第49話 大河の渡り方
「はああぁ~……」
さっきからため息がうっとおしい。
「洋二、ため息ばかりついたって仕方ないだろう?」
「……だってな~」
「いいから、第11階層ももうすぐ終わるぞ」
「ああ、混浴…」
「…洋二、女性陣の前でそんなこと言うなよ?」
「…あの宿、浴場が男女別でしかも本当に別々とは」
「まあ、中で仕切られているタイプではなかったな」
「あれでは、壁越しの声すら聞こえん!」
「…聞いてどうする」
「決まっているだろう?
壁越しに聞こえてくる、女性たちのキャッキャウフフな声で妄想するのだよ!」
「……とても将来『ハーレム』を目指している男とは思えん態度だな」
「…フフ……ムフフ……」
「あの、コージ様、洋二様は大丈夫でしょうか?」
「ウィリアム君、これはそっとしておこう?」
「はい…」
ウィリアム君も、洋二の態度に困惑気味だ。
「でも、宿の料理はおいしかったですね」
「そうだな、さすがは『異世界人』が作った宿だったな」
「今夜もその宿に泊まるんですか?」
「ああ、あと3日はダンジョンにいるからそのつもりだよ」
「なに!あと3日もチャンスが!」
「変なところで復活したな」
「浩二、あと3日もダンジョンに潜っているのか?」
「ああ、今回はウィリアム君たち奴隷のレベル上げが目的だからね」
「僕、ダンジョンに潜ってから100も上がりましたよ」
「おお~」
「あと3日で、洋二達のレベルに追い付かせないとな」
「追いつかないといけないのか?」
「ああ、追いつかないと連携も背中を任せることができないだろう?」
「確かに……」
「それに、『ハーレム』目指すなら追加で購入もあるんだろう?」
「それはもちろん!」
「ならせめて追加の子たちを、護衛できるくらいにはしないとな」
「危なくて、こっちが戦いに集中できないか…」
「お、女性陣の『お仕置き』が終わったみたいだぞ」
「バカな『迷賊』だよな…」
「まさに、『G』への対応と一緒だな」
俺たちは宿を出て、第11階層を進んでいる。
この階層からは、大きくなった生け垣が壁の代わりになった森林迷路だ。
生け垣を抜けれそうなんだが、そこは抜けれなかった。
天井は高く、森の中を歩いているかのように枝と葉っぱが覆っている。
出てくる魔物も、『狼』や『猿』といった動物系から
木でできた『ゴーレム』というより、木でできた人型のゴーレムといった方がいいだろう。
はっきり言って、人の大きさの人形がひとりでに動いているみたいで
ホラーでしかない。
しかし、人に近い分倒しやすくはあるのだが…
「マスター、下への階段を見つけました」
「よくやった、雪」
俺は『くノ一』の雪の頭を撫でてやる。
「それじゃあ、下へ降りましょうか」
「「「おお~」」」
「第12階層はどんなところかな~」
第12階層は、11階層と同じ木々の中を進む迷宮だった。
ただ、一つ違いがある。
それは、12階層の真ん中に大河が流れていたことだ。
「…これは渡れないな」
「大きな、川ね~」
「ダンジョンで川って、すごいよね」
「まるで『三途の川』だな」
「神崎君?」
「ごめん、いい例えが浮かばなくて……」
「ちょっと、川のそばにいる人に聞いてくるね」
「藤倉さん、気を付けてね」
「私たちも、ついていきます」
「シェーラとミュールも、気を付けるんだぞ」
「「はい」」
「あそこで、何しているんだろうな…」
「たぶん『釣り』じゃないか?」
「そういえば、見渡すといろんな人が川のそばにいるわね」
「洋二様、上流の方に『テント』らしきものが見えます」
「あら、ほんとに…」
「やっぱ、釣りで間違いないみたいだな」
「洋二、この川にも魔物がいるのかな?」
「たぶん、いるんじゃないか?」
「浩二兄ちゃん、あそこ!」
リリルちゃんが、指をさした先を見ると
でかい『うなぎ』のような奴が、魚を食っていた。
「……船とかで渡れそうにないな」
「橋がないのも、納得の大きさだな…」
「なに、あれ!」
「あら、藤倉さんおかえりなさい」
「シェーラとミュールも、おかえり」
「ただいま~」
「「ただいま戻りました」」
シェーラとミュールは、リリルちゃんが抱き着いて
リリルちゃんの頭を撫でている。
「それで、何か聞けたのか?」
「ええ、聞いてきたわ」
「で、どうやったら向こうに渡れるの?」
「それが、川の向こうに行くには
いったん13階層に降りて、向こう側に通じる階段で上がってくるそうです」
「いったん、降りないといけないのか…」
「これは、盲点だね」
「てことは、こっちに13階層に行く『階段』があるの?」
「そうみたいです」
「なら、行こうぜ!」
「「「おお~」」」
俺たちは下へ降りる階段を探しに、再び森の迷路に戻っていく。




