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誰も知らない神の領域  作者: 駿河留守
天の領域
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龍の意志③

 病室にいるアキと別れた後、リンさんの時空間魔術の移動によりやって来たのは市街地から少し離れた森林地帯。真夏ということもあってセミたちが盛大に鳴き喚いている。真夏の暑い日差しに噴き出る汗を服の裾でふき取って移動してきたこの場所は少し小高い山になっていて周りも少し森を切り開かれていて市街地を見渡すことができる見晴らしのいいところだ。

「ここは中央局が新兵を育成するための演習所らしいんや。今回は特別に貸し出してくれたみたいなんや」

「普段、私たちみたいな組織のために中央局が手持ちの施設を全く貸してくれないのに今回は教太ちゃんのためだって言ったら快く貸してれたのよ」

「まったく俺たち組織はどこまで嫌われてるんや」

 そうか。リュウにリンさんは完全な組織の人間。中央局からこの国から嫌われ者の存在。アキが組織に所属するのにああやって拳吉や居酒屋のおっさんたちと打ち解けることができるのはこの国の人だからだ。組織がMMがこの国に入ってこなければアキは魔女になることがなかったかもしれない。

「教太?」

「あ、ああ。ごめん。何か用?」

「さっそく、別の龍属性の発掘をしていこうか」

「よろしくお願いします」

 リュウに初めて敬語を使った気がする。

「教太の使える龍属性は土属性だったな」

「ああ」

 土属性は属性魔術の中で最も強固でその硬さを使った攻撃と防御が売りの属性だ。実際に俺はその硬さを利用してグレイの黒い粒子の削る攻撃を防ぐこともできた。

「使えるのはひとつだけか?」

「今のところ・・・・・たぶん」

 俺の中にあった有の存在。これを使って俺は強くなるんだ。ふたつの教術を使いこなせるようになれば俺も規格外の奴らと互角にやりあうことが出来れば美嶋もきっと戻ってくる。そしたらみんなこんな異世界から元の世界に帰るんだ。

「リュウは最初、どっちの属性の龍属性を使えてたんだ?」

 リュウはコートの下に隠している黒塗りの魔武の拳銃を使って龍属性攻撃をしてくる。使える属性は火と氷。

「俺は火属性が使えた。後から氷属性が使えることが分かった」

「後から分かってなんか簡単に分かったみたいな言い方だな」

 もしかして、他に使える龍属性は結構簡単に発掘することができるのか?そうなってくると後は元から元素操作の力との組み合わせだ。強固な龍属性の岩と破壊の攻撃は全く真逆の性質を持っている。組み合わせ次第ではきっと無敵の槍以上の攻撃をできるかもしれない。

「魔術師の場合だったらすべての属性の龍属性の陣を用意して発動できるものが使えて発動できないものが使えないって簡単に判断できるんやけど・・・・・教太は教術師だしな~」

 確かに魔術師だったらその方法が一番楽ちんだよな。美嶋の時も何の属性魔術が発動できるか調べる時もレベルの低い属性魔術が発動できるか試した。教術師にはそれが出来ない。

「じゃあ、どうやって発掘するんだ?」

「簡単な話だよ。教太ちゃん」

 笑顔のリンさんがヒモのスカートの何本かをちぎり取る。ちぎれたスカートの隙間から垣間見れる太ももはすごくエロい。スカートの中の下着が見えそうで見ないのがさらにエロい。

「どこ見とるんや?」

 リュウのドスの利いた声でコートの下から拳銃を取り出す。

「いや、どこも」

 初めてリンさんの魔武を使うところを見れたというのに飛んだ邪魔が入った。というか・・・・・。

「どうして二人は武器を手にしてるんだ?」

「決まってるやろ。他になんの龍属性が眠っているか分からない以上は引きずり出すしかない」

「アキナちゃんから聞いたよ。教太ちゃんの龍属性の教術が出てきたのはイギリス魔術結社のグレイとの戦闘で死にかけたから」

「前からあるシンの力だって結構危ない状況下だったらしいやないか」

「・・・・・それってつまり」

「本当の殺し合いでもすれば、命の危険に内なる力が反応して自分を守りに出てくるかもしれないなって思ったのよ」

 いやいや、ふたりは勘違いをしている気がする。俺の力の発生はいつも誰かを助けたいとかなにも無駄なことは考えずただがむしゃらに力があればと思った時だった。今、それを再現できるとは思えない。

「じゃあ、行くで!教太!」

「ちょっと!待て!」

「待たないよ!教太ちゃん!」

 リンさんはちぎった紐スカートを伸ばしてきて俺の足に巻きつく。リンさんのスカートの紐は魔武になっていて魔力を流すことによって伸び縮みする。そして、紐の先では時空間魔術を発動することができるらしいのだ。どういう仕組みで二種類の魔術を使えるように魔武を加工しているのかは知らないが、いきなりすぎて対応できない。

「ほら!教太ちゃん!そのままだと本当に殺されちゃうよ!」

 足に巻きついた紐を引っ張られて態勢を崩されて尻餅をついてしまう。そこに拳銃を構えたリュウがいた。

「隙だらけやで!」

 拳銃を発砲してくる。

「急すぎるんだよ!」

 右手に力を込めて破壊を司る黒い靄を発生させて飛んでくる銃弾を破壊して防ぐ。リュウの発砲する銃弾は着弾と同時に龍属性の火属性と氷属性が発動する。その前に破壊の力で破壊してしまえばこっち大丈夫だ。

「この!」

 足に巻きついている紐を破壊の力で切り離して立ち上がる。

「う~ん、やっぱりその破壊の力に頼っているようやとダメやな。教太!」

「なんだよ!」

「破壊の力使ったらだめやで」

「え?」

 いや、確かに別の龍属性を発掘させるんだったら破壊の力に頼っちゃいけないのは分かる。

「でも、本気で殺しにかかってくるあんたらに龍属性の土属性だけで敵うはずがどこにも」

「そんな弱気だといつまでたっても成長しないよ!教太ちゃん!」

 リンさんが紐を伸ばして攻撃してくる。いつもなら破壊して防いでいるところを今はその力自体の使用を禁止されてしまっている。

「ええい!分かったよ!やればいいんだろ!龍属性だけで!」

 飛んでくる紐は横に飛んだりして交わす。そして、左腕に力を込めると五芒星の陣が現れて左腕を赤黒い岩が覆う。

「その調子やで!手加減して使う龍属性は火だけにしたる!本気でかかってこいや!」

 発砲して着弾すると赤黒い炎と爆発によって粉じんが上がる。その粉塵に紛れて一気にリュウに接近する。粉じんが晴れたその先には銃を構えて俺を探すリュウの姿があった。大きく踏み込んでリュウを殴りに行く。

「このー!」

 だが、リュウガ突然沈んで消える。

「は?」

 リュウのいた足元には真っ黒な穴。

「時空間魔術!」

「正解だよ!教太ちゃん!」

 無数の紐が俺を拘束するために飛んでくる。

「くそ!」

 避けるも右腕に紐が絡みついて離さない。

「捕まえたよ」

「そこや!」

 近くの茂みからリュウが出てきて銃を構える。

「おいおい!ちょっと!待て!」

 発砲してきた銃弾を防ぐ手段もなくそのまま赤黒い炎にやられるがままだった。

 リンさんの紐の拘束が解けて爆発の勢いのせいで吹き飛ばされて木に強くぶつかって肺の中身が一気に抜けて呼吸が大きく乱れる。

「その程度だと龍属性が出て来る前に死ぬで!」

「いや!その前に止めろよ!」

 左拳に赤黒い岩を覆わせた状態でリンさんとリュウに向かっていく。その先にある強さを求めて。

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