自覚
俺「結婚するの!?!? 嘘だろ!?!?」
さとみ「え……?」
終わった。俺の人生は終わった。右原さとみだけが俺の人生だったのに。右原さとみが未婚だってことだけが俺の生きる糧だったのに。死ぬしかない。
俺「いや、もう死んでるのか……」
テレビを見る。映っているのは見慣れた光景、大学からの帰り道。画面の下の方には俺の高校の時の顔写真が映っている。
俺「待てよ、なんで死んでるのに俺はここに……」
隣を見る。呆然としている右原さとみ。
俺「なんで俺は……右原さとみと一緒にいるんだ……?」
右原さとみが声を振り絞るようにして喋る。
さとみ「なんでそんなこと言うの……?」
俺「あ、あの……失礼ですけど右原さとみさんですよね……僕は一体……」
パチン!
左頬が痛い。ビンタだ。右原さとみにビンタされた。
俺「あ、あの」
さとみ「結婚の発表延期しよっか、事務所に言ってくる」
俺「ちょっと」
さとみ「また後でね」
右原さとみが部屋から出ていってしまった。結婚……結婚の発表。俺に言ってる? どうして俺に?
彼女が置いていった紙を見る。御報告と書かれた紙。彼女のことは顔しか知らなかったけど、字も綺麗だ。
俺「これを前にして俺と話していたということは……」
まさか。でも、俺は死んでいるのに生きているんだから何が起こっていてもおかしくはない。
自分の左手の薬指。指輪。こんなもの初めて付けた。陰キャ大学生には縁のない一品だ。
俺「俺と結婚するのか……?」




