↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境のウンディーネさん  作者: みずのひかり
90/166

『ウンディーネさんと深淵の谷 ①』

 ティーニヤさんを安心させるべく、深淵の谷(アビスバレー)に向かうことを決めたワケですが……。


 大事なことを聞き忘れていました。

 まずはそれを確認します。


「そう言えば……ティーニヤさんのお兄さんは、いつ出発する予定なんですか?」


「ええと、今日が1週目の『水の9日』になりますから……明後日ですわね。2週目の『光の1日』の朝には出立すると思いますわ」


 水の9日? 光の1日?!

 どこかで聞いたことがあるような……。


 あっ! こちらの世界の1週間のことでしたね。


 1週間は10日もあるんでしたっけ。

 入院している時から曜日の感覚とかなかったので、すっかり忘れていました。


 では気を取り直して……。


「そうですか。それでは明後日の朝、アルファルムンの裏門で、お兄さんと合流すれば良いですよね?」


「ええ。それで、お願い致しますわ。お兄様にお会い出来ましたら……この書状を渡してくださいな」


 そう言って、とても立派な封筒を手渡されます。


 裏には赤いロウソクで、封が押されていました。

 確か『封蝋』と言うんですよね。


 中世のお手紙みたいで素敵です。


 そのお手紙を眺めながら、ティーニヤさんに訊ねます。


「わかりました。ちなみに……このお手紙には、なにが書かれているのですか?」


「その書状には、わたくしとディーネさんが良き友人同士である事が記載されてますわ」


 良き友人?

 確かにティーニヤさんとは、仲良くさせてもらっていますが……。


「それだけですか?」


「それだけですわ。ですが、とても重要な事ですのよ? 通常であれば、人族が大国の領主と同行するなど、あり得ませんもの」


 ティーニヤさんの言葉を聞いて、ハッとしました。

 それと同時に、納得します。


 平凡な人族のわたしと、領主さんを務める、ハイエルフさんの、お兄さん。

 なるほど……。


「わたしとお兄さんとでは、身分が違い過ぎますね」


「ディーネさんの実力を知らぬ者は、そう思いますわよね。ですから、わたくしの友人である事が、重要になってきますの。お兄様なら、妹が認めた相手を、ないがしろには致しませんからね。それに……ディーネさんは女神さ…………ゴニョゴニョ」


「それに? なんですか??」


 最後のほうが聞き取れませんでした。


 もう一度、言って貰おうと思ったのですが、ティーニヤさんは首を横に振ります。


「いえ……なんでもありませんわ。それより、ディーネさんのお連れの方は4名ですわよね?」


 4名?

 なぜその数字になるのでしょうか??


 理解できず、今度はわたしが、首を横に振りました。


「いえいえ、シュヴァルツさんとフウカさんしか連れていきませんよ?」


「え? アンデイルさんと、アスィミさんは、お連れになりませんの??」


「一緒なら心強いんですけどね。お二人は日中の見回りがありますから」


「……あっ、そうでしたわね。わたくしとした事が失念してましたわ。どうしましょう……」


 頭を抱えるティーニヤさん。

 かなり困っているようです。


「もしかして、4人連れて行かないとダメな感じですか?」


「ええ。その書状に、ディーネさんのお連れの方は4名居ますと書いてしまいましたの」


「あらら……書き直すわけには、いかないんですか?」


「無理ですわ。わたくしが執筆した事を示す、紋章の入った羊皮紙の在庫がありませんの」


「そうですか……まあ、あとの二人は、なんとかしますよ。ですから、気にしないでくださいね」


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ……とは言ったものの。


「なるほどねぇ……で、そのひとりが、アタイってコトなのかい?」


「すいません。ベリアさんしか頼める人がいなくて……」


 ベリアさんたちが暮らす、食堂の一角。


 そこでわたしは、ベリアさんに頭を下げています。


「まあ、良いさね。領主サマが深淵の谷(アビスバレー)に行くコトになったのは、アタイにも責任があるさね。それに、ボスの姿をしってるのは、アタイくらいだしね。お嬢ちゃんに、つきあうよ」


「ありがとうございます!」


 わたしは再び頭を下げました。


 そして顔を上げると……。


「まだひとり空きがあるなら、ウチもついて行くっすよ!」


 嬉しいことに、リアットさんが名乗り出てくれたのです。


「リアットさんも、ありがとうございます」


「お礼を言いたいのは、ウチのほうっすよ」


「はい? それは……どう言うことですか??」


「お嬢サマは、ウチらがハンターギルドに入った経緯を知ってるんっすよね?」


「ええ、まあ。ベリアさんのお仲間さんが、解毒魔法が効かない毒を受けたと……その毒の治療をする代わりに、ハンターギルドに入ったと聞きました」


「そん時の毒を食らったのが、ウチなんすよ」


 リアットさんのお話に、思わず言葉を失いました。


「…………え? そうだったんですか?!」


「そうっすよ。だから……姐御や仲間たちをあんな目に遭わせたアイツが許せないっす」


 アイツと言うのは、ハンターギルドのギルドマスターさん……。

 つまり、ダークエルフさんのことですよね。


 リアットさんの目から、憎しみの感情みたいなものが溢れ出ているように感じました。


 気持ちは、わかります。

 わたしも、大切な家族が同じことをされたら、正気を保っている自信がありませんから。


 それでも……。


「復讐とかしたらダメですよ? 誰かを恨み続けることは、それだけで心も体も疲れちゃいますから。辛かったことを忘れてください……とまでは言いません。でも、これからは楽しいことを考えて欲しいと思います。リアットさんにとって、ここでの生活は楽しくないですか??」


「そ、そんなの……楽しいに決まってるじゃないっすか! それに、すごく幸せっす!!」


「ならそれで良いじゃないですか」


「そうっすね。でも……ウチは、お嬢サマと一緒に深淵の谷(アビスバレー)に行くっすよ。アイツをとっつかまえてやるっす!」


 やる気を滲ませる、リアットさん。

 そこに、憎しみの感情は見られませんでした。


 良かった。


 そう思いつつ、ベリアさんに視線を移します。


「アタイかい? アタイはもう恨んでなんかないさね。ただ……この生活をぶち壊すようだったら、ただじゃおかないね」


「それは、わたしも同じですよ。まあ、絶対にそんなことは、させませんけどね……フフフ」


「お、お嬢ちゃん?! あ……いや、なんでもないさね」


 ベリアさんが、わたしから視線を逸らしました。


 なにか、あったのでしょうか?

 理由はわかりませんが、ベリアさんが怯えたような表情を浮かべています。


 うーん、ちょっと気になりますね。


 まあ、それはさておき。

 これで同行者さんを無事確保です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。