第63話 オークションにて 下
オークション会場では、司会者の男が喋っている声が聞こえる。
「さあ、皆様。残りの商品はあと7人となりました。
会場の紳士淑女の皆様、奮って落札してください。
なお、最後の商品は皆様必見です!」
「最後にどんな奴が、奴隷に出てくるのか…」
「嫌な予感しかしないな……」
「浩二、俺も同感だ」
司会者が手を振ると、
女性の奴隷と赤ん坊が、スタッフの女性に抱かれて出てきた。
「さあ、続いての商品は親子セットでの奴隷となります。
もちろん赤子には奴隷契約はできませんが、女の子の赤子ですので
育てるもよし、売り払うもよしでございます!
名前は『ミア』20歳、そして赤子の名前は『シャーロット』1歳です。
母親の方は『エルフ』ですので、美しさも母となっても変わらず
さらに赤子も美人になること、間違いなし!
では、親子そろって金貨100枚からスタートです!」
「…いやなのが出てきたよ…」
「……」
「どうする?浩二」
「…」
俺は、赤ちゃんを鑑定して驚いていた。
これが事実なら、最後に出てくる奴隷はアレしか考えられないからだ。
「浩二?」
「洋二、あの赤ちゃんを鑑定してみろ」
「ん?」
「どうだ?」
「…マジか?ありえるのか?」
「『中村悠太の娘』。確か、『中村悠太』って『勇者』だったよな」
「ああ、元クラスメイトの『勇者』の1人だ」
「ということは、最後の奴隷って…」
「『悠太』になるだろうな…」
俺たちは、アイテムボックスの残金を計算しながら札をあげる。
「金貨186枚!」
だが他の人の札はまだ上がっていて、金額も上がっていく。
そして、離れた後方の席の女性との一騎打ちになった。
「金貨266枚!」
俺が札をあげると、
「金貨267枚!」
女性は溜息を吐いて、顔を横に振り棄権を示した。
「金貨267枚……金貨267枚で、落札!」
「何とか落とせたな」
「最後まで入札した人、今の奴隷の女性の関係者みたいだな」
「そうなのか…」
それからも、どんどん女性奴隷がステージで紹介されていくが
俺たちが入札することはなかった。
もし、その奴隷たちに面白いスキルでもあれば
お落札していたかもしれないが…
そして、いよいよ残りの奴隷はあと2人となった。
「そろそろか?」
「出てくるなら、このあたりだろうな…」
「浩二、お金はまだあるのか?」
「ああ、今までの金額なら余裕だな」
「それは、結構」
司会者の声が、再び俺たちの耳に届く。
「さあ、皆様。残りあと2人となりました。
さて、次の商品ですがこの奴隷は少し曰くがあります。
名前は『グレース』歳は17歳。人族の女性奴隷です。
そしてこの名前で、ピンときた方も多いのではないでしょうか?
この奴隷は、ある大国の第2王女。
ある王国に輿入れをする予定でしたが、その王国が戦争で滅亡。
お相手の王子も戦争の責任とかで斬首され、結婚が破談になり国へ戻るはずが
その国は王が変わり受け入れを拒否され、奴隷へと落ちてしまいました。
ですが、ご安心ください。
この奴隷はまだ処女、皆様の誰かが初めての相手となるのです。
さあ、金貨200枚よりスタートとまいります!」
「なんか、不幸なお姫様が出てきたな…」
「この後が、おそらく『勇者』だろう」
「このお姫様はどうする?」
「……もちろん」
俺は札をあげる。
「買うのかよ……」
「金貨300枚!」
俺は再び、札をあげる。
「金貨301枚!」
前列の派手な服を着た、俺より太った貴族が睨んできた。
その貴族は札をあげる。
「金貨302枚!」
俺も、その貴族を無視して札をあげる。
「金貨303枚!」
「ぐぅ……」
貴族は俺を睨みながら、手を横に振る。棄権の合図だ。
「金貨303枚で、『32番』の方が落札!」
会場に拍手が鳴る中で、貴族はこちらを睨みながら何かを隣の男に言っていた。
なんか、恨みを買ったようだな…
「さあ、皆様お待たせいたしました!
本日最後の商品になります。この奴隷を購入できる方は幸運といえましょう。
なぜなら、この奴隷は『勇者』の称号を持っているからです!」
会場がざわめく。
「まあ、当然の反応だろうな…」
「『勇者』が奴隷って……」
「名前は『ユータ』21歳。
少し前に『魔王』を封印した『勇者』の1人です。
もはや何も言わなくとも、皆様にはこの奴隷の価値はお分かりと思います。
では、金貨400枚からスタートとなります!」
「浩二、やっぱり最後に持ってきたな」
「ああ、それにしてもなんで奴隷なんかに…」
「そんなことよりも、入札しないのか?」
「そうだな、理由は後で聞くか…」
俺はだいぶ進んだところで、札をあげた。
「金貨621枚!」
ここまでくると、参加者はまばらになっていた。
そして、最後の人が札をおろし俺一人になったところで決まる。
「金貨702枚、金貨702枚で『32番』の方落札です!!」
会場は割れんばかりの拍手が鳴り、司会者がオークションを閉める。
「皆様、今回のオークションはこれにてお開きにございます。
このオークションは1年に1回限りではございますが、
再び来年もお越しくださいますよう、お願い申し上げます。
私共商会一同、新たな商品を用意しお待ちしております。
本日は、ありがとうございました!!」




