを異世界へ送る事に一体なんの意味があるのか……」


救出対象者ドリーマーは九歳の女の子です。両親が子どもを転送させてから一週間以上経ちます。病気の女の子は大丈夫なんでしょうか?」


 コーヒー運んできた千代草ちよぐさがカップを九鬼くきの前に置き、心配そうな顔でそう言った。


「三人目の迷子ロストチルドレン。前の二件は未だ進展無し…なんとしてでも探さねば」

 

 南天なんてんもコーヒーを飲みながら会話に入った。


「ああ、そうだな……」九鬼くきはコーヒーカップを口元に運ぶ。


「みんな、画像を映すぞ!」


 鉄線てっせんがプロジェクターで映し出した画面の人物を、全員で見やった。


 白衣を着た六十代くらいの男性だ。名前は…


『新にほん医師会 副会長 四十雀しじゅうから伸彦のぶひこ

*次回、『小宴会とあの日の貴女……』

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