第65話 奴隷落ちの理由
迷宮都市にある家のリビングには、いつものメンバーに加え
俺と洋二が、オークションで購入してきた奴隷たちがソファーに座り
くつろいでいた。
「まずは、七瀬さんたちの成果から聞かせてもらえますか?」
「いいわ、私たちは新しく仲間になった
オリビアちゃんとナタリーちゃんの、ダンジョンでのレベル上げに向かったわ」
岡崎さんを真ん中に、藤倉さんと馬場さんが慰めながら報告を続けてくれる。
「ここは迷宮都市だから、
『英雄の試練』以外にもいろんなダンジョンがあるから、面白かったね」
「そうそう、その中の一つでレベル上げを行ったんだよ」
「レベル上げは順調に進んで、
オリビアちゃんがレベル23からレベル120へ
ナタリーちゃんはレベル51からレベル154へ上げることができたわ」
「これで『英雄の試練』でも、私たちについてこられるはずですね」
「おお、これも『勇者』の恩恵か?」
「そうだよ、『勇者』とともに戦うとレベル上げがやりやすいね~」
「それはよかった」
「次は、宮本君たちの問題行動を聞かせて?」
「問題行動って……」
「とにかく、オークションで購入してきました」
「それはわかっています!」
「まあまあ、この人たちは俺たちが気になった人たちです」
「まずは、『岡崎琴美』。借金奴隷として売られていました」
「「「借金!」」」
「ち、ちがうの。私、だまされたの!」
藤倉さんが、岡崎さんの頭を撫でながら
「落ち着いて琴美、みんな訳ありだってわかっているから…」
「うん…」
「琴美ちゃん、話して?」
「…魔王封印から、私この世界に残って食堂をやりたかったの。
何せ、この世界の食事でおいしいって思ったことなかったから…」
「琴美ちゃんの料理、おいしいもんね~」
「ありがとう。…それで『ビーナム』って町で食堂を開いたの」
「『ビーナム』って『ネルディアナ王国』の王都の東にある町だっけ」
「そうだよ。…おかげさまで、食堂は好調で町で人気になったんだけど
すぐに人手不足になって、店員を募集したの」
「食べに行きたかったわね」
「うん。…その募集した店員の中に、経理が得意な人がいて
食堂の経理を任せていたの。私、お店が忙しくて経理まで手が回らなくて…」
「琴美…」
「…そしたら、その人がお店のお金を使いこんで…
しかも、借金までしていて……経理を任せていた私が悪かったから
何とか借金を返そうと思って頑張ったんだけど……ダメだった…」
馬場さんが岡崎さんに抱き着いて慰めている。
「それで、借金奴隷ってことね…」
「それだけじゃないの…
あとでわかったことなんだけど、その借金した人は『ビーナム』で
多くの食堂などを経営してた商会の関係者だったの。
私を奴隷にした後、商会で買い取って働かせようとしたらしいんだけど
私が『異世界人』だってわかって、すぐにこっちに連れてこられて
オークションに……」
「で、俺たちが購入したってことか…」
「私、あのステージに立った時…もう人生終わった気がして…」
「琴美ちゃん、もう大丈夫だよ」
「琴美、私たちがそばにいてあげるからね?」
「ありがとう……ありがとう……」
岡崎さんは、藤倉さんと馬場さんに抱き着かれながら泣いていた。
彼女のことは、2人に任せておけば大丈夫だろう。
「えっと、次が『ソフィア』。
彼女は『ブーケニア王国』で起きた政変の犠牲者です」
「確か、騎士団長の裏切りで奴隷落ちしたってことです」
「…後で詳しく教えてね、宮本君」
「わかりました。で、次が『グレース』。
彼女はちょっと複雑で、これもまた後で詳しく教えます」
「…まあ、いいでしょう」
「グレースに聞きたかったんだけど、俺と落札を競っていた貴族なんだけど…」
「…ステージから見ていたからわかるわ、
帝国貴族の『ハーブグ』っていうやつよ」
「なぜ狙われているかは?」
「奴は、私の婚約者を斬首に追いやったやつよ。
その過程で私のことを知って、私を奴隷にして手に入れるつもりだった…」
「それを俺たちが、邪魔をしたってことか…」
「でも、私は感謝してるわよ。
あんな醜いやつより、あなたの方がましに思えるし…」
「それは、どうも」
グレースは、浩二に微笑みを向ける。
「で、最後に『中村悠太』。
その妻の『ミア』。二人の子供の『シャーロット』ですね」
「悠太、結婚してたんだな」
「洋二君、僕たちはまだ結婚はしてないんだ…」
「そうなのか?」
「ああ、僕の妻のお母さんが反対しててね…」
「なるほど…。それで、どうして悠太は奴隷に?」
「僕は、魔王封印後。とある王国の近衛騎士団に推薦されてね、
その時はミアと結婚の約束をしてたし子供もいたから、安定した収入がほしくて
推薦の話を受けたんだ」
「近衛騎士とは、カッコいいな」
「僕は、第2王女の近衛になって頑張って仕事をこなしていたんだけど
王女様が、僕と結婚したいって言いだしたんだ」
「なんか、キナ臭くなったぞ?」
「いや、リア充の方だろ?」
「…洋二……」
「…で、僕は婚約者と子供がいるからって断ったんだけど
『勇者』を取り込みたかった国が介入してきて、婚約者と子供に矛先を向けたんだよ」
「おいおい…」
「ミアはシャーロットを守らないといけなかったから、
戦うことができなかったため、僕が留守にしている間に捕まってしまったんだ」
「で、ミアさんとシャーロットを人質に、結婚を迫ったと?」
「…ミアを僕の奴隷にして結婚しろと……」
「それは、なんというか…」
「第2王女は、ミアが同じ妻になることが許せなかったらしくて
それで、奴隷にして自分が正妻だってことを言いたかったのかなって…」
「……」
「僕は覚悟を決めて、ミアとシャーロットとこの王国を出て行こうと救出に行ったら
2人を人質にされて……僕も奴隷にされてこの都市に…」
「『勇者』って、そこまでして王国はほしいのか…」
「何と言っていいのか…」




