↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境のウンディーネさん  作者: みずのひかり
99/166

『ウンディーネさんとダークエルフさん ②』

「魂浄化《ソウルパリフィケーション》! からの……完全回復(フルリカバリー)!!」


 ふたつの魔法を連続で発動し、ベリアさんに掛けられた毒の治療と回復を行います。


 すると……。


「うっ、ううっ……うがあぁぁっ!!」


 ベリアさんが突然、苦しみ出したのです。


 でもこれは、魂浄化《ソウルパリフィケーション》が効いている証拠。


 ダークエルフさんの毒は『魔術刻印と同様に、魂に刻み込まれる』と言ってましたからね。

 魂浄化《ソウルパリフィケーション》で治療ができると思っていました。


 わたしの睨んだ通りです。


 それから数秒後、ベリアさんは何事もなかったかのように立ち上がります。

 ばつの悪そうな表情を浮かべながら。


「また、お嬢ちゃんに助けられちまったね……」


「いえいえ、お気になさらずに。浄化の魔法が効いて良かったです」


「ありがとさん。ところで……なんでお嬢ちゃんはアタイがココにいると、わかったんだい?」


「それはリアットさんのお陰ですよ」


「リアットが? あ……ルミナモースの粉かい。さすが、リアットだよ」


 そう言って、ベリアさんはリアットさんの頭をわしゃわしゃと撫でました。

 そのリアットさんですが、体をプルプルと震わせています。


 そして次の瞬間、勢いよくベリアさんに抱き着いたのです。


「『さすが』じゃないっすよ! なんで、ひとりでアイツを追いかけたりしたんすかっ!! 心配したんすよ……うっ、うううっ…………」


 リアットさんの頬を涙が伝っていました。


 そんなリアットさんのことを、ベリアさんは優しく抱きしめます。


「悪かったね。でも、アタイは見ちまったんだよ」


「ぐすっ……なにを見たんすか?」


「モンスター共が押し寄せてきた時のコトさね。岩の後ろから逃げようとした、ボスの姿をさ」


「それで姐御はアイツのあとを追ったんすか」


「ココまできて、逃がすワケにはいかないさね。ダークエルフと言っても、中身はアタイらと同じ人族さ。一対一なら、アタイでもどうにかなる……でもその考えが甘かったね。毒のナイフで返り討ちにあったってワケさね。とんだドジを踏んだもんだよ」


 ベリアさんは苦笑します。


 反省していると思いますけどね。

 わたしからも一言言わせてください。


「もう、こんなことをしないでくださいね。わたしだって心配したんですから」


「わかってるさね。そういや……ボスはどこに行っちまったんだい?」


「姐御の後ろっすよ」


 リアットさんに言われて、ベリアさんは振り返ります。


 ベリアさんと一緒に同じ方向に視線を向けると、大きな岩の前にボロボロの状態で横たわっているダークエルフさんが見えました。

 そんなダークエルフさんの変わり果てた姿に、ベリアさんは呆れたように笑ったのです。


「まったく……また派手にやったもんだね」


「わたしの大切な人を傷つけた罰ですよ」


「大切……そうかい。嬉しいコトを言ってくれるじゃないか。やっぱりお嬢ちゃんは、心底尽くし甲斐のある主サマだよ」


「そうっすね。お嬢サマは最高っす!」


「そんな風に言われると照れますね。ティーニヤさんのお兄さんを上層で待たせているので、そろそろ帰りましょうか」


 わたしの言葉に、ベリアさんとリアットさんが頷きます。


 こうして、わたしたちは中層をあとにしたのです。


 ボスさん?

 もちろん、一緒ですよ。


 ただ……目が覚めても騒がれないように、シュヴァルツさんに色々とお願いしましたけどね。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 上層に上ったところで、ティーニヤさんのお兄さんと再会します。

 お兄さんは、わたしを見て、ほっとした表情を浮かべていました。


「無事で何よりだ。其女の帰りが遅いと感じてな、迎えに行く所であった」


「あ……そうだったんですか。それは、ご心配をお掛けしました」


 わたしが頭を下げると、ベリアさんとリアットさんも同じように頭を下げたのです。


「なに、私が勝手にした事だ。気にしなくて良い。それよりも、神獣様の尾に巻かれて居るのは……」


「ダークエルフさんですよ。ベリアさんに酷いことをしてたので、ちょっと懲らしめちゃいました」


「『ちょっと』だと? そうは見えんが……」


 まあ、未だ目を覚ますことなく、ぐったりしてますからねぇ。


 でも大丈夫だと断言しておきます。

 ここに来る前に、大回復(グレイトヒール)だけは掛けておいたので。


 それに、目を覚まさないのはシュヴァルツさんの爪で麻痺させているからです。

 先ほどシュヴァルツさんにお願いしたのは、このことだったりします。


 それをお兄さんに伝えると……。


「ふむ、神獣様はその様な事も出来るのか。ならば此のまま麻痺させた方が良いな」


 そう言うと、お兄さんはお馬さんと一緒に背を向けました。


 そして空に向かって右手を高く突き上げたのです。


「皆の者、良く聞けっ! 首謀者であるダークエルフは、ディーネ殿の手によって捕らえられたっ!!」


 力強いお兄さんの言葉。


 その言葉に応じるように、兵士さんたちと冒険者さんたちも右手を高く突き上げました。


「「「「「おおーーーっ!!」」」」」


 深淵の谷(アビスバレー)に響き渡る大歓声。


 ところが、この大歓声に紛れて……。


「女神様、バンザイ! 女神様、バンザーイ!!」


 なんて言葉も聞こえてきたのです。


 それを口にしたのは、わたしの忠告を無視した兵士さんでした。


 初めてお会いした時の態度はどこへやら。

 夢中になって両手を上げ下げしています。


 いやいや、そんなことよりも……。


 恥ずかしいからやめてもらえませんか?

 それにわたしは、女神様じゃありませんから!


 そう反論したくても、万歳コールは兵士さん……いや、冒険者さんたちにも広がります。


「「「「「女神様、バンザイ! 女神様、バンザーイ!!」」」」」


 この状況では、わたしの声が届くとは思いません。


 そこで、お兄さんに頼んで止めてもらおうと思ったのですが……。


「お前達の感謝は、その程度かっ! もっと、声を上げよっ!!」


 ノリノリで皆さんのことを煽っていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。