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1話 で、で、でんか!?

いつもお読みいただき、本当にありがとうございます。

このお話より第3章 王城編 になります。

 教会の建物を出たところで、サラミとスモークは早々に王都へ出発した。


 私たちはこの町の洋裁店へ足を運ぶ。

 プレシオとルートリアに初めて会った日に買って貰った、私のドレスや靴が出来上がっている頃なので受け取りに行くのだ。


 買って貰うときはただ戸惑いだけだった私も、今日洋裁店に行くのはかなり楽しみだったりする……。


 店主の「試着して寸法合わせと直しをしましょう」という提案にルートリアが首を横に振る。

「時間が無いのでそれは大丈夫だ。私の家にも洋裁店が出入りしているからそちらで直す」


 出来上がったドレスや靴、貴金属を試着するのを楽しみにしていたのだけど、どうやらそれは王都に移動してからのお楽しみになった。


 洋裁店から出るとすっかり日が傾いている。


 いくら急いでいると言っても、寝ずに王都を目指す訳にはいかない。

 明日の早朝に乗合馬車へ乗るため、この町のいつもの宿に泊まる事になった。






「ギルドでも根掘り葉掘り聞かれて悪いんだけどさ、寝る前だけ俺たちに付き合ってくれる?」

「男同士で少し話がしたい。早めに部屋に戻るとしよう」

「ええ、ご協力させていただきます」


 プレシオとルートリアは、ベクタードレインに魔族側の情報を話してもらい、今後の計画を検討するみたい。


 ベクタードレインは最初、故郷を売るようなマネはできないと言っていたけど、別に魔族領を侵略するつもりではなく、人族の防衛を目的としていると分かると協力を了承してくれたようだ。


 彼ら3人は一緒の3人部屋。

 ファルと私は2人部屋。


「うふふっ。今日も女子トークが楽しみだわ」

「明日は朝早いから、ほどほどに楽しもうね!」


 それにしても、ルートリアたちは人族の領土防衛を考えていて、魔族領の支配までは望んでいないようね。


 それに対してあの勇者デグラスは何を考えているのかしら。

 もし奴が魔王を倒して魔族領を征服しようとしているのなら、2年前のあの日、魔族領で外交長官のヴィラハリアーを殺した後、そのまま魔王の命を狙って魔王城に攻め込めば良かったのでは……。


 でも、勇者はすぐに転移魔法を使って王城の転移陣へ離脱してしまった。


 奴の強さはあの当時でもかなりのものだったから、すぐに魔王城に攻め込む事も出来たはず。


 冒険の末にあの外交施設までたどり着いた訳でもなく、友好関係があって普通に旅しただけだから、特別消耗していた訳でもない。

 わざわざ王国へ一度戻って体制を立て直す必要もなかったと思う。


 あの勇者は一体何が狙いであんな事をしたのかしら。


 単純に戦闘で活躍し続けて称賛されたいだけなら、戦争が長引けばいいと考えているのかもしれない。

 頑張って魔王を倒してしまうと、称えられるかもしれないけどそれで終わりだものね。




 私は、ファルの理想の恋愛シチュエーションを聞きながら、一方で勇者の事を考えていた。


 考える時間なら浮浪者のときに際限なくあったけれども、人間不信の原因となった勇者の事を考えるのはとても心が受け付けなかった。


 今、じっくりと勇者デグラスの事を考えられるようになったのは、沢山パーティメンバーが増えて心に余裕ができたからだわ。




 契約で行動を共にすることになった、貴族のプレシオとルートリア。

 女友達というのもあるけど、魔物の大群を人族の町に誘導されたら困るという事もあって敵に回せない、悪魔のファル。

 女神から蘇生魔術を手に入れたい一心で私を頼っている、魔族のベクタードレイン。

 プレシオとの距離を縮めたい、元組織のサラミ。

 ファルの盲目的信者になった、元組織のスモーク。




 皆、それぞれの理由があってパーティの一員になってくれた。


 今は利害関係で結ばれた絆だけど、いつか利害を抜きにして互いを助け合える本当の仲間になれたらいいな。


「……ねぇ、ねぇってば! 聞いているの!? レイナならどっちが好みなの?」

「……うん、私もそう思うよ……」

「? ……!!」


 急にファルが黙ったのに気付いて様子を伺うと、彼女がわなわなと怒りに震えていた。


「ご、ごめんなさいっ!」


 あれこれ考えていた所為で可笑しな生返事をしてしまい、ファルを怒らせてしまった。




 私はプリプリ怒る彼女のご機嫌を取りながら、少しでも長くこんな楽しい時間を過ごせたらいいのになと微笑んだ。







 翌朝、早めに宿の朝食を摂って急いで乗合馬車に乗り込んだ。


 王都ウェルビーまでは乗合馬車で1日と近い。


 目的のお貴族様パーティは明後日の夕方なので、ちゃんと間に合いそうだ。


 プレシオの隣に座ったファルが疑問を投げかけた。

「ねぇ? どうしてこんなギリギリのスケジュールを組んだのよ。もう少しゆとりを持っても良かったんじゃない?」

「俺たちはさ、あんまり長い間向こうに居ない方がいいんだよ。向こうに長く滞在すると変な画策をして接触してくる奴らが多いしさ、皆の目もあるから自由に動けなくて不便なんだ」

 プレシオが何か思い浮かべて面倒臭そうな顔をした。


 なんだか家に居づらい子供みたいで不憫だわ。

 プレシオもルートリアも大変なんだなぁと思い、少し可哀そうに思って2人を眺めた。


「いや待って欲しい。レイナはたぶん誤解している。別に邪険に扱われている訳ではない」

 ルートリアが誤解だと否定しているけど、皆家庭環境はいろいろだろうしと益々同情した。







 途中で盗賊に襲われるような事もなく、夕方頃無事に王都ウェルビーへ到着した。


 ルートリアが客室を用意してくれるというので、王都に滞在している間は泊めて貰う事になり、彼の案内に付いて行く。


 王都は人通りが多く、今まで以上にファルとベクタードレインが目立ってしまう。


 ベクタードレインが魔族だというのはよくよく見れば気付くレベルの話だし、一般の人は魔族を見た事なんてほぼないので、そういう地方部族がいるの? くらいの違和感しかない。


 でもファルの黒い翼は流石に目立つようで、魔物じゃないかとざわついたりしている。

 魔物騒ぎにならないようにと、私がファルと手を繋いで歩いて問題がない事をアピールしているんだけど、案外これが楽しい。


 ファルの背丈は小学生くらいなのだけど、考え方や冗談が大人っぽいので小柄な友達という感じがするのよ。

 

 これって本当に仲の良い友達ができたと言ってもいいわよね?


「目立つから食事は外で食べず、客室に用意させよう」

「俺もさ、一緒でいいかな?」

「ああ、折角だから皆で食べよう」


 当然の事ながらプレシオの家は違うお屋敷なのだけど、今日の夕食は一緒に食べる事になった。







「さあ着いた」


 ルートリアの後を皆で着いて歩くうち王城の城壁門に到着した。


「え? 王城でのパーティは明後日でしょ?」

「いやここでいいんだ」


 どういう事だろ。

 てっきりルートリアのお屋敷に連れて行かれると思ったんだけど、今日のうちに王城ですませたい用事があるのかしら?


 私がいぶかしく思っていると2人いる門番の内、青年の方がこちらに近寄って来た。

「怪しいやつらだ。ここは冒険者が来るところではないぞ。立ち去るように!」


 プレシオもルートリアも王に謁見できる立場だと言っていたけど、流石にこの冒険者の恰好じゃ一般人にしか見えないようね。


「ニールセンを呼んできて欲しい」

「なんだ? ニールセン班長を知ってるのか? 今日は変わった奴がよく来る日だな」


 ルートリアをじろじろと見た若い門番は、一通り私たちを見てから門の中に歩いて行った。


「不快な思いをさせてすまない。警備任務の遂行はしっかりやっているみたいだが、登城する者への応対はもう少しだな」


 少し申し訳なさそうな態度でルートリアが言った。

 別に王城の警備に至らない点があっても、ルートリアが謝る事なんてないのに……。


 馬車用の大きな門の横にある人用の小さな門の前で待っていると、中の庭にある小さな建物から門番が2人走って来た。


「お、お待たせしました!」

「お待たせしました!」


 ちょび髭を生やした中年の警備兵が慌てて駆けてくると、さっきの青年門番と一緒にルートリアへ向かって敬礼した。


「久しぶりだなニールセン。元気そうで何よりだ」

「はっ! ありがとうございます!」

 ニールセンと呼ばれた中年の警備兵は嬉しそうに笑顔で答えている。


「俺もいるよ!」

「エ、エンツォ准将じゅんしょう閣下!?」

「元だよ、元!」


 エンツォ? どうやらプレシオの家名みたいね。

 やっぱりプレシオは王国軍の准将という上位ポジションだったんだ!


「お連れ様もどうぞお通りください」

 さっきの青年は最初とは全く異なる態度で私たちに接すると、丁重に通門を許可してくれた。

 

 私の後ろを歩くファルの姿にちょっと驚いたようだったけど、ルートリアの連れだからか問題にはされなかった。


 ルートリアって何者かしら?

 相当高位の貴族のようだけど……。


「あ、忘れておりました!」

 既に門を通り過ぎたところで、ニールセンが後ろからルートリアに声を掛けた。


「殿下! 先程殿下のお手紙を持った作業服の男女が参りましたので、三階の賓客向けの客間に通しております」


「うむ。対応すまなかったな」




 で、で、でんか!?

 でんかって殿下!?


※誤字脱字などがありましたら、ご連絡いただけますと大変助かります。

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