第38話 拠点の家
「よかったのか?お兄ちゃん」
洋二が俺をからかっている。
今俺たちは、猫人族の町から東の『テセラ』に来ている。
『テセラ』は港町で、『魔王』封印のために迷宮都市へ行った時も
この町を経由して船に乗ったところだ。
むろん、迷宮都市から帰ってきた時も騎士団に迎えられたときも
この町を通ってきた。
『テセラ』の特徴は、南側は港や港施設がしめており
漁業ギルドや船大工などに関連した人たちが住民の大半だ。
北側は王都への向かうための門があり、主に商業ギルドが取り締まっている。
領主は貴族がしているのではなく、王家の第2王子が責任者となっている。
これは、『テセラ』が国にとって重要な都市であり
世間知らずな王子にならないようにとの教育のためだ。
俺がうまくいっているかは、いささか問題ではあるが…
「からかうなよ、とりあえず拠点を探してみるか?」
「そうね、商業ギルドへ行きましょう」
「どっち側にするの?北?南?」
俺たちは、北側にある商業ギルドを目指す。
「私なら、南西側ね」
「俺は、北西側だな」
「ん~、ジニーちゃんはどう?」
「私は、洋二様と同じ北西側でお願いします」
「ジニーは俺と同じか~」
洋二はジニーの頭を笑顔で撫でている。
ジニーもうれしそうだな。
「まあ、俺はどこでもいいけどなるべく目立たない場所かな」
そんな会話をしながら商業ギルドに到着する。
「…大きいな」
「ここは王国第2の都市だからな、ギルドもそれなりに大きくなるさ」
「入りましょう」
七瀬さんが促し、俺たちも中へ入っていく。
商業ギルドの中は、冒険者ギルドよりも受付が少なかった。
その代わり商談部屋がかなり目立つ。
とりあえず、俺は3人しかいない受付に空き家はないか聞いてみた。
「商業ギルドへようこそ、ご用は何でしょうか?」
「この都市に住みたいので、空き家を探しています」
「身分証明書はお持ちですか?」
俺は商業ギルドの登録カードを出すと、
「え~と、コージ様は『リビニア』にも家をお持ちのようですが、
なぜこの『テセラ』に家を?」
「もちろん、ここに住むためです」
「『リビニア』の家をお売りになって?」
「いえ、『リビニア』の家は友達に貸しているので」
「なるほど。では、どの辺りの家を探しましょうか?」
「西門に近い場所でお願いします」
「わかりました、少々お待ちください」
受付嬢は後方の棚に向かう。
「ねえ、『リビニア』のことは言わなくてもよかったんじゃないの?」
「ん?それはだめだよ。ギルドカードには購入歴が記されるから」
「それで正直に言っていたのね」
「『商人は信用が第一』、ここで嘘なんかついたら印象が悪いでしょ」
「…警戒されるか?」
「それよりも、ギルドに噓をついたことで調べられるね」
「商業ギルドって、怖いとこね」
「いや、他のギルドよりも情報管理は徹底しているから信用できるよ。
それに結構、融通もきくしね」
「「ほ~」」
「お待たせしました、西門あたりならこの1件になりますが…」
俺は受付嬢が持ってきた資料を見せてもらう。
場所は西門から3軒ほど入ったところの路地を北に行って2軒目の家だ。
家の周りは塀で囲まれていて、裏庭がある。
「ここにします、おいくらですか?」
「ここは、金貨30枚ですね。立地の悪さでこのお値段になっています」
「では、これで」
俺は袋に金貨30枚を入れて、受付に出すと
「こちらがカギになります、今日からお住まいになりますか?」
「ええ、そのつもりです」
「わかりました、また家をお売りになるときはギルドにご連絡ください」
俺たちは鍵を受け取り、商業ギルドを出て購入した家を見に行く。
「さあ、俺たちの城に行こうぜ~」
「洋二、城って大きさか?」
「気分だよ、気分!」
藤倉さんたちは、クスクス笑ってる。
「えっと、この路地を右だよな」
「そう、そこから2軒目だ」
「ここね…」
藤倉さんたち女性陣は外観に驚いてる。
「……新しすぎない?」
「前に住んでいたのは5年前、もうボロボロになっていたんで建て替えたみたいだよ」
「受け付けの人は、そんなこと言ってなかったけど?」
「資料に書いてあったよ」
「まあ、建て替えたんなら住みやすそうじゃねえか」
「とりあえず、入りましょう」
「「おお~」」
俺が門を開け、玄関の鍵を開けると最初に中へ入る。
「『リビニア』の俺の家よりきれいだな」
「確かに!」
「馬場さん、ひどい!」
「はいはい、みんなで中を確認しましょう」
「「は~い」」
「俺は裏庭を見てくるよ」
「おう」
裏庭に出ると、『リビニア』の家と同じくらいの広さがあった。
ここなら店とじゃなくて、屋敷との転移が可能かな。




