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誰も知らない神の領域  作者: 駿河留守
天の領域
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龍の意志④

 静かな森に響く地響き。次の瞬間、森の木々の間から赤黒い炎が高々と上がる。

 その炎から俺は避けるようにしてがけ下に降りる。

「リュウの奴。マジで容赦なさすぎだろ」

 赤黒く染まる龍属性の土属性が発動したままの左腕を強く握りしめる。

「どうしたものか」

 今の俺の力のことを考えると完全接近戦しか勝ち目がなさそうだ。でも、リュウは銃を使った完全遠距離戦闘を好んでる感じだから簡単には近寄ることはできないだろうし、仮に近づけたとしてもリンさんの時空間魔術であっという間に距離を置かれてしまう。

「俺不利じゃね?」

「それをどうにかするのは教太ちゃんだよ!」

 隠れていた岩陰の向こう側からリンさんの声がしたと同時に頭上に俺を捕まえようと生き物のように動き回る紐が俺に襲い掛かる。大きく横跳んだり岩で覆われた左腕で紐を弾き飛ばしながら避ける。

 それをよんでいたかのようにリュウの銃弾が飛んできて俺の足元で赤黒い炎をあげて爆発する。リンさんはその炎の被害を被る前に時空間魔術で崖上のリュウのもとに退避していた。

「リュウちゃん。ちょっとやり過ぎじゃない?」

「俺も今そう思った。ちょっと手加減してやるべきやったな」

 そう言ってふたりは崖を下って来た。

「でも、なんで教太ちゃんは肘から指先にかけて土属性を覆った使い方しないのかな?」

「それしか使えないのか、はたまた使っていないのか。どっちにしろ教太はまだまだ発展途上や。これからどんな強さを身に付けるか・・・・・・」

 崖を下り終わったリュウとリンさんは手を口で覆う。

「すごい煙だね」

「お~い!教太!生きてるか!」

「教太ちゃ~ん!大丈夫~!」

「煙で何も見えないな。これやと教太の安否が」

 リュウが何か気付いたらしくリンさんの首根っこを掴んで引っ張って開いた手で銃を構えた方向から俺は煙の中から飛び出して龍属性の土属性によって赤黒い岩に覆われた左拳を構える。リュウが銃弾を発砲するがそれは俺の頬をかするだけ外れる。

 赤黒い岩の拳の攻撃をリュウは銃で防ぐ。

「教太!お前容赦なくなった!」

「マジで殺されそうになったんだぞ!このくらいの不意打くらいいいだろ!」

 拳の攻撃をリュウは銃ではじく。俺は右足でリュウの持つ銃を蹴り飛ばそうと思ったがそれをリンさんの紐が巻きついて阻止する。

「おわぁ!」

 そのまま紐に投げ飛ばされて近くの木に激突して止まる。

「ちょっと!教太ちゃん!危ないじゃない!」

 どっちがだよ。

 たった1時間弱の間に俺は何度死にかけたか分からない。

「教太。さっき少しリンと話していたんやが、その龍属性の土属性の使い方はそれしかないんか?」

 俺もチラッと聞こえた。左腕限定でひじから指先にかけてまで赤黒い岩で覆われている。これ以外の使い方はできないものか。

「確かに他にも使い方があるかもしれない。そもそも、俺はこれを使えるようになってまだ1週間たったくらいだぞ。そんな短期間でそうバンバンと新しい力が使えたらおかしいだろ」

「確かにそうやな」

 リュウもリンさんも納得したようにうなずく。

「でも、俺には時間がない」

 新しい龍属性の発掘なんてすぐにできるとは限らない。アキに言われて何度か試したことがあるが何をやっても発動するのはこの赤黒い岩だけだ。どうすればいいのか。リュウとリンさんが出した解決方法として一度死にかけてみるという方法。でも、マジで死にそう。

「まだまだ行くぞ!」

 そう言って俺は物陰に隠れる。

「やれやれ。教太ってあんな戦闘マニアやったけ?」

「さぁ~」

「ま、教太がそのつもりならこっちもそれ相応に答えてやろうやないか!」

 銃のマガジンを新しいものに装填してから俺の隠れる岩に向かって銃弾を撃ち込む。同時に赤黒い炎をあげて岩が爆発する。銃を乱射して入れに攻撃を隙を与えないと同時に距離を離していく。

 近づかないとダメだ。でも、どうやって近づく。今俺に使えるのはこの岩でできた龍属性の腕だけ。せめて、あの銃弾を防げたら。でも、腕で受け止めたらその瞬間赤黒い炎がドカンだ。俺もただじゃ済まない。

「せめて飛ばすことが出来れば」

 その時、俺の腕に何か変化が起きた。それは特に大きな意外性のある変化とは程遠い。でも、これが成長というのならばありがたいに越したことはない。

「行くぞ」

 岩陰から飛び出す。

「リュウちゃん!出てきたよ!」

「分かってるで!手加減はしてやるよ!」

 そんなこと言っておきながら発砲する銃弾の軌道はいつも直撃コース。俺がかわすことを前提に撃っているのだろう。なら、俺がかわさなかったらどうだ。俺の赤黒い岩が手のひらに集まってゆく。そして、ひとつの小さな塊になった。それを投げるとリュウの撃ち出した銃弾に直撃する。銃弾に刻まれた龍属性の火属性の魔術が発動して赤黒い炎をあげて爆発する。

「何?」

 途中で銃弾が爆発したことに驚いたリュウ。しかも、最後の一発で銃弾が切れる。

「だてに撃たれ続けてるんだ!お前の一回の装填で撃ち出せる銃弾数くらい大体分かってるんだよ!」

 煙の中をかけてリュウに向かって岩の拳で殴りにかかる。装填中のリュウは隙だらけだ。だが、リュウが笑みを見せた途端にリュウは沈むように消えた。俺の拳は空振りに終わる。リンさんの時空間魔術で移動した。しかも、同時にリンさんが紐を使って俺のことを拘束しようとしてくる。拳が空振りに終わってすぐに横っ飛びすることができない。ならばと左手の岩を手のひらに再び集めて地面に向かって龍属性の土属性で出来た赤黒い岩の棍棒を作り俺の体を一気に宙に押し上げて紐の拘束からかわす。

「え?」

 作り上げた赤黒い岩の棍棒を踏み台にして一気にリンさんに近づく。再び左腕に赤黒い岩を覆わせて拳を作りリンさんに襲い掛かる。だが、それを阻止するべく銃弾が左腕に直撃して赤黒い爆炎をあげて爆発すると同時に俺は吹き飛ばされる。

 左腕は岩に覆われていたおかげで大した怪我はしていないが銃弾の直撃のせいで痺れて言うことを利かない。龍属性の教術が発動しない。

「教太ちゃん!大丈夫!」

 心配したリンさんが駆け寄って来た。

「すまない!教太!やりすぎた」

「いや、俺もちょっとやりすぎた感があった。危うくリンさんに怪我を負わせるところだった」

 逆にリュウの銃弾が妨害しなければ今頃リンさんの整った幼顔に傷がついていたかもしれない。

「今日はここまでにしておこう。結構、暴れたしな」

「ほぼ、リュウのせいだろ」

「全部、リュウちゃんのせいでしょ」

「す、すべては教太のためだ」

 言い訳言いやがって。

「教太ちゃん大丈夫?一応、回復魔術を施すね」

「あ、ありがとうございます。でも、痺れてるだけなんですぐに治りますよ」

 リンさんが回復魔術を発動して青白い光が俺を包み込んでくれる。同時に左腕のしびれが少しずつ引いていく。他にも負った擦り傷とか切り傷とかも癒えていく。本当に怪我の治療に関しては魔術はすごい。

「しかし、教太!別の龍属性の発掘はできなかったが別の使い方で出来たやないか!」

「そうよ。ほんの数日前に使えるようになったばっかりなのに」

 そう言われて俺は左腕に力を込めると五芒星の陣が発生して手のひらに龍属性の岩でできた棒を作り上げた。代わりに左腕に岩が覆うようなことはなくなった。覆っていた分がすべて手のひらの棒に集まって来たのだろう。どうも発動時に使える岩の量には上限があるようだ。

「形状を変えたりできないか?例えばそうやな・・・・・その棍棒やと格好がつかないし剣とかにできないんか?」

 確かに今まで俺は無敵の槍や無敵の短刀(デストロイ・ダガー)のような破壊の力を武器の形に変えて扱いやすくしている。今まで棍棒を使ったことはない。できるならば剣に変えれば・・・・・・。

「・・・・・待てよ。もし、それが可能ならば・・・・・・」

「どうしたの?教太ちゃん?」

 リンさんが俺の目の前まで迫ってきていた思わず驚いて尻餅をついてしまう。危うく事故で唇を交わしてしまう所だった。いや、それはそれでいいんだけど。

「教太。もう一戦行くか」

「待て!今のは俺は何も悪くないからな!」

 慌ててリュウに言いかけると大きくため息を吐いて銃をコートの懐に仕舞う。ホッと一安心。

「まぁ、すぐにその岩の形状を変えるのは簡単やないと思う。他にも別の龍属性が眠っている可能性も含めてこれから訓練は必要や。中央局に頼んで明日もこの施設を使わせてくれるかどうか聞いてみるわ」

 わぁ~、明日もやるのかよ。

 寿命がこの夏休みで何年縮むか分からないな~。

「それよりも龍属性の土属性がある程度コントロールできるようになったことをさっそくアキナちゃんに報告しよ」

「そ、そうですね」

 前向きになるんだ。これで美嶋を取り戻すひとつのきっかけになると良いと俺は思う。本気の命のやり取り作戦は強引であったが結果的に成功したということだ。二度目はやろうとは絶対に思わない。

「国分様」

 突然、俺の名前が呼ばれて鼓動が一気に早まった。突然すぎてリュウは銃をリンさんは紐を手にしてしまっていたが、それもすぐに解いた。振り返ると木陰に見慣れた袴を着た男がいた。

「拳吉のところの」

 確か上京だ!

「下京です」

 違った~。

「国分様。今すぐ時空間魔術を使い城下の方にお戻りください」

「なんでだ?何かあったのか?」

「黒の騎士団の使者が国分様を拘束するために本国にやってきているらしいのです」

「・・・・・俺の拘束?」

 不穏な空気が俺たちを再び包む。

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