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辺境のウンディーネさん  作者: みずのひかり
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『ウンディーネさんと町の守護神の死の真相 再び ①』

門よ開け(ゲートオープン)! 移動目的地(デスティネーション)ラドブルク!!」


 神具の腕輪が輝き、大きな光の柱が生み出されます。

 その光の中にいるのは、わたしとシュヴァルツさんとフウカさん……あとティーニヤさんです。


 すぐに光の柱が消え、ラドブルクに到着したわけですが……。


「あれ? エリサさんがいませんね」


 今までのパターンなら、魔法の練習をしているはず。

 そう思っていたのですが、祭壇の前には誰もいませんでした。


 とりあえず、周りをキョロキョロと見渡します。

 すると執務室のドアから、明かりが漏れていることに気づいたのです。


「執務室にいるかもしれませんね。ティーニヤさん、行きますよ……って、ティーニヤさん?!」


 ティーニヤさんに視線を向けたところ、なぜかわたしを見つめて祈るように両手の指を組んでいました。


「ディーネさん……いえ、ディーネ様。貴女は女神様であられましたのね」


「え? わたしは人族ですよ。あと『様』はやめてください。お友達なんですから」


「そう仰られても、そちらの腕輪は女神様である証のようなものですわ。人族であろうと敬うのが当然の……」


「もしそれ以上言うのなら、お友達になるのをやめますよ?」


 そう言って、ティーニヤさんの言葉を遮ります。


 はじめてできたお友達に、特別扱いとかされたくないんです。

 その気持ちが伝わったのか……。


「それは嫌ですわ!!」


 ティーニヤさんは全力で否定しました。

 女神様として接するより、お友達であることを選んでくれて、素直に嬉しく思います。


 では気を取り直して。


「行きますよ。ティーニヤさん」


「ええ、ディーネさん」


 ティーニヤさんの手を引いて、わたしは執務室の前へと歩いて行きました。


 するとドアの向こうから、女性の声が聞こえてきたのです。


「……ちゃんへ、元気にしてますかぁ? お姉ちゃんはとっても元気ですぅ~。そうそう! このまえ、石化除去(すとーんりむーぶ)を覚えたんですよぉ……」


 声の主はエリサさんでした。

 どうやら手紙を書いているようですね。


 しかもその相手は……。


「エリミアちゃんは、お仕事順調ですかぁ?」


 まさかの、エリミア様でした。


 これには隣にいる、ティーニヤさんも驚きを隠せない様子。

 小刻みに体を震わせてました。


 その振動が、つないだ手から伝わってきます。


「ティーニヤさん、大丈夫ですか?」


「……だ、大丈夫ですわ」


 気持ちを落ち着かせるため、二人で一緒に深呼吸。


「「すーはー、すーはー……」」


 そして執務室のドアを開けたのです。


「エリサさん、こんにちは」


「お久しぶりですわね。エリサさん」


「お、お師匠さま? それに、ティーニヤ様も?! お二人そろって、どうしたんですかぁ??」


「エリサさんに、お聞きしたいことがあったんですよ」


「な、なんですかぁ?」


「でもその前に……今、お手紙を書いていたみたいですけど。誰に書いてたんですか?」


 マナー違反だと思いますが、わたしは机の上にある、お手紙に視線を落とします。

 ところが、それを隠すようにエリサさんは、わたしの前に立ちはだかったのです。


「そ、それはぁ……」


「エリミアさんですわよね?」


 わたしのすぐ隣から、冷ややかな声が聞こえました。

 説明するまでもありませんが、ティーニヤさんの声です。


 ティーニヤさんは、エリサさんに鋭い視線を向けます。

 その気迫に恐怖を感じたエリミアさんは、肯定するように小さく頷きました。


「は……はいですぅ……」


「お手紙を書いていると言うことは、エリミア様は生きているってことですよね?」


「……多分、生きていると思いますぅ」


「多分って、断言できないんですか?」


「女神様が連れて行ったきり、会ってませんからぁ……でもぉ、お手紙のお返事は来ているので、きっと元気なはずですぅ」


 そう言って、エリサさんはエリミア様から送られてきたお手紙を見せてくれたのです。


 そこにはエリサさんのことだけでなく、イールフォリオに暮らすエルフさんたちのこと……ティーニヤさんのことなどが書かれていました。

 あと、お家に置き去りにしてしまった風の精霊(フウカ)さんのことも……。


 それを見て、ティーニヤさんとフウカさんは目に涙を浮かべます。


 生きていて良かった。


 普通はそう思いますよね?

 でもわたしの頭の中は疑問だらけでした。


「あの~、エリサさん。エリサさんはエリミア様と滅多に会わないと聞いたんですけど、本当のところどうだったんですか?」


「1年に1度くらいしか会ってませんからぁ、滅多に会いませんよぉ? でもぉ、女神様に連れて行かれる前は週に1度くらいのペースで会ってましたぁ。そのことは黙っているようにと、エリミアちゃんにお願いされましたけどぉ……」


「なぜ黙っているように、お願いされたんですか?」


「それはぁ……わたしを巻き込まないためだと思いますぅ。エリミアちゃんがしようとしてたことは、ティーニヤ様を裏切ることと同じでしたからぁ……」


 この言葉に、ティーニヤさんが素早く反応します。


「わたくしの事を裏切る? それはどう言う事ですの??」


「エリミアちゃんは、1か月後に旅に出たいと言ってませんでしたかぁ?」


「ええ、仰ってましたわ」


「でもそうなる前に黙って旅に出たら、ティーニヤ様を裏切ることになりませんかぁ?」


「そうですわね……え? ま、まさか……」


「その、()()()なんですぅ。別に最初からそうするつもりはなかったんですよぉ? ただぁ……女神様がお迎えに来る時期が予定してた日よりも早くなってしまってぇ、こうするしかなかったんですぅ。ごめんなさあい!!」


 深々と何度も頭を下げる、エリサさん。

 その姿を眺めるティーニヤさんは、さらにショックを受けているようでした。


 信用しているかたに裏切られたのですから、そんな気持ちにもなりますよね。


 しかしエリサさんのお話を聞けば聞くほど、疑問が増えるばかりです。

 その中でも1番気になるのが……。


「ところで……先ほどから会話に出ている、『女神様』って誰のことですか?」


「レファリナ様ですぅ」


「レファリナ様? 復活の女神様の??」


「はいですぅ」


「なぜレファリナ様が、エリミア様を連れて行ったのですか?」


「詳しいことは、わからないですぅ。わたしがエリミアちゃんから聞いたのは()()()()()で旅のお仕事ができるってことだけですからぁ……」


 新しい世界?

 なんとなく思い当たることがあるような、ないような……。


 そんなことを考えながら、お話の続きを聞きました。


「ただぁ、その新しい世界の1週間は7日しかなくてぇ……それが原因で旅に出ようとしていた日程が大幅に短くなったそうですぅ。エリミアちゃんは、その新しい世界のこと、なんて言ってたかなぁ? えん……えんちゃんと?? うーん、思い出せないですぅ……」


 頭を抱える、エリサさん。


 エンチャントは特殊な効果を付与するとか、そんな意味じゃなかったでしたっけ?


 いやいや、そんなことよりも!

 1週間が7日と言いませんでしたか?!


 さらに、『エンチャント』の響きにも似た、新しい世界のお名前。


 もしかして……。


「その新しい世界って、エンシェントワールドとか言ってませんでした?」


「そ、それですぅ! さすが、お師匠さまですねぇ~。その『えんしぇんとわーるど』と言う世界で、エリミアちゃんは『えぬぴーしー』って、お仕事をしているそうですぅ」


 え、NPC……。


 まさかの展開に、今度はわたしが頭を抱えるのでした。

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