第35話 勇者の受難
今日も閑古鳥が鳴く、『相談屋』
『異世界人』の『地球』への帰還から1週間が過ぎた。
俺たち『異世界人 残留組』は帰還組の帰還を見守ってから、
その場で解散、自分の過ごしたい場所へ旅立っていった。
『勇者』たちは、王家や貴族たちからのいろいろな誘いを断れず
この1週間、振り回されているみたいだ。
俺は『神の新聞』を読みながら
「『勇者』のみんな、大変だな~」
勇者にならなくて良かったと思う時が来るとは…
その時、店のドアが勢いよく開く。
「いらっしゃいま…せ…」
そこには、目の座った藤倉さんと馬場さんが立っていた。
「宮本君、デザートちょうだい」
「甘いやつね」
「…畏まりました」
俺は少し考えて、デザートを召喚する。
「召喚、【生大福 苺】」
さっそく召喚したものを二人の前に出す。
「まずはこちらをどうぞ、ちょうどいい甘さもさることながら
触感もいいですよ。お茶もつけておきます」
「あら、大福ね…」
「いただきます…」
一口食べると、一瞬止まる二人。
再び食べ始めると、笑顔になり美味しさをかみしめている。
「すごく柔らかい…」
「これが生大福…おいしい!」
「それはよかった、では次はこちらをどうぞ」
俺は二人の前に、再び大福を出す。
「次も大福?」
「こちらは、日本で1,2を争う苺で作った苺大福です」
「……いただきます」
二人は苺大福を口に運ぶ。
「…あま~い」
「苺と餡子がすごくおいしい~」
もう二人はこの甘味に、とろけるような顔をして食べてる。
「それで、何かあったの?」
「…ごちそうさま」
「宮本君、私たちと結婚してくれない?」
「……は?」
「実際に結婚しなくてもいいの、結婚したふりでもいいのよ」
「…本当に何があったんだ?」
藤倉さんは、少し考えながら
「実は、私たちに貴族との婚姻の話が持ち上がっているのよ」
「その話は、前に話したと思うけど…」
「それが、『勇者』だけで王様と謁見したでしょ?」
「その時に王様から、『勇者』全員に相手を用意されていたの」
「びっくりだよ、王様の話が終わると別室でお見合い大会が始まるんだから」
「…それは、用意周到だな」
俺は国のやり方に、若干引いていた。
「しかも、『勇者』全員に3人もの相手を用意していたんだよ」
「……」
「『男勇者』のみんなは、鼻の下伸ばして相手をしていたよね」
「ええ、しかも王女様たちまで相手になっていたし」
「王女様?」
「そうよ、第1王女様から第3王女様まで『勇者』の相手に選ばれていたわよ」
「そういえば、あの男爵令嬢、
当てているのよって顔で『男勇者』の腕をつかんでいたわね」
「男ってバカよね~」
二人とも、ストレスたまっているな…
かれこれ2時間ずっと、お見合い大会『勇者』バージョンの話だ。
「あのさ、そろそろ本題の話をしないか?」
「…本題?」
「そう、俺に結婚のふりをしてくれっていう…」
「ああ、それはね私たちの相手に伯爵のご子息ってのがね…」
「…すごくしつこいの」
「そいつ私たち二人を妻に迎えたいって言ってて、本当にうざい!」
「そうね、話は自慢しかしないし」
「一番最悪なのが、女を下に見ていることね」
「話していて、すぐにわかったわ」
「あなたは私と結婚することで幸せになれるんですよって、何様なのかしら」
「それにそいつと会った日から監視がついているし、
そいつ以外の男の人と話をすれば、手紙が来るのよ」
「私以外の男には気をつけろって、あなたを一番気を付けないといけないでしょ!」
「…ってことは、もしかしてここに来るかも?」
「まさか…」
「王都からこの町に来る街道では、怪しいやつは見かけなかったけど?」
その時、店のドアが勢いよく開く。
「ご無事ですか、お二人とも!」
何この展開…




