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辺境のウンディーネさん  作者: みずのひかり
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『ウンディーネさんとハンターギルドの幹部さん』

 海を漂う海賊さんたち。

 捕らえてみたら、20人ほどいたとかなんとか。


 手錠の数が足りないらしく、全員ローブで縛られることになりました。

 もちろん、この中にはラドブルクで出会った女性のハンターさんも含まれています。


 ただ、ハンターさんはこの女性のみ。

 他は全員海賊さんだったのです。


 そしてこの女性のハンターさんに向かって、マルホフさんが訊ねました。


「ハンターギルドの幹部、ベリアで間違いないか?」


 へえ、ハンターさんのお名前はベリアさんと言うのですか。

 聞いたところで別に興味もありませんが。


 そのベリアさんですが、マルホフさんを睨みつけながら口を開きました。


「だったらなんだって言うのさ」


「一つ聞きたい。何故、海賊と手を組んだのだ?」


「別に手を組んだワケじゃないさね」


「なんだと? ならどうして、ハンターしか所持していない()()()を海賊が持っているのだ??」


 さらに質問を続けるマルホフさん。

 それに対してベリアさんは薄ら笑いを浮かべました。


「聞きたいコトはひとつじゃなかったの~? 欲張りなオトコは嫌われるわよ~。まっ、教える気なんてないけどね~」


 ベリアさんと初めてお会いした時、こんな口調でお話してましたっけ。

 懐かしいとは思いませんが、聞いていて気持ちの良いものでもありません。


 それでも気になることがあるので、今度はわたしから訊ねてみることにしました。


「あの~、わたしも聞きたいことがあるのですが……良いですか?」


「なっ、なにさねっ?!」


 突然震え上がるベリアさん。

 なんでそんなに怯えているのでしょうか?


 不思議に思いつつも、知りたいことだけ聞くことに。


「えーっと、なんでベリアさんは海賊さんたちの船に乗っていたんですか? 逃亡目的とか、そんな感じですか??」


「そ、そんなチンケなモンじゃないよっ! アタイはカスタリーニに行きたかっただけ。あの軍人の女に会って確かめたいコトがあったのさ。それも叶わなくなっちまったけどね……」


 そう言うとベリアさんは力が抜けたように俯きました。

 かなり落ち込んでいるみたいですね。


 まあ、捕まってしまったからには、その願いも叶わないのですが……。

 それよりも聞きたいことが増えてしまいました。


「軍人の女の人って……グリエムさんのことですよね?」


「ふん、そんな名前だったかね」


「人違いなら良いんですけど。もしグリエムさんをお探しになるなら、王都にはいませんよ? 軍のお仕事は辞められて、今はラドブルクで冒険者さんをしてますから」


 さすがにクビになったとは言えませんからねぇ。


 なのでわたしは苦笑しながら答えます。

 その一方で、ベリアさんは再び体を震わせていました。


 でも今度は怯えているような感じではありません。

 どちらかと言うと、大きなショックを受けたように思えます。


「お、お、お、お嬢ちゃん? 今の話はホントなのかい?!」


「本当のことですよ」


「じゃあナニかい。アタイは海賊のヤロウ共に毒を渡さなくても良かったってコトかい??」


「ベリアさんがお探しになっている人がグリエムさんなら、そうなりますね。もしかして……毒を渡す代わりに、船に乗せてもらったんですか?」


「アタイはお尋ね者だからね。こうでもしないと船になんて乗れはしないよ」


 このお話を聞いて、マルホフさんが両腕の組みながら小さく頷きました。


「なるほどな。()()()は乗船賃って事か。ならば、本当にハンターギルドと海賊は手を組んだ訳ではないのだな?」


「まったく、しつこいオトコだね。アタイらハンターの領分は陸って相場が決まってる。誰が好き好んで海の賊どもと仲良くしなきゃいけないのさ」


「な、なら良いんだ」


 ベリアさんの言葉に、気圧されるマルホフさん。

 なんだか立場が逆のように見えます。


 まあ、それはどうでも良いのですが……。


 わたしはさらに聞きたいことが増えていました。


「ところで、グリエムさんに会って確かめたいことって、なんですか?」


「あのグリエムって女が言ってたのさ。『金の無い人族にも、手を差し伸べてくれる神官殿がいる』ってね。今思えば、馬鹿げた話さね。そんなオイシイ話が、あるワケないじゃない」


「美味しいお話かどうかはわかりませんが……別に馬鹿げたお話でもないですよ? グリエムさんが言ったことは事実ですから」


「お嬢ちゃん? アンタまでナニ言ってんのさ??」


「詳しいことは後でお話ししますね。今はこちらのかたを優先しないといけないので」


 船が止まると同時に感じる、なんとも言えない威圧感。


 どうやら目的地に到着したようですね。

 振り返った先に、暴れまわるクラーケンさんの姿がありましたから。


 ですが周りに被害は出ていない様子。

 なぜならセイレーンさんたちが、お水と風の魔法で結界みたいなものを作っていたからです。


 形状はバブルドームに似てますね。

 色は青と緑の二色ですが……。


 そこでわたしはシレーヌさんに訊ねます。


「魅了の歌声の他に、こんな魔法も使えたんですね」


「我等セイレーンハ、水ト風ノ属性ヲ併セ持ツ種族ダカラナ。力ヲ合ワセレバ、コノ程度ノ魔法ハ……ウッ! グヌヌゥ……」


 お話ししている途中、突然シレーヌさんが苦しみ始めました。

 片膝をつき、胸を強く押さえています。


 それと同時にクラーケンさんが暴れるのを止め、ぐったりと倒れ込んだのです。


 その直後、シレーヌさんも甲板の上に倒れるのでした。

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