CHAPTER1 PART3
「ん?」
帽子を被ったある男が、紅茶を飲んでいた手を止めた。
「どうした?帽子屋」
その男に、うさぎの耳をつけた金髪の男が尋ねる。
「……いえ、あなたには関係ありません。
関係あっても言いません」
帽子屋と呼ばれた男は冷たく言い放ち、手を動かし紅茶を再び飲み始めた。
「んだよ、その態度。
グレるぞ」
うさ耳男が拗ねてそう言うも、
「どうぞ。
あなたの場合グレる前にいかれてると思いますけどね」
と、皮肉を込めて返す。
「ねぇ帽子屋。
何か起きたの?」
そんな帽子屋に、背の小さな、黒いおかっぱ頭をした可愛らしい男の子が話しかけた。
「…大したことではありません。
森の奥にお客が来ただけです」
「あー!
何で俺には教えないくせにヤマネには教えんだよ!!」
男の子─ヤマネにだけ答えた帽子屋に、うさ耳男がすかさず文句を言う。
「うるさいです三月うさぎ。
これ以上しゃべるなら殺しますよ」
「へっ!殺れるもんなら殺ってみやが」
バアン!!
「……れ…」
どこから取り出したのか、帽子屋が銃をうさ耳男─三月うさぎに向けていた。
弾が頬をかすった三月うさぎは、黙って席に座り、頬を撫でた。
「ねぇ帽子屋」
銃を仕舞った帽子屋に、またヤマネが話しかけた。
「見に行ってもいい?」
「ええ、どうぞ。
あなたの好きにしなさい」
帽子屋に言われて、ヤマネは嬉しそうに走っていった。
その様子を見て、三月うさぎは恨めしそうに呟く。
「ちぇ。
ヤマネばっかり甘やかしやがって…」
バアン!!
「………」
「何か言いました?」
「…何でもありません」
三月うさぎは渋々、ヤマネの帰りを待った。