71話:夢の終わり
〜前回のあらすじ〜
夢の中で勇者アルスは様々な過去の記憶を思い返していた。
・カリヴァとシオンの兄妹との出会い、そして冒険の始まり
・二人との冒険の日々
・上級魔族"蠱毒のヴィリス"との戦い
そして勇者カリヴァがヴィリスとの死闘を制した後の……最後に見た記憶は────────
「俺は一国の王!!」
「私はお花屋さん!!」
ある日のこと、アルス達は大きな湖の側に腰掛け互いの夢を語り合っていた。
"鏡の湖"
大陸北部中央────ファーレン王国から見て西側に位置している、森林の中に広がるそれは……周囲の景色を鏡のように鮮明に映し美しい姿を織り成すことから過去では北部における観光スポットの一つだったという。
現在では周囲の森林に魔獣が巣喰うようになってしまったため観光地としては死んだも同然だが、それでも景観の美しさは今も尚健在だ。
気温が下がり凍てついてしまえば本物の鏡そのものになるとまで言われてる湖は、今も互いに笑い合うアルス達の姿をずっと映している。
「俺は……二人の手伝いがしたい」
"夢"────何気ない会話の中で不意に問われた言葉にアルスが返したのは、幼馴染の二人とは異なる曖昧な答え。
16歳になった現在においても彼は未だ、自身の将来像を明確に想像出来ないでいた。
孤児院という狭い世界で育ったアルスにとって、自身の世界を広げてくれたカリヴァとシオンこそが"幸せの象徴"であり……二人に付いていく以外の幸せが想像出来なかったからだ。
「ははっ!なんだよそれ!」
「アルス、それなら私と一緒にお花屋さんしちゃう?なーんて!」
それでも二人は、そんなアルスを包む様に抱きしめ共に笑い合ってくれる。
アルスは幸せだった。今はまだ自分のしたいことが分からずともこの二人といれば、きっといつか見つけられる。自分の世界はより広がり……絶対に幸せになれる。
二人とずっと一緒にしたい、二人を幸せにしたい────前面の綺麗な水鏡に映る幸せそうな自分達の姿を見て、アルスはこの光景を守りたいと……心から思ったのだった。
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時が経つのは早く聖ヤーラ歴713年初めの月……
大陸北部を恐怖に陥いれていた上級魔族"蠱毒のヴィリス"が勇者カリヴァに討たれてから一年もの月日が流れた。
あれからアルス達は精進し、勇者カリヴァと共に様々な依頼を熟して実績を積み上げていった。
・氷帝
・天嵐鷹
・雷豪身
・金剛羅
・旋風刃
・狂炎象
・深触魔
・幻惑刺
当時大陸北部で悪名を轟かせていた二つ名付き上級魔族を次々と討ち取り、ヴィリスとの戦い以降大した苦戦もないカリヴァ……
未だ汚れ知らずの外套を背負う彼に対し、人々は現在ではこう呼ぶ。
────────"純白の勇者"と。
前人未到の偉大な功績を成し遂げた彼の名声は瞬く間に大陸中を駆け巡り、またそれを側で支え続けたアルスとシオンも最強の魔王討伐隊の一員として讃えられた……実際に最強の名に相応しい活躍をしていたのは主にカリヴァだったのだが。
そんな実情と離れた世間からの称賛に戸惑う日々を過ごしていたある日、アルス達にまたも転機が訪れる。
なんと……国王から直々に城へ招かれたのだ。
・・・
「此度の功績を讃え、其方には聖騎士の任を与えようと思う……後の二人にも相応の地位を確約しよう……どうかね?」
広々とした荘厳な王室にて緊張した面持ちで膝を突く中、アルス達はファーレン王から夢のような話を賜った。
"聖騎士"
大陸タルシスカにおける最高位の騎士の称号……王宮付きの役職を勇者カリヴァに与えようというのだ。
アルスは心から喜んだ。カリヴァが語っていた夢とは少々異なるものの、これで自分達の将来は安泰になる……ずっと三人で幸せに暮らせると。
「身に余る光栄です、国王陛下……
────ですが申し訳ありません……この話は辞退させて頂きたい」
しかし刹那、勇者カリヴァの一声によりそんな幻想は一瞬で崩れ去った。瞬間、王室内の空気が一気に緊張感が増した重たいものへと変わる。
「なんだと……?カリヴァ……お主、今何と言った……?」
「お前ッ!!父上からの慈悲を無下にするつもりかッ!?」
眉間に青筋を浮かべ、蒼く鋭い眼光を放つファーレン王……直後に横に立っていた肥満体の男から怒声が響き渡る。
何か一つ、言葉を誤れば自分達の首が飛びかねない一触即発の空気……そんな中でも勇者カリヴァは涼しい顔を浮かべ、静かに言葉を返すのだった。
「僭越ながら、あれだけ上級魔族を倒したにも関わらずこの世界は未だ平和には程遠いのが現状です……俺には勇者として、魔族の脅威に苦しむ人々を救う義務がある……!故に、一つの場所に留まるわけにはいかないのです」
・・・
「なぁ、カリヴァ……本当によかったのか?」
「ん?何の話だ?」
「聖騎士就任の話だよ……あの話を受けることでだって、シオンは幸せに……」
「……あそこに俺達の幸せはないよ」
「え?」
────それから数日……アルス達は現在、国王から課せられた新たな任務に就き、雪化粧を施された白い森の中を彷徨っていた。
雪道に疲れ果てた頃……思わず胸中にずっと残っていた疑問を吐露すると、返ったきたのは彼にしては珍しい氷のように冷めた声色。
「私も……あの話は受けなくてよかったと思う」
「シオンまで……なんでだ?」
「確かにあの話を受けてれば、王国内での地位は安泰かもね……でも代わりに今までみたいに自由ではいられない……私達が王宮に縛り付けられれば、兄さんの言う通り魔族の被害に遭う人が増えるわ」
「それは……」
「あの話を受けるってことは魔王討伐隊と同じ様な、弱い境遇の人達を見捨てる事に他ならないと思うの……そしたら本末転倒な気がする」
「そうか……そうだな」
思わず困惑するも、続けてシオンの意見を聞いてアルスは自身の視野の狭さを恥じた。
彼等は何も自分達だけの幸せを考えてるわけじゃない……思っていたよりもずっと高潔な存在なのだ。だからこそ人々から讃えられるのだろう。
「悪い……変なこと言って」
「ううん、私個人の感情もあるし……それにアルスが私達のこと考えて言ってくれたって事くらい理解ってるから……ね?兄さん」
「勿論さ……ま、大方俺の考えは可愛い妹の言った通りだが……話を断ったのは何もそれだけが理由じゃない」
「え?」
「あの国だって絶対に安心出来るわけじゃない……敵になり得るのは魔族だけじゃないんだ」
「それってどういう……」
「……待て!静かに」
そんな風に話していた時だった。
不意に先頭のカリヴァが歩みを止め、制止するように手を出す。目的地はもう少し先のはずだが……
「どうしたの?兄さん」
「……俺達が受けたのは魔族残党の偵察任務のはずだったよな?」
「え、えぇ……"幻惑刺"の根城跡地にまた魔族が集まってるって噂があったから、それを確かめるために……」
「報告では、確か集まってるのは中級以下の魔族だったよな……?」
「だったら、この先から感じる魔力はなんだ……!?」
「え……?」「は……?」
「──────【天の糸】」
直後の事、不意に森の深淵から呪文が響くと同時に見えない何かに身体の自由を奪われた。
小さく呻き、抵抗空しくその場に倒れ伏すアルスとシオン……唯一無事だったのは咄嗟に反応出来たらしい勇者カリヴァだけ。
直後に「大丈夫か!?」と此方を心配する彼の声が聞こえるも、その前に三つの大きな影が現れる。
「フン……一人逃れたか」
「何をやっているご老人?この程度の数の虫を捕まえ切れんとは……いよいよ耄碌が始まったか?」
「口を慎めザヴォート……!次シルク様に無礼を働けば、我が業火で貴様を消し炭にするぞ……!!」
長い耳が特徴的な悪魔のような風貌の魔物、鎧を思わせる漆黒の外殻を纏った魔物、真紅の鱗と巨大な翼を持った魔龍……
一体一体がそれぞれ強大な魔力と威圧感を放っており、一目で"上級魔族"だと確信させられた。
「上級……魔族……ッ!?」
「なんでこんな場所に、三体も……ッ!?」
脳が、全身の細胞が全力で警鐘を鳴らしている。これまで幾多の上級魔族と会敵してきたものの、これだけの数と同時に遭遇したのは初めての経験だった。
しかも目の前の奴等、直近で戦ってきた上級魔族とは違う。どこか"蠱毒のヴィリス"に近い雰囲気を感じる……──────危険だ。
「ハッ!将軍殿は随分とご自分の力に自信があるようだ……やれるならやってみるがいい……やれるものならな?」
「貴様ァ……ッ!!」
「よせ、若造共……今は我ら同士で争う時ではない」
物理的にも精神的にも動けない中、自分達を守るように剣を構え相手の出方を窺う勇者……
その様子に気付いたのか、直前まで目もくれず激しく対立し合っていた様子の上級魔族達の視線が一斉に此方に集まる。
「どうやらフォルリア様の話は確かだったようだのぅ……此奴等、確かにここ最近で数多くの同胞を葬ってきた者共だ」
「確か……あのヴィリスを倒したのも彼奴等だったな?」
「これまで我らの邪魔立てをしてきたのが、こんな小人共とはなァ……カカカッ!!」
「全く、この程度の数の人間に随分手を焼かされたものだわい……だが、漸く誘き出し捕らえることに成功した」
「うむ……如何に人間共の中で優れていようと、我ら"英雄"が揃えば万が一などない……!!」
「クカカッ!!さァ……狩りの時間だ!!下等種の分際で英雄などと持て囃され驕った虫ケラ共を捕らえ、我らに歯向かった者の末路を人類全てに知らしめてやろう……!!」
瞬間、全身に怖気が走った。
動けない……拘束されているからじゃない。生き物としての本能が目の前の存在に圧倒され、完全に気圧されてしまったのだ。
まるで猫に狙われた鼠のように、蛇に睨まれた蛙のように……天敵たる強大な捕食者達を前にして、アルスは指先一つ動けなくなってしまう。
「アルス!俺が時間を稼ぐ!シオンを逃がしてくれ!!」
そんな時、救ってくれるのはやはり勇者カリヴァ……彼が虚空に向かって剣を振るうと同時に拘束が解け、身体の自由が効くようになる。
直後に妹のことを此方に託し上級魔族達へと立ち向かっていく勇者の差を見て、アルスはかつて交わした親友との約束を思い出した。
"俺はもっと、誰よりも強くならなきゃいけないんだ……じゃなきゃシオンやお前を守れないからな"
"俺ももっと強くなって、二人を助ける……!まだ全然足りないけど頑張る……だから俺にも背負わせてくれ、カリヴァ"
ここで動けなきゃいつ果たすって言うんだ────そんな過去の決意が、刹那に込み上げてきた熱い想いが瞬間的に身体に伸し掛かっていた恐怖を上書きし、アルスの身体を動かしていく。
「シオン……行こう……!」
「だ、ダメよ!アルスお願い、離して……ッ!!」
だが、腕を取った当のシオンには強く抵抗されてしまう……それも当然だろう。優しい彼女が兄であるカリヴァを、唯一の肉親を敵前に置いて逃げるなど選べるわけがない。
だからこそアルスは一層手に力を込め、来た道を戻ろうと必死に雪道を踏み締めて歩く。
今は信じるしかなかった……勇者であるカリヴァの強さを、そして彼が自分に託した判断を。
「チッ……!おい、小虫が二匹逃げ出すぞ……早く捕まえんかご老人……!」
「所詮は人間の脚力……数キロ離れたとて問題ない……が、これ以上逃げ回られても鬱陶しいのも確かだ……よかろう」
「貴方だけに任せるのも忍びない……我も空から彼奴等を追跡するとしよう」
そんな風に縋る思いでシオンを連れ必死に逃げるアルスだったが、最中に後方から魔族達の恐ろしい声が聞こえてくる。
背中から感じる獲物を狙うような視線────だが直後勇者の詠唱が響き、敵の声色が動揺したものへと変わる。
「此奴、ワシの糸を一瞬で……!!」
「これ程の威力の水と風の魔法を即座に……!これでは飛び立てん……!!」
「だが下等種らしく弱者を守る習性があるな……!後ろの二匹を狙うぞ!それでコイツに隙が出来る!!」
「フン……悪いが断る」
「なんだと?もう一回言ってみろ、ご老人」
「我も同意だ……逃亡を防ぐのならともかく、戦い自体は正々堂々行われるべきもの……!貴様の卑劣極まりないやり方に賛同するつもりはない」
「戦いに卑怯もクソもあるかァ!!そのようなヌルいやり方に固執してるから、貴様ら旧世代はいつまでも結果が出せんのだ!!」
恐らく彼が敵の攻撃から守ってくれたのだろう……が、振り返っている暇はない。
アルスは走った。後ろから聞こえてくる少女の残りたいという懇願にも、恐ろしい怒号や戦闘音にも耳を貸さず……ただ必死に息を切らしながらも走り続けた。
「────はァ……全く、使えないんですから」
だからこそ、反応出来なかった。
欠片程も余裕のない状況……そんな時に突如横から迫ってきたもう一体の敵の気配に。
「え……」
音もなく現れたもう一つの影。
ギリギリ気付き、姿を確かめようと振り向いた……その矢先、アルスの視界に入ったのは自身に振り下ろされる鈍い輝きを放つ黒鉄。そして────────
『ガアァンッッッ!!!』
くぁwせdrftgyふじこlpみkおlぱ;qwえrtyあsd fghjklぽ;@:*わsxdcfvghjぬmぃょhjkl;+*@「てsdfghjkl;:@あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ縺斐a繧薙↑縺輔>縺斐a繧薙↑縺輔>縺企。倥>繧ゅ≧險ア縺励※谿コ縺励※繧、繝、繧、繝、繧、繝、繧、繝、繧、繝、縺阪◆縺ェ縺?″縺溘↑縺?″縺溘↑縺?″縺溘↑縺?勧縺代※繧「繝ォ繧ケ諞弱>諞弱>諞弱>諞弱>諞弱>蠕ゥ隶仙セゥ隶仙セゥ隶仙セゥ隶仙セゥ隶占ィア縺輔↑縺?ィア縺輔↑縺?ィア縺輔↑縺?ィア縺輔↑縺?ィア縺輔↑縺?ョコ縺励※繧?k谿コ縺励※繧?k谿コ縺励※繧?k邨カ蟇セ縺ォ蠕梧t縺輔○縺ヲ繧?k
「これは失敗作だな……またか」
「吐き気がしますね……もしこのような結果が続くようなら、私達の研究は……」
「はぁ……他のモノと一緒に捨ててこい……今日はこれで終わりにしよう」
ここは……どこだ?失敗作?俺は一体……
「中々に良質な…… ◎△$♪#?上手くいけば器も……」
「寄生型を△●&%#?!たいが、何か良いモノはあるか?」
「それならば新たに生み出したこれを……◎△$の
&%#に取り付き♪×¥●?!が可能です……ただ、×#?!が残ってると上手くいかないかもしれませんが」
「ならば徹底的に×¥●!を殺せ……$♪×¥&%#?!力を貸してやる」
なんだこの会話は……?これは、一体……
「やめ&%#?!だけは◎△×●&#ッッッ」
「ああああああアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
「もう……♪×¥&%#?して……」
俺は一体……何を聞いていたんだ?
お疲れ様です。
この話にて第四章"泡沫の夢編"は終了となります。
次章、"大陸北部編"は6月19日(金)から投稿開始予定です。
6月12日(金)は投稿お休みとなりますので、予めご了承くださいませm(_ _)m
ここまでお読みくださりありがとうございました。引き続きよろしくお願い致します。




