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【AIに書いてもらってみた】白薔薇宮の最後の婚約者  作者: 章槻雅希


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最終章 白薔薇の咲く明日

 初夏を迎えたブランシュ宮殿。

 王家主催の大夜会には、国内の有力貴族がほぼ全員集まっていた。

 白い大理石の床。幾千もの蝋燭に照らされた大広間。

 王家の象徴たる白薔薇が咲き誇るその場で、第一王子アドリアンはついに決断した。

「諸君!」

 高らかな声が響く。ざわめいていた会場が静まり返った。

「私はここに、公爵令嬢エレオノール・ド・モンフォールとの婚約を破棄する!」

 誰も驚かなかった。いや。正確には、誰もが「とうとう始まったか」と思っただけだった。

 アドリアンは勝ち誇ったように一枚の手紙を掲げる。

「彼女は他の男と密通していた!」

 隣に立つリュシエンヌは、悲劇の令嬢を演じるように口元を押さえている。

「なんて恐ろしい……」

 しかし。会場は静かだった。期待していたような動揺も、怒号も起きない。

 不思議そうな顔をするアドリアン。その時だった。

「失礼いたします」

 王妃付き侍女長セシルが進み出た。

「そのお手紙ですが、封蝋の紋章が逆でございます」

 ざわめきが広がる。

「さらに、記載されている祝祭日は存在いたしません。筆跡も女性のものです」

 続いて王宮書記官が頭を下げる。

「王宮で保管しているエレオノール様の書簡と比較いたしましたが、一致しておりません。完全な偽造です」

 アドリアンの顔色が変わった。

「な、何を言う! 証拠はまだある!」

 次々と提出される「密会の証言」。しかし今度は王宮の馬車係が前へ出た。

「申し訳ございません、殿下。その日、エレオノール様は王妃陛下のお茶会に出席されておりました」

 料理長。侍女。庭師。王宮の使用人たちが次々に証言する。

「そのお時間、孤児院への寄付品の確認をされていました」

「図書室で第二王子殿下の勉強を見ておられました」

「私どももお見かけしております」

 誰一人として口裏を合わせている様子はない。ただ、それぞれが知る事実を述べているだけだった。アドリアンは狼狽した。

「なぜだ! なぜ皆、エレオノールの肩を持つ!」

 すると。若い令息の一人が前へ進み出た。

「殿下」

 取り巻きの一人だった青年である。

「ヴィクトル・ド・ベルフォール子爵令息……?」

 アドリアンが安堵したような顔になる。

「そうだ、君も知っているだろう!」

 しかし青年は静かに頭を下げた。

「はい。全て知っております。この手紙を作ったのがリュシエンヌ嬢であることも、殿下が不貞を捏造しようとされたことも」

 会場がどよめく。

「裏切るのか!」

「いいえ」

 ヴィクトルは穏やかに答えた。

「最初から、私はあなたの味方ではありません」

 そして視線をルシアンへ向ける。

「ベルフォール公爵家の分家として、本家当主代理ルシアン様の命を受け、殿下の周囲を監視しておりました。報告書もすべて提出済みです」

 アドリアンの顔から血の気が引いた。

「……ルシアン」

 大広間の後方。銀灰色の礼服を纏ったベルフォール公爵令息は、静かに一礼する。

「申し訳ございません、殿下。私はただ、友人を守りたかっただけです。エレオノールを」

 その瞬間。エレオノールは初めて知った。

 自分が思っていた以上に、多くの人に支えられていたことを。

 王妃。侍女長。使用人たち。若い貴族たち。両親。そして。

 幼い頃から隣にいてくれたルシアン。

 彼女の瞳から、一筋の涙が零れた。

「……どうして」

 小さく呟く。

「どうして皆、私なんかのために……」

 ルシアンは優しく微笑んだ。

「『私なんか』ではありません。全ては、あなた自身が得たものです。あなたが人を大切にしてきたから、あなたが努力を怠らなかったから、あなたが身分の高低を問わず、誰にも誠実だったから。だから皆、今度は自分たちがあなたを支えたいと思った。それだけです」

 エレオノールは顔を覆った。涙が止まらなかった。婚約者に裏切られた悲しみではない。家族だと思っていた人を失った寂しさでもない。自分は一人ではなかった。その温かさに、胸がいっぱいになっていた。


 その夜。国王アンリ四世は正式に宣言した。

 第一王子アドリアンの王太子資格停止。

 王位継承権の剥奪。

 リュシエンヌ・ベルナール男爵令嬢は共犯として王宮から追放され、アドリアンと共に地方離宮での幽閉生活を命じられた。

 そしてモンフォール公爵家と王家の婚約は、双方合意の上で白紙撤回された。

 王妃ヴィクトワールは、泣きじゃくるエレオノールを優しく抱き締める。

「ごめんなさい。王家のせいで、あなたの青春を縛ってしまったわ」

 エレオノールは首を振った。

「いいえ、お母様」

 思わず出た言葉に、二人とも目を丸くする。そして王妃は涙ぐみながら笑った。

「……ええ、ありがとう、エレオノール」

 血は繋がっていなくても。二人の絆は、本物の親子のようだった。


 翌朝。モンフォール公爵邸の白薔薇庭園。

 朝露をまとった花々の中で、エレオノールは一人、静かな時間を過ごしていた。そこへ足音が近づく。

 振り返ると、ルシアンが立っていた。

「おはよう」

「おはようございます」

 少しだけ沈黙。そしてルシアンは苦笑した。

「こういう時、何から話せばいいのか分からないな」

「珍しいですね」

「君の前では、昔から格好がつかない」

 エレオノールが小さく笑う。

 その笑顔を見て、ルシアンは意を決した。

「エレオノール」

「はい」

「今すぐ答えは要らない。昨日までのことを忘れろとも言わない。ただ……」

 彼は跪いた。

「これから先の人生を、私に隣で支えさせてほしい。幼馴染としてではなく。君を愛する男として」

 エレオノールは目を見開いた。幼い頃から一緒だった。兄のようで、親友のようで。どんな時も変わらず隣にいてくれた人。

 そして昨日。誰よりも自分を信じてくれた人。

「……ずるい人」

「うん?」

「そんなふうに言われたら」

 涙を浮かべながら、彼女は笑った。

「お断りできないではありませんか」

 ルシアンが目を丸くする。

「それは……」

「はい」

 エレオノールは頬を染めながら頷いた。

「これから、よろしくお願いいたします」

 初夏の風が白薔薇を揺らす。遠くで鐘が鳴った。

 それは、一つの時代の終わり。そして。新しい幸せの始まりを告げる鐘の音だった。


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