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きっと人生が、映画ならば  作者: 人間モドキ
22/23

ハンバーグが食べたい

二千十六年、十二月三十日、深夜。

 スーツ姿の男二人に追われていた佐田俊介は、五人の若者達に助けられ、スーツ姿の男二人から必死に逃げていた。

 工場地帯から何とか走って逃げ切った佐田と若者達五人は、車に戻り、車で再度逃げることになった。

 しかし、この時、佐田は思った。

 このまま闇雲に逃げていても、奴らに捕まってしまうのも時間の問題だ、ということを。

 そんな事を考えた佐田は、こっそり、自分のコートの内ポケットに入っている、ある物に手を伸ばした。

 それはケチャップだった。先程、立ち寄った食堂で、料理と一緒に運ばれてきたものだが、スーツ姿の男達から逃げる時に、何か役立つんじゃないかと思い、くすねてきたものだった。

 佐田は、こんな子供騙しのトリックに、この若者達とスーツ姿の男達が引っかかってくれるか、いささか心配ではあったが、何としても自分を生んでくれた両親の為にも死ぬわけにはいかなかった佐田は、賭けにでることにした。

 まず、佐田は、若者達に気づかれぬよう、こっそり、ケチャップを口の中に含んだ。そして、余ったケチャップを持っていた黒いバッグと自分の腹部に塗った。

 はたから見れば、間抜けな光景だが、薄暗い車内ではそれなりに見えた。

 そして、隣に座っていた女の子が真っ赤に染まったケチャップに気づき、「キャー!」と悲鳴を上げた。佐田は思わず、笑いそうになったが、必死にこらえて、銃に撃たれた芝居をした。

 助手席に座っていた男が「撃たれたのか?」と不安そうな顔で聞いてきた。ここだ、と思った佐田は、口からケチャップを噴き出した。

 若者達が救急車を呼ぼうとしたので、焦った佐田はそれを止めた。そしてこの黒いバッグを自分の家族に届けるよう、若者達にお願いした。

 そして、佐田は死んだふりをした。若者達はかなり動揺していた。流石は素人達といったところであろうか、佐田の脈を測りもしなかったので、あっさり騙すことが出来た。

 問題は次にやってくるだろう、スーツ姿の男達であった。彼らは恐らくヤクザだ。まさかこんな小細工で騙せるわけがないであろう。佐田はそう思っていた。しかし、他になす術がないので、佐田はそのまま死んだふりを続けた。

 そして、ガス欠で停車していた若者達の車にスーツ姿の男達がやってきた。彼らは車内を、外から見るだけで、そのままあっさりと行ってしまった。

 やはり、彼らの目的はあくまでも、あの黒いバッグに入った一億円なのだろうと佐田は思った。

 佐田はそれからも万が一の為、死んだふりを続けていた。すると、少し遠くの方から女性の叫び声が聞こえてきた。

 佐田が薄っすら目を開けて前方を確認すると、先程、隣に座っていた女の子がスーツ姿の男達に捕まってしまっていた。その女の子はスーツ姿の男達の車に乗せられ、車は何処かへと走って行った。

 スーツ姿の男達が乗った車が、遠くに行ったことを確認した佐田は目を開け、乗っていた車から出た。

 一億円の行方が気になった佐田は、先程、女の子が捕まっていた現場近くに歩いて行った。そこには海へと続く小さな崖があった。

「まさか、他の連中は崖から海に飛び込んだのか?」

 佐田は思わず、そう呟いた。

 もしも、バッグを持っていた奴も一緒に飛び降りたとしたら、一億円はもう諦めるしかないであろう。佐田はそう考えた。

 佐田は命だけでも助かっただけ、大分ましだと思うようにした。

 それから佐田は考えた。とりあえず、スーツ姿の男達が向かった方向とは反対へ、ひたすら歩くことにした。

 

 それから朝日が昇るまで歩き続けていた佐田の足は限界が近づいてきていた。元々、負傷していた左足は痛みが増していた。

 佐田はとにかく、車を確保するしかないと、考えた。


 二千十六年、十二月三十一日のお昼頃。

 やっとの思いで、少しは栄えている街に辿り着いた佐田は、レンタカーショップに来ていた。幸い、一昨日の夜におばあちゃんからひったくったお金がまだ残っていた佐田は、そのお金で車をレンタルすることにしていた。

 受付を済ませ、車の受け取りをする際に、佐田が受付の方に、なんとなく目をやると、驚きの人物を佐田は発見した。

 なんと、昨夜一緒に逃げていた若者の一人である、ガタイが大きく、顎のしゃくれた男を佐田は目撃したのだ。

「生きていたのか」

 佐田は思わず、呟いた。

  そして、佐田はこれは神様が自分に与えてくれた最後のチャンスのように思えて仕方がなかった。

 その男も佐田と同様、車をレンタルしていた。佐田はその男に見つからないように、こっそり尾行をした。

 そしてそのガタイの大きい男は、あるショッピングモールに車を停めた。その後も佐田は尾行を続けていると、ショッピングモールのフードコートに、あの若者達がいた。あの一億円が入った黒いバッグも無事なようであった。これには佐田も歓喜した。

 しばらくすると、その若者達は黒いバッグを持ち、レンタルしてきた車に乗っていた。佐田はその車を尾行し続けた。

 このまま若者達を尾行して、チャンスを窺って黒いバッグを奪おうと佐田は考えていた。

 若者達を尾行しているうちに、佐田はその目的地に大方予想がついてきた。目的地は恐らく、あの廃病院だ。

 佐田には疑問点があった。何故、あの若者達は必死になって、スーツ姿の男達から逃げきったにも関わらず、わざわざ、危険なあの廃病院へと向かっているのか。

 その時、佐田は思い出した。あの若者達の一人である金髪の女の子がスーツ姿の男達にさらわれてしまったということを。

 ひょっとして、彼らは彼女を取り戻しに行っているのか?そんな考えが佐田の脳裏を横切った。

 だとしたら、スーツ姿の男達も、あの廃病院にいるに違いない。だとしたら、このまま尾行を続けるのは自分にも危険が及ぶのではないか。佐田はそう考えた。

 しかし、佐田が人生を取り戻すには、あの一億円がどうしても必要であった。若者達がスーツ姿の男達と接触する前に、何としてでもあの一億円の入った黒いバッグを奪い返したいと佐田は考えた。

 気づくと、若者達が乗った車は、あの廃病院の前で停まった。若者達は車から降りて、廃病院へと向かっていた。

 佐田も彼らからバッグを奪い返そうと、急いで車から降りたが、若者達はすでに廃病院の中へと入ってしまっていた。


 慌てた佐田は、若者達の後に続いて廃病院の中へと入った。

 ロビーを見渡したが、彼らはロビーにはいなかった。奥の方で、足音が聞こえた。佐田はその足音を恐る恐る追った。

 複数の足音と若者達の喋り声が階段の上から聞こえてきていた。この階段を上れば追いつける。そう、確信した佐田は慎重に階段を上って行った。

 佐田が二階と三階の間にある踊り場に差し掛かろうとした時、踊り場にパーカーのフードを被った男が階段を転がり落ちてきた。

 佐田は驚いて、咄嗟に階段の隅に身を潜めた。すると、パーカーの男は立ち上がり、そのまま階段を三階へと駆けて行った。

 佐田は恐る恐る隅から三階の方を覗き込んだ。すると、パーカーの男と若者達の一人のガタイの大きい男が肉弾戦で戦っていた。

 今、バッグを奪い返すのは難しいと考えた佐田は、しばらく、様子を見ることにした。すると、ガタイの大きい男は、凄い勢いの突進で、パーカーの男を吹き飛ばしていた。若者達は急いでその場を後にし、階段を駆け上がって行った。

 佐田は恐怖のあまり、しばらく、その場で硬直していた。すると、パーカーの男がふらふらになりながら、若者達の後を追い、階段を上っていくのが見えた。

 佐田はゆっくりとパーカーの男に気づかれないように、階段を上り、後を追った。

 佐田が階段の上にある屋上の入り口のドアの前に着く頃、外から拳銃の発砲音が聞こえた。佐田は恐る恐るドアを少しだけ開き、外を覗いた。

 外を覗くと、拳銃を発砲したのはパーカーの男であった。撃たれたのは、奥にいるスーツを着た男の内の一人であった。撃たれた男は「東山」と呼ばれていた。

 すぐに二発目の発砲音が聞こえた。次に撃たれたのはパーカーの男であった。パーカーの男は、屋上の入り口からすぐ近くの場所で倒れた。

 佐田は目の前で起こる衝撃的な出来事を、ただただ、傍観することしかできなかった。佐田は出ていく隙はもはや無いのではないかと、諦めかけていた。

 その時、若者達の一人であるガタイの大きい男が、黒いバッグを突然、宙高くに投げた。バッグは大きく弧を描いて、屋上から地上へと落ちていった。

 佐田はこの時、突然の状況の変化に驚いたが、バッグを奪うなら今しかないと咄嗟に考えた。

 佐田はすぐさま階段を駆け下りた。佐田は走った。そのまま、一度も振り返らずに廃病院を出た。

 廃病院の外に出た佐田は、建物の裏側へと回り込んだ。必死に黒いバッグを探していると、大きな木のすぐ隣にその黒いバッグはあった。

 佐田は急いで中身を確認した。中には大量の札束が入っていた。

「よっしゃ!」

 歓喜の声を上げた佐田は、バッグを持って、そのまま自分の車へと走ろうとした。

 佐田がふと、建物の近くに目をやると、人が倒れているのが見えた。見ると、その男は先程まで佐田を追いかけていたスーツを着た男であった。

 スーツの男は頭から血を流し、死んでいる様だった。

 怖くなった佐田はそのまま、その場を後にした。


 自分の車へと走って戻った佐田は、息を切らせながら、エンジンをかけ、車を走らせた。

「やった。やったぞ」

 佐田は車を運転しながら、そんなことを呟いていた。佐田の心は高ぶっていた。一度は諦めた一億円だったが、神は自分を見放しはしなかった。佐田はそう思った。

 しばらく車を走らせていると、遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきた。佐田に一瞬、緊張感が走った。

 佐田が冷静を装いながら、運転をしていると、対向車線を凄い数のパトカーと救急車が通って行った。それらはさっきまで佐田が居た、廃病院に向かっている様であった。

「ふぅー」

 無事、パトカーが自分の車の横を通り過ぎ、佐田は大きく息を吐いた。

 そのまま佐田の運転する車は、佐田の住む街へと向かった。

 

 あれから、数時間ほど車を走らせた佐田は、途中、高速道路にあるパーキングエリアにて休憩をしていた。

 佐田は自分のスマートフォンを若者達に渡してしまった事を後悔していた。佐田は今すぐにでも妻に連絡を取りたかったが、あいにく連絡手段がなかった。

 佐田は黒いバッグの中身を何度も何度も見返してはにやけた。多くの人達が生涯かけて稼ぐはずの金が目の前にあるのだ。

 煙草を何本かふかした佐田は車に乗って自分の街へと急いだ。

 

 二千十七年、一月一日。早朝。

 佐田は妻の実家に来ていた。

 妻の実家は閑静な住宅街にある大きな一軒家だった。

 佐田は緊張しながら、インターフォンを押した。しばらくすると、妻の声で「はい、どちら様?」と聞こえてきた。

「俺だよ、俊介だ」

 佐田がそう言うと、しばらく沈黙が続いたが、次の瞬間、ゆっくりと玄関のドアが開いた。

 そこには寝巻の格好をした妻が立っていた。

 妻はとても不安そうな顔をしていた。

「こんな朝早くにどうしたの?」

 妻が小さい声で言った。

「由衣に会わせてくれないか?お年玉を持って来たんだ」

 それを聞いた妻の晴美は怪訝な顔をした。

「お年玉?あなたにそんなお金あるとは思えないけど」

「いや、それがちゃんとあるんだ。ほら!」

 佐田はそう言って黒いバッグから、札束を一つ晴美に見せた。

「どうしたの?そんな大金」

 佐田は「色々あってな」と言おうとしたが、やめた。

「仕事で稼いだんだよ」

 佐田は嘘をついた。

「嘘ばっかり、どうせ、ギャンブルでしょ」

 妻には全てお見通しのようだった。

「ギャンブルじゃない!」

 佐田は声を荒げてそう言ったが、続く言葉が思い浮かばなかった。

「ギャンブルじゃなくても、どうせ、怪しいお金には変わりないでしょ。そんなお金を娘に渡して、あなた、それで嬉しいの?あなた、結局何も変わらないのね」

 晴美は冷たくそう言い放った。佐田は言い返す言葉がなかった。

 黙り込む佐田を晴美は見かねて、言った。

「とにかく、今のあなたにはここに来てほしくないし、由衣にも会わせたくない。悪いけど、帰って」

 晴美はそう言って、玄関のドアを閉めた。

 佐田はショックのあまり、その場で立ち尽くしていた。


 それから佐田は街を一人、とぼとぼ歩いていた。

 寂しい心をごまかす為、佐田はパチンコを打ちにいった。しかし、佐田は余計に虚しさが増した。

 次に佐田は普段いかないキャバクラに行った。美しい女達と、美味い酒に囲まれていたが、佐田の心は満たされなかった。

 佐田は考えた。今、自分が欲しいものは何だろうと。考えても、考えても、脳裏に浮かぶのは、妻と娘の姿だけだった。

 一億円という大金を手にしても、佐田の灰色の人生は変わらないんだということに、佐田は気づいてしまった。


 佐田は数日後、ハローワークに来ていた。佐田は決心していた。妻と娘が誇れる自分になろうと。

 その為に、どんなに惨めな思いをしようが、人に格好悪いと言われようが、構わないと佐田は思った。

 佐田はそれから、必死に就職活動をした。面接官には何度も、不快な言葉を投げつけられた。

 佐田はくじけなかった。妻と娘の信頼をもう一度取り戻す為に、佐田は必死に就職活動を続けた。


 それから何日か経ったある日、佐田はついに内定をもらった。

 内定を貰った会社はお世辞にも大きな会社とは言い難かったが、佐田はようやく自分自身を少し誇れるようになった。


 そして、佐田が働き始めて、一か月ほどが経った。毎日、年下の先輩に怒られてはいるが、佐田は真剣に仕事に取り組んだ。

 佐田はついに初めての給料日を迎えた。

 佐田はこの日をずっと待ち焦がれていた。

 佐田は仕事終わり、スーツ姿のままで、妻の実家へと向かった。

 前に一度拒絶されたこともあり、佐田は不安でしょうがなかった。今の自分を否定されたら自分はどうなってしまうのだろうか。そんな事ばかり考えていた。

 そして、妻の実家に着き、緊張しながら佐田はインターフォンを押した。

 今度はいきなり玄関のドアが開いた。

 そこに立っていたのは娘の由衣だった。

「あっ!パパだ!」

 娘は佐田を見るなり、思いっきり、飛びついて来た。佐田はこの瞬間、今まで何をしても満たされなかった心が、満たされていくのを感じた。

「大きくなったな、由衣」

 佐田はその瞬間、瞬間を、噛みしめるように、娘を抱きしめた。目には自然と涙が出てきた。

 玄関の奥から様子を窺いに、妻の晴美が歩いて来た。晴美は目を丸くして驚いていた。

「何、その恰好。コスプレ?」

 晴美は少し笑いながら言った。佐田は晴美が笑ってくれたのが、何だか嬉しかった。

「コスプレじゃない。ちゃんと就職したんだ」

 佐田は由衣を抱っこしながら言った。

「ふーん。そうなんだ」

 そう言った晴美の言葉には、何か深みがあるように佐田は感じた。

 佐田は抱っこしていた娘を一旦おろして、持ってきた大きな袋を娘に渡した。

「はい、これ、プレゼント」

 娘は「やったー」とはしゃぎながら袋を開けていた。中にはクマのキャラクターの大きなぬいぐるみが入っていた。

 娘はぬいぐるみを抱きしめながら、大喜びしていた。

 晴美もそれを微笑みながら見ていた。

「晴美、お前にもあるんだ」

 佐田はそう言うと、もう一つの袋を晴美に渡した。

「えっ?」

 晴美は戸惑いながらも、袋を受け取り、中を開けると、女性向けブランドの小さなカバンが入っていた。

「別にいいのに。まさか、あなた、物でつろうとしてるんじゃないでしょうね?」

 晴美は照れ笑いしながら言った。

「まぁ、そう言うなよ」

「ありがとう」

 娘はそれを見て「パパとママ仲直りしたの?」と純朴な声で聞いた。

「別に喧嘩はしてないよ」

 佐田は娘の頭を撫でながら言った。

「お前達、ご飯はもう食べたのか?」

 佐田が質問すると、晴美は「まだよ」と答えた。

「あのー、その、なんだ、良かったらこれから一緒にどうだ?」

 佐田は指で自分の鼻を撫でながら言った。

「何よ、そのぎこちない誘い方は。由衣、良かったね、お父さんが何でも好きな物ご馳走してくれるって」

 晴美はいたずらに笑いながら、娘に言った。

「本当にいいのか?」

 佐田は思わず、泣きそうになった。

「自分で誘っておいて、何言ってるのよ。じゃあ私と由衣は着替えてくるから、ここで少し待ってて」

 晴美はそう言って、由衣を連れて玄関の中へと入っていった。

 佐田の頬をこらえていた涙がつたっていった。


 それから、佐田は晴美と由衣を連れて、ハンバーグが食べたいという由衣の為に、イタリアンのお店へと行った。

 食事をしながら、佐田は二人との会話を楽しんだ。娘が嬉しそうに近況を話しているのを見ているだけで、幸せだった。

 佐田は晴美とも沢山話をした。皆、楽しそうに笑いながら話していた。

 佐田は家族とこれまで会わなかった期間、離れていってしまった心がどんどん近づいていくような感覚がした。時間が巻き戻っていくような感覚であった。

 

 そこでの帰り道、佐田は運転席に座り、車を運転していた。佐田がバックミラーで後部座席を見ると、娘はプレゼントで貰った、ぬいぐるみを抱きながら眠ってしまっていた。

 助手席に座る晴美と会話している中で、佐田はもう一度家族三人で暮らしたい事を晴美に伝えた。

 晴美はそれを了承した。

 それを聞いた佐田は、飛び跳ねたいほど、嬉しかった。

 それを見た晴美は、おかしそうに笑った。

「何で笑うんだよ?」

 佐田が晴美に問うと、晴美は「だって、あなたが私に告白してきて、私が良いよって言った時と同じ顔してるから」と言った。

 

 そして、佐田はまた家族三人で暮らし始めた。

 それから、佐田は毎日が幸せであった。

 灰色だった毎日が、七色に光っているように、佐田は感じた。

 佐田が晴美と由衣と暮らすようになってから、初めての休日。佐田は家族と映画館に行く為、街に出ていた。

 佐田が家族三人で手を繋いで歩いていると、一人のビジネススーツを着た若者とすれ違った。

 佐田はその顔を見て、一瞬、立ち止まったが、妻に「どうしたの?」と聞かれ、佐田は「いや、何でもない」と言って、歩き出した。

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