第36話 痛い人
店のドアが勢いよく開くと、
「ご無事ですか、お二人とも!」
すごい勢いで店に入ってくる男。
「お二人がさらわれたと聞き、助けに参りました!」
…この男が藤倉さんと馬場さんの相手か~
入ってきた時から『痛い』人なのはわかったな。
それにしても、これで伯爵のご子息って…
「あの、二人はさらわれたわけではないので…」
「黙れ!この人さらいが!
ミルバルグ伯爵家の嫡男、アーバインが成敗してくれる!」
…人の話聞かないのね。
「アーバインさん、私たちは…」
「もう大丈夫です!人さらいは私に任せて、ここはお逃げください!」
「え~と…」
すごい『ドヤ顔』で藤倉さんの達の方を見てる…
その時、店の開いている入り口から男が入ってきて、
「さっ、お嬢様方ここは『アーバイン様』に任せて」
と、騎士らしき人が藤倉さんと馬場さんの手を取り外へと連れ出す。
「あ、あの…」
「え?ええ?」
二人が外へ出た後、アーバインは俺を睨みながら
「私の妻たちをさらうとはいい度胸だな!覚悟しておけ、この平民が!」
と罵声をあげて出ていく…
「……」
呆気にとられるとはこのことか…
しかも戦うのかと思いきや、何もせずに帰っていった。
大丈夫か?この国…
次の日から、店の前にどこから連れてきたのかゴロツキがたまり始めた。
俺は店にゴロツキが入らないようにして
裏庭から屋敷に向かった。
「ゴロツキで営業妨害か~」
器が小さいな、アーバイン。
あれじゃあ伯爵家も終わりだろう。
そんなことを考えながら、屋敷に入っていくと
玄関に藤倉さんたちが待っていてくれた。
「「ごめんなさい」」
「藤倉さん、馬場さん、どうしたの?」
「…怒ってない?」
「伯爵家のアホのことなら怒ってないよ」
「「よかった…」」
「宮本君、伯爵家のアホって?」
七瀬さんが奥から出てくると、気になる言葉を聞いてくる。
「実は…」
「ああ~、お見合い相手は私も苦労したから、わかるわ~」
「七瀬さんも、お見合いを?」
「ええ、させられたわよ。もちろん速攻で断ったけどね」
めちゃくちゃ嫌な顔になってる。
「相手は誰だったんです?」
リビングに移動してきた俺たちを、椅子に座っていた洋二が話に混ざってくる。
「確か、騎士団所属の貴族だったわね」
「なにが駄目だったんです?」
「その人、妻と妾を合わせて10人いるそうよ」
「……え~と、なにか魅力が」
「ないわね、宮本君よりおデブさんだし」
「「ないわね」」
女性陣の意見は一致していた。
「…男としてはある意味、尊敬できるな」
「洋二、男の夢の『ハーレム』は地獄らしいぞ」
「マジかよ…」
「とにかく、これから伯爵家のアホのことはどうするの?」
「あの人、人の話を聞かないのよね」
「それにあの人の中では、私たち婚約していることになっているし」
「昨日、あの後『親に会わせたいんだ』って連れていこうとしたし」
「それに私たちがこの屋敷にいることばれているし…」
「…てことは、昨日のノリでこの屋敷にも来るのか?」
「「……」」
「しょうがない、召喚【厳つい門番】」
俺の足元に召喚陣が現れると、その中から門番の騎士2人が現れた。
二人は俺に対して敬礼しながら、
「「マスター、お呼びですか?」」
「ああ、君たちにはこの屋敷に
今いる俺たち以外の人が入らないように門番を頼みたい」
「お任せください」
「ここにいる人たち以外ですね、了解しました」
そう言うと二人は、一礼して玄関を出ていく。
「これで一応安全でしょう」
「でも、この屋敷から出られないわね…」
「それも考えてあるから」
あの手を使うかな…




