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レドウの華麗なる冒険譚  作者: だる8
第五章 光と闇
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第81話 結婚式と披露宴


 まずはレドウが階下へと降りていく。


 見知った顔がポツポツと見える。急な招待状ではあったが、冒険者仲間の何人かが訪れてくれているようだ。その中にはリズの姿もある。レドウと目が合うとちぎれんばかりに手を振ってきた。

 見慣れぬおっさんと一緒にいるが、あれはきっとギルド(マスター)だろうと思うレドウであった。


 そのまま出口に控えていたリュート小隊長の元に向かうと「レドウさん。こちらへどうぞ」と案内されたので、そのままリュートに従って建物をでた。

 向かう先はヴィスタリア大神殿である。

 まず、ヴィスタリア連合王国の王族のしきたりに従った『神殿式』と呼ばれる結婚式から開始する。


 これに列席できるのは親族と八輝章家当主のみである。

 従者はもちろんのこと、次期当主や当主代理であってもこの式に参加することはかなわない。


 既に当主アレクを除いた列席者一同は、大神殿で待っているはずである。


 レドウが城の外にでると、来賓達の注意は再び階段へと注がれる。新婦シルフィが降りてくる筈だからである。しばらくすると、使用人長のルシーダさんに連れられて顔をベールで包んで見えなくしたシルフィがゆっくりと降りてきた。


 要するにここで新婦は顔を見せてはいけないのだ。

 シルフィ本人も前が見えない状態……(厳密には足下だけが見える)であるため、移動にはルシーダさん達のエスコートが必須だ。


 そして階下に控えるは父親である当主アレクである。


 転ばぬようルシーダさんのサポートのもとゆっくりと階段を降りきると、アレクがシルフィの手を取る。ここからは父親のエスコートである。


 ルシーダさんたちはシルフィの長いドレスの裾をもち、変わらずシルフィの移動のサポートを続ける。

 従者としてアイリスの他、第一小隊副長の女性騎士ケリーがつき、アレクとシルフィが城の外へと出て行くのを来賓達は見送ったのだった。


 一方、リュートの案内でヴィスタリア大神殿の入り口に到着したレドウ。


「自分の案内はここまでです。このまま祭壇の前まで行って一礼したのち、シルフィア様の到着をお待ちください」

「わかった。ありがとうな」


 リュートに礼を言うと、祭壇までの道は赤い絨毯が敷かれており、その左側に八輝章家当主と思われる面々が並んでいる。右側にはレドウの親族三人の姿がある。

 レドウはリュートの案内通りに赤い絨毯の上を祭壇まで歩き、祭壇に向かって丁寧に一礼する。

 そして来た道の方を向いてシルフィの到着を待つ。


 しばらくすると、アレクのエスコートでシルフィがやってきた。

 顔を白いベールで覆ったままの到着である。視界を奪われた状態での歩行は神経を使うし、大変だったろうと思われる。


 祭壇の前までやってきた二人の前で、レドウはアレクからエスコートしていたシルフィの手を受け取る。するとシルフィが軽く握り返してきた。

 レドウはその手をとってシルフィと共に祭壇の前で並ぶ。


 すると八輝章家側の先頭にいた白髪の男が、錫杖を持って祭壇の向こう側に立った。


「これよりヴィスタ聖教神の名において、八輝章家の婚儀を執り行う!立会人はヴィスタ聖教神の代理として、このカイル=イスト=ヴィスタリアが務める」


 なんと立会人は現国王であった。レドウがその姿を目にするのは初めてだ。


「新郎。港町シーラン町長が嫡男、レドウ=カザルスよ。そなたの誓いをヴィスタ聖教神に伝えよ」


 国王の持つ錫杖の柄が床の大理石に打ち付けられ、シャランと鳴る。

 レドウの肩書きに『シーラン町長の嫡男』とついたことに対して、町長になってて良かったとレナードが心底ホッとしていたことは内緒である。


「わたくしレドウ=カザルスは、アスタルテ家長女シルフィア=イスト=アスタルテを妻とし、生涯、愛を捧げることをヴィスタ聖教神に誓う!」


 レドウの声が背後に見えるアルカス山脈に向かって響く。


「それでは新郎は新婦の真白きベールを取りなさい」


 国王の合図で、レドウはシルフィの頭に被せられた純白のベールを取る。

 ベールのなかから、レース越しにシルフィの顔が覗く。

 次に国王はシルフィの方を向いた。


「新婦。ヴィスタ聖教八輝章家が一つ!アスタルテ家皇女、シルフィア=イスト=アスタルテよ。そなたの誓いをヴィスタ聖教神に伝えよ」


 国王の持つ錫杖の柄が再び床の大理石に打ち付けられ、シャランと鳴る。


「わたくしシルフィア=イスト=アスタルテは、レドウ=カザルスを夫とし、生涯、愛を捧げることをヴィスタ聖教神に誓います!」


 シルフィのの凜とした声もその場に響いた。


「それでは双方、誓いの口づけをヴィスタ聖教神に捧げよ」


 シルフィはレドウがベールを上げやすいように軽く中腰になった。

 身長差がある二人なので、実はかがまなくとも問題はないのだが、ここはシルフィのちょっとしたプライドのようなものだろう。


 レドウがシルフィの顔を覆っていたレースのベールをゆっくりと上げると、中からシルフィの顔が現れる。

 キラキラと輝くような笑顔でレドウを見つめるシルフィ。レドウは顔を近づけ、そっと口づけをかわした。


「誓いは成された!ここに我ら八輝章家のさらなる繁栄をヴィスタ聖教神に捧げる!!」


 この瞬間、レドウの名前はレドウ=カザルスから、レドウ=イスト=アスタルテとなった。

 『イスト』とは本来、八輝章家直系のみが名乗るミドルネームであるのだが、姻族であっても次期当主候補だけは『イスト』と名乗ることを許されている。

 余談だがアレクもその一人であり、歴代女系家族であったアスタルテ家の男性は、実は全員がこの制度による『イスト』である。


 国王の宣言で列席者から一斉に拍手が起こる。

 レドウとシルフィが皆の方を向き直るとさらに二人に向ける拍手の音が大きくなった。

 ここでレドウは一つの違和感を覚える。……マーニス家の当主としてユリウスがおらず、代わりにグリフィスの姿が見えたからだ。


(ん?事前説明では当主候補では列席出来ないと聞いていたが……既に当主継承した?現マーニス家当主は既にグリフィスということか?)


 今考えても分かることではないのだが、レドウはこの事実を心に留め置くことにした。


 大神殿から、アスタルテ家の居城に戻ると今度は居城にて待機していた来賓達から暖かい拍手で迎えられた。

 こんどはこのアスタルテ家で、来賓向けの披露宴である。


 この場には八輝章家……特に当主は出席しない。

 基本的には個別に招待状で声をかけた来賓客と親族がメインとなる、本日のイベントで最も気楽な披露宴である。

 とは言っても、特別親交の厚い繋がりがある場合この限りではなく、この場にはカーライル家一同の姿と、なんとパーン家当主であるソーマの姿があった。


 披露宴会場は、普段食堂として使用している大広間である。

 会場として使用できるようやや改装が入っているようだ。


 大広間の奥に作られた高砂にレドウとシルフィの二人が座る。

 すると、何故か騎士団第二小隊のラウルが司会として立った。


「本日は、兄……当家レドウ様とシルフィア様の結婚披露宴にご列席頂きますて、ありがとうござます。し、新郎のレドウ様より皆様にご挨拶をさせて頂きます」


 ラウルめ……あいつ兄貴って言いそうになっただろ?しかも噛んでやがる。

 と、思いながらレドウは席を立ち、一歩前に出る。


「本日は私たち二人の結婚披露宴にご列席頂きましてありがとうございます。ささやかではございますが、宴席をご用意させて頂きましたので、どうぞ皆様楽しい時をお過ごし頂けますようお願い致します」


 さすが年の功(少々年上な程度)である。『ラウルとは違う』ことをしっかりと見せつけ、レドウは席にもどった。


「そりでは、冒険者ギルドの代表として、ギルド(マスター)のキプロス様に乾杯の音頭を頂きます」


 まだ若干怪しいラウルの司会だったが、そんなことは気にせずに立ち上がるギルド(マスター)


「冒険者稼業というものは、探索にロマンを求めながらも泥臭く、地道にコツコツと積み上げて結果を出す仕事です。このたびそんな我らの仲間である冒険者レドウ君が、このような美しい姫君と婚姻できたという事実は、多くの冒険者達に夢と希望を与える光となることでしょう。我ら冒険者ギルドはどこまでも君の味方だ。我らが同胞と美しきアスタルテ家の姫君に光あれ!乾杯!!」


 さらに貫禄を見せつけたギルド(マスター)であった。

 司会のラウルが『ご歓談下さい!』と言うが早いか、二人と直接会話をしたい人たちが一斉に列をなして順番待ちを始めた。

 大人気の二人である。


 二人の前に最初に現れたのはリズだ。こいつは力も強い上に素早いようだ。


「へへ。レドウぅおめでとぅ!私がぁ、依頼を請けたおかげよねぇ」


 どうやら、レドウの意見を聞かずにアスタルテ家の依頼を勝手に請けたことを手柄だと言っているようだ。


「あ、あなたは私とアイリスがギルドを最初に訪れた時に対応してくれたスタッフさんですよね?」

「そおよぉ。リズだよぉ。今後もよろしくねぇ」


 シルフィと握手を交わすリズ。


「わかったわかった。リズの手柄でいいよ。こんどなんか奢るわ」

「ほんとぉ?じゃあね、オピタルのレストランのフルコースを……」

「料理の指定はさせねぇぞ。そんな高いもん奢れるかよ。ささ、後ろが詰まってるからまた後でな」

「絶対よぉ~」


 悪魔の約束を取り付けようとするリズを早々に追い払うレドウ。

 次に現れたのはジラールだ。


「レドウおめでとう!まさか二人がここまでの関係になっているとは思いませんでした」

「あ、ジラールさん。先日はお世話になりました」


 シルフィがぺこりと頭を下げる。


「いやいや、あれはアスタルテ家の依頼という形で正式に請けた仕事ですからね。むしろ貴女のお陰で私は助かったのですから、お礼を言うのは私の方ですよ」


 今度はジラールが一礼する。


「ところでジラール、(レーナ)と一緒に来ていたようだが、どうだ?あいつは使えるかい?冒険者としては新米だろうから心配でさ」

「全く心配要りませんよ。とってもレーナさんは優秀です。しばらく専属パーティメンバーとして採用したいくらいです」

「そ、そうなのか。俺より優秀か……」


 ちょっとへこむレドウ。


「冒険者タイプがレドウとは違いますからね、比較するもんじゃないでしょう。……まぁ、しばらくレーナさんのことは私がしっかり面倒みますので安心して下さい」

「わかった。よろしくな」


 ジラールがレドウたちの元を離れると今度はなんとパーン家当主ソーマだった。


「あ、おっさんは決闘の時の……」

「コラ、レドウ。そんな呼び方はないでしょう」


 シルフィからお叱りを受けるレドウ。ちょっと小さくなる。


「わっはっは。まあ祝いの席であるし、細かい呼び方などどうでも良いだろう。しかし、なんだ。君たちがこんな間柄だとは思ってもいなかったぞ。故ミュラーの求婚に必死になるわけだな」

「いや、まだあのときはそんな……」


 ソーマが笑顔でレドウを見る。


「そうであったとしてもなかったとしても、全てヴィスタ聖教神は見ておられる。わしは君がこれから何か大きなことを成す……そんな予感がするよ。それが何かはわからぬがな」


 そう言い残してソーマはレドウたちのもとを離れていった。今度は当主アレクとアイリスのところで何か話しているようだ。


 このあとも列をなした来賓客がひっきりなしに二人のもとを訪れる。

 お色直しでシルフィが一時退席した時もその列は途切れることなく、披露宴という名の雑談会は時間が来るまで延々と続いたのであった。


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