旅立ち《ロゼリィア・エミリア》
これで僕の中での第1話は終了です。
まさかこんなに長くなるとは思いませんでした。
次回は軽いエピローグの予定です。
早朝、私は置き手紙を残し、この村を去ることにした。
本当はきちんと挨拶したいが、新しい追手がすぐに来るかもしれない。
『結局…ポーチは取り返せなかったな…。』
しかしグズグズしていられなかった。
急いで身支度を済ませ、この村を出て行くことにする。
『…やはり、リュートにはキチンと挨拶した方がいいだろうか…。』
リュートの寝るリビングへ行こうとする
『いや……一人だけそういうのは…良くないか…』
…リュート。
本当に世話になった。
リュートのおかげで、今私は生きている。
この恩は、世界を変えることで返してみせる。
リュートはまた、村のみんなと平和な日常を、過ごしてくれ。
…アメリアにもよろしくな。
私はリュートに気づかれないように裏口からでることにした。
外はまだ肌寒かったが、日差しが心地よかった。
『本当に…濃い5日間だったな…』
たった数日しかいれなかったが、何年も一緒だったかのようにこの村のみんなは私に優しくしてくれた。
いつか、またここにこよう。
そして、もう一度必ず、ありがとうって伝えよう。
そう決意した。
私は次に《リマニ港》に行こうとしていた。
昨日アメリアに教えてもらったが、村の西から伸びている一本道をずっと進めば、今日の昼前には港町に着けるらしい。
私はその一本道を進み始める。
『誰だ…?』
人影が見える。
確かに絶対に誰もいない時間帯ではない。朝早くからの仕事も十分にあり得る。
「よ。」
な……
「リュート?どうしてここに?」
「いや、昨日ポーチ渡し忘れてたから。あのノッポな兵士が持ってたんだよね。」
「あ、あぁ…それは本当にありがとう。」
ホラ、とリュートはポーチを渡してくれた。
「…ところで、なんでリュートは私がこの時間に出ることを知ってたんだ?」
「いや…アメリアが教えてくれてさ。
ちゃんと寝坊しないように頑張ったんだぜ?」
アメリアが…?
…昨日のことで気を使ってくれたのか?
「…その、やっぱり俺たちのことを気にして早く出るのか?」
「あぁ…その通りだ。これ以上迷惑はかけられないしな…。」
「そうか…。」
……やはり、リュートにはちゃんと本当のことを話すべきなのかもしれない。
彼にはそれぐらいの権利があるはずだ。
「その…な…あーロゼ…ひとつお願いしたいことがあるだけど…。」
ん?
急にシドロモドロになったな。
なんだというんだ?
「…すごい勝手なお願いなのは分かってるだけどさ…その…」
「なんだ?どうしたというんだ?恩人の頼みだ。多少のことならやぶさかではないぞ。」
「…あー、その俺も…ロゼの旅に連れて行ってくれないか?」
「………は?」
え?今なんと?
「だから、俺も連れて行って欲しいんだ。」
「な…は!?な、なんでだ?どうして…?」
リュートの語り…
どうやら本気みたいだな。
それ相応の理由があるのか…?
「…多分なんだけど、ロゼって皇国絡みのなんかなんだろ?俺さどうしても知りたいことがあるんだよ。」
「な、なんのことかな…。」
「…いいよ、もうそういうのは。」
リュートは呆れたようにそう言う。
く、くそ…そりゃわかるに決まっているか…
昨日あれだけの事があったしな。
「あぁ…そうだ。私はある事情で、皇国から逃げている。」
「やっぱり、そうだよな…それでさ、俺知りたいことがあるんだ。」
「知りたいこと…?」
皇国絡みでか…?
「あぁ…。俺の闘い方、どっかで見たことなかったか?」
…!
やはり、そうなのか。
リュートの闘いの師匠は…
…道理で見覚えがあった訳だ。
「…おそらくだが、カナン・アルスティンか?」
コクっとリュートはうなづいた。
カナン・アルスティン…
過去最高速度で《一級》や《超級》をもしのぐ、《特級》兵士になり、その女ということを感じさせない、テクニカルな戦闘スタイルは今でも、語種となっている。
…私も幼い頃は真似したものだ。
確か、何年か前に皇国を去ったと聞いていたが…まさかこんな村にいたとは。
「…殺されたのか?カナン・アルスティンは。」
「…うん。カナンは三年前に、皇国の《七騎士》に殺された。」
「な、七騎士だと!?そんなものが来たのか!!」
七騎士…!
『ニーレン皇国最強戦力』だぞ!?
それを出動させなければならないほどだったのか?
「…なぜカナンは殺されたんだ?」
「…分からない。」
リュートは悲しそうに呟いた。
「俺は本当に何も知らないんだ。カナンがなんで殺されたのか、誰に殺されたのかも分からない。」
「なら…七騎士が犯人だと、なぜ?」
「…カナンがそう言ってたんだ。」
知ってはいけない何かを知ってしまったのか…?
いずれにしろ、七騎士を使うなんて、相当に焦っていたみたいだな、皇国の奴らは…。
「俺さ、両親と兄妹を小さい頃に亡くしちゃってさ…その時に俺を拾ってくれたのがカナンだったんだ。あの人は俺に真っ当な生き方と闘い方を教えてくれた…。
親なのか友達なのか先生なのか、最後まで分からなかったけど、本当に大好きで尊敬してたんだ。」
「…だから、殺された理由が知りたい…と?」
「…うん。」
なるほど…アメリアが言っていたのはコレだったのか。
「…なぜ、私と?」
「それは……」
リュートは一瞬躊躇うような表情を見せた。
「…今しかないって思ったから…じゃ、いけないか?」
「…どういう意味だ?」
「…俺はいつか、カナンが殺された理由を探しに行こうってずっと考えてたんだ。
だからそのためにカナンが死んでからも修行は続けた。
けど、どうしても…村の外には出れなかった。」
「どうして…?」
「たぶん…怖かったんだと思う。この村は平和だし、戦うっていうことをリアルに感じることが出来なかった。
だから……
ロゼを見て、本当にスゴイなって尊敬したんだよ。」
「……。」
「ロゼは…俺と同い年くらいなのに、こんな危険な目にあってまで、何かを成し遂げようとしてる。
それがすっげえカッコ良いなって、そう思ったんだ。
だから……ロゼみたいに、俺もやるべきことをやらなくちゃって。」
「…なるほどな。」
確かに…私と共に、旅をすればいずれ皇国にも行くことになるだろう。
そうすれば、カナン・アルスティンが死んだ理由も分かるかもしれない。
…さて。
「…私の旅は危険だぞ?」
「そんなの関係ないよ。」
「ラルネスより強い敵が出るかもしれない。」
「もっともっと俺が強くなるさ。」
「…寂しいぞ?故郷を離れるのは。」
「…あーそれは辛いかも…。」
ハハッ
なんだコイツは…
けど…
「あーそういえばリュート私な。」
「?」
「これから女一人の旅も何かと物騒だと思ってな、ボディガードを雇おうと思ってたんだが…」
チラッとリュートを見る。
「…どうやら、そんなものを雇うお金はないみたいだ…だから…」
スーッと大きく息を吸う。
「リュート、どうか私と一緒に来てくれないか?」
「…あぁ!よろしくな!!ロゼ!!!」
私の差し伸べた左手をリュートは強く右手で握り返してきた。
…少し前までは考えられないな。
集団より、一人の方がずっと良いと思ってたから…。
それが、まさか二人で旅をすることになるなんて…。
確実にこの村の住人のせいだ。
もしかしたら、私はただ、寂しかっただけなのかもしれない…。
「さて、リュート、正式に私達は仲間になった、だから…私の目標も、教えよう。」
「あー、たぶんだけど、大体予想つくぞ。」
な、なんだと…
ジョゼさんの店で完璧にカムフラージュしたと思ってたのに…
「とにかく、皇国をぶっ壊したいんだろ?」
「あぁ…!その通りだ!!」
そう…
私は皇国を倒す。
そのために行動している。
だから…!
「…そういえば、リュートは能力者だったな?」
「ん?あぁ、そうだよ。雷の能力者だ。」
「能力の名前はなんというんだ?」
リュートは青いジャケットのポケットに手を突っ込みながら答えた。
「…《雷神》。カナンが付けてくれたんだ。」
お気付きの方もいるかもしれませんが
タイトルを変更しました。
これからは『雷ジング』をどうかよろしくお願いします。
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