第64話 受け渡しと支払い
オークション会場から出て、右手に通路を進むと
競り落とした商品を、受け取るための部屋が何部屋か用意されている。
俺たちはその中の一部屋に案内された。
するとそこには、あの俺よりも太った貴族とその執事らしき人が待っていた。
貴族は俺たちが部屋に入ると、執事に小声で何か喋っている。
「お二人とも、こちらはとある帝国の貴族様です。
跪いてご挨拶をしてください」
「「お断りします!」」
「貴様ら!」
「だ、旦那様…」
「わ、わかっとる!」
俺たちが、貴族の正面にある椅子に座ると
「それで、とある帝国の貴族様が何かご用ですか?」
「……『グレース』を私に売れ」
「は?」
「貴様らが落札した『グレース』を、私に売れと言っている!」
「…何言ってんだ?」
「これは命令だ!『グレース』を私に売れ!」
「……いくらで売れと?」
貴族はニヤリと笑うと、
「金貨1枚だ」
「交渉の仕方知っているのか?」
「これは交渉ではなく命令だ!この命令がきけない時は、
私が連れてきた帝国騎士30人が何をするかわからんぞ?」
貴族は、ニヤニヤしながら俺たちを見下している。
「いいですよ」
「なに?」
「だから、何しようが構わないって」
「帝国騎士30人が、何をしようと『グレース』は売りません!」
貴族はその醜い顔を、さらに醜くして怒る。
それを執事が、どうにか宥めようと懸命だ。
「……いいだろう、後悔するなよ」
そう言うと、貴族と執事は部屋を後にした。
貴族が出ていった扉とは反対の扉から、
初老の男性と案内をしていた女性が入ってきた。
「もう、よろしいですかな?」
「何ですか?あの貴族は…」
「時々、落札価格に納得いかずに落札者本人と交渉する人がいるので
こういう場を設けているのですが…」
「あれは、交渉じゃないでしょ…」
初老の男性と案内の女性は、頭を下げてきた。
「お客様に大変ご迷惑をかけてしまい、申し訳ございません」
「まあ、もういいですから受け渡しに入ってください」
「わかりました」
案内の女性は、自分たちが入ってきた扉から
俺たちが落札した奴隷たちを連れてきた。
「お客様が落札された、『コトミ』『ソフィア』『ミア』『シャーロット』
『グレース』『ユータ』の6名で、間違いありませんか?」
「ああ、間違いない」
「では、落札価格の合計が金貨1560枚となります」
その金額を聞いて、案内の女性が言ってくる。
「あの、お支払方法はいかがいたしましょうか?」
「ん~、一括でお願いします」
そう言うと、俺はアイテムボックスから
金貨1560枚の入った袋を取り出し、テーブルの上に置いた。
「……た、ただいま確認させていただきます」
「よろしく」
すぐさま2人で、袋の中の金貨の確認を始める。
俺は待っている間、奴隷たちの方を見ていくと
『ユータ』と『ミア』は『シャーロット』を二人で抱いているし
『コトミ』の後ろに『ソフィア』と『グレース』は、こちらを警戒して隠れていた。
「…はい、確かに金貨1560枚ありました。
では、奴隷契約をしますがどちらの方が契約をなさいますか?」
俺が手をあげながら前に出る。
「俺が契約をしますので」
「では、奴隷たちのチョーカーにお客様の血をお付けください」
「わかりました」
俺はナイフで指先を切り、血を出すと奴隷たちのチョーカーに付けていく。
すると、チョーカーの色が変わり契約が完了した。
「これで、契約が完了となりました。
お客様、お買い上げありがとうございました」
そう言うと、初老の男性と案内の女性は入ってきた扉から出ていった。
部屋の中は、俺と洋二と奴隷たちだけ。
「で、どうする?浩二」
「まずは家に帰って、みんなに報告からだな」
「俺たちだけでは、解決できないか…」
奴隷のみんなは、わからないって顔をしていた。
「とりあえず、俺たちについてきてくれ」
俺たちは奴隷を連れて、家に帰ってきた。
帰り道にあの貴族が、何か仕掛けてくると思ったが何もなかった。
家にたどり着くと、玄関の鍵は開いていたので
みんなが帰っているであろうリビングに、奴隷とともに入っていく。
「「ただいま~」」
「お帰り……なさ…い?」
「……さて、言い訳を聞こうか?」
「琴美?」
「え、琴美ちゃん?」
藤原さんと馬場さんを見た岡崎が、涙ぐんで2人に抱き着いた。
「美代ちゃん、明日香~~」
「中村君?どうして『勇者』が奴隷に……」
勇太は、シャーロットを抱いたミアを傍に置くと
「七瀬先生、すみません…」
「…訳は後で聞くわ、今は傍にいてあげなさい」
「ありがとうございます…」
ソフィアとグレースは、どうしたらいいか分からなかったが
「ソフィアとグレースも、そこのソファーに座ってくれ」
という俺のかけた言葉に従い、近くのソファーに座ってくれた。
「あ~、まずは今日の報告から始めようか」




