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野営を経て拠点へ

本日2回目の更新です。

……………………


 ──野営を経て拠点へ



 衛兵の案内でミカエラたちは傭兵崩れの拠点までむかうことになった。


「本当におふたりで向かわれるのですか?」


「ああ。ふたりでだ」


 衛兵は先ほどから同じことを何度も確認している。


「傭兵崩れの拠点まではどれほどだ?」


「馬で1日と半日です」


「途中で野営しなければならないな」


「そうですね。ここら辺の馬小屋は傭兵崩れが領地で暴れ出してからどこも店を畳んでしまいましたから」


 普通、旅をする際は馬小屋で食事をし、馬を休め、寝泊りしてから進める。


 馬小屋は簡易な宿も兼ねているのだ。


 その宿は傭兵崩れが暴れまわるのに城壁の守りもなく襲われたため、早々に店を畳んで城壁のある街の中に引っ越していた。


 罪のない民草が不自由な生活を強いられるということに、ミカエラは怒りを覚えた。だが、その怒りに任せて戦おうとは思わない。怒りは戦う理由を作り、躊躇をなくさせる。だが、過度な怒りは隙を生むだけだ。


「飯、あるのか?」


「まだ携行食料が残っている」


「まともな飯が食いたいねえ」


「贅沢を言っている場合ではない」


「はいはい」


 ディアナはどうにも緊張感に欠けていた。


「魔術師様、従者殿。今日はこの辺りで野営にしましょう。これ以上進みますと傭兵崩れの拠点に近くなってしまいます」


「うむ。分かった」


 ミカエラと衛兵は野営の準備をし、ディアナは魔術でテントを組み上げた。その見事さにはミカエラも驚かされた。


「思ったより早く友達ができたな」


「ディアナか?」


 “竜喰らいの大剣”が言うと、ミカエラが尋ねる。


「そうだ。魔術師の仲間なんていい仲間じゃないか。それも世間のことをあんたよりよく知ってると来た。これは最高の仲間だぞ。自覚はあるか?」


「確かに私は世間知らずのようだ」


 これまでのことからミカエラが頷く。


「しっかり捕まえておけよ。これからは俺よりも頼りになるかもしれない。俺は俺でアドバイスしてやれるが、俺は所詮ドラゴンの悪霊だからな。同じ人間にアドバイスを貰った方がいいぞ」


「自分で悪霊だと認めるのか」


「この世にしがみついて、使用者を狂わせる魔剣についたドラゴンの霊なんて、どう考えても悪霊以外の何ものでもないだろう」


 “竜喰らいの大剣”はそう言ってけらけらと笑った。


「ちょいとそこのお嬢さんと魔剣さん。飯にしよう。馬に乗ってるだけでも腹が減るよ。幸い、携行食料だけの食事にはならなくて済みそうだぞ。衛兵がウサギを仕留めていた。今、スープを作っている」


「それは僥幸だな」


 ミカエラは周辺の安全を確認し終えると野営地に戻った。魔物の痕跡や人の痕跡を確認しておかないと魔物や傭兵崩れに食事中に襲われることになりかねない。


「ディアナ殿、ミカエラ殿。お食事ができております」


「いやあ。悪いな」


 ディアナが焚火を囲む。


「ささっ。どうぞ。熱いのでお気をつけて」


「美味そうな香りだ。外で飯を食べるってのはいいものだね」


 衛兵がスープを注いでディアナに渡すのにディアナが香ばしいスープの香りを味わう。衛兵が持ってきたハーブと塩コショウで味付けされ、近くでとれた山菜が含まれている。実に香ばしい香りだ。


「ミカエラ殿も」


「ありがたく頂戴する」


 ミカエラは熱いスープを喉に流し込んで体を温める。


「パンもありますのでどうぞ」


「黒パンか。まあ、仕方ない」


 ディアナは衛兵が取り出した黒パンを見て肩をすくめる。


 黒パンは保存性がいい。硬く焼いた黒パンは旅における必須の品でもあった。


 黒パンをスープに付けて食する。硬い黒パンが柔らくなり、スープの塩気と交わって美味しくなる。ミカエラはじっくりと味わうように黒パンとウサギ肉のスープの夕食を食した。実に満足できる食事であった。


「ディアナ殿とミカエラ殿は100人の傭兵崩れを相手にしたのですよね?」


「正確にはミカエラひとりだよ。100人の傭兵崩れを相手にしたのは。あたしにはその後で出会った」


「魔術もなしに100人もの傭兵崩れを?」


 衛兵が信じられないという顔でミカエラを見る。


「雑兵どもだ。100人、200人いようがさして変わらない。あの100人の中に腕の立つものはいなかった。連中は弱きものたちを虐げ、それに胡坐をかいた傲慢さのツケを支払うことになったのだよ」


 そう言ってミカエラがスープを口に運ぶ。


「今度の300人の中に腕の立つものがいればいいが。雑兵ばかり斬っていても、私も弱者を虐げるだけになってしまう。強いものと戦い、そして勝利することによって己を高めなければ、腕は鈍るばかりだ」


「我らが剣士殿は血に飢えていらっしゃる」


「敵に飢えているのだ」


 ディアナが茶化すと、ミカエラが渋い表情を浮かべる。


「どれほどまで研鑽を重ねればそこまで至れるか見当もつきません」


「日々の積み重ねだ。私は幼少のころから積み重ねてきた。あなたも積み重ねるのに、遅いということはない。今日からでも研鑽に励まれることだ」


「そ、そうですか……」


 衛兵はその研鑽とはどれだけ厳しいものなのだろうかと思った。


「見張りは私とあなたで行おう。ディアナには万全の状態でいてもらいたい」


「分かりました」


 本当ならミカエラが寝ずの番をするところだが、ミカエラも明日には300人を相手にすることになる。体力は温存しておきたい。衛兵は見たところ、真面目で信頼できるようであるし、何かあれば“竜喰らいの大剣”も反応する。


 体力は必要だ。体力の低下は集中力の低下をも招く。そして、いくら相手が雑兵であったとしても、集中力を切らしていれば隙を突かれることもあるだろう。相手がクロスボウを装備していたりなどすればなおらさ集中力の低下は命取りだ。


 ディアナはテントで早々に眠り、ミカエラと衛兵は交代で夜の見張りを行った。


 その日は魔物襲来も傭兵崩れの襲撃もなく、過ごすことができた。


「では、出発しよう」


「ええ。こちらです」


 衛兵の案内でミカエラたちは再び傭兵崩れの拠点を目指す。


「この先です。この先に廃城があって、そこを傭兵崩れどもは根城にしています。これまで討伐隊が組織されて挑みましたが、誰も帰ってこず……」


「分かった。その無念は私たちが晴らそう」


 ミカエラとディアナは馬を降りて、傭兵崩れの野営地に進んでいく。


 森の中にうっすらと崩壊した城が見えてくる。そこに見張り台のようなものが設置されているのが目に入った。そこでは傭兵崩れの見張りがクロスボウを手に見張っている。


「あそこに傭兵崩れがいる」


「仕留めてやろう」


 ディアナがそう言うと彼女の手から光線が放たれ、傭兵崩れの頭を貫いた。傭兵崩れはそのまま見張り台の上で倒れる。


 それに他の傭兵崩れたちが気づいた様子はない。


「奇襲は可能だな」


 ミカエラは状況を判断してそう言った。


……………………

本日の更新はこれで終了です。


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