↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰も知らない神の領域  作者: 駿河留守
無の領域
PR
121/192

砂の遺跡で③

 ユーリヤという女はゆっくりと階段を降り来ると何かを探すようにあたりを見渡す。透明化の魔術を施されている俺たちのほうも見つめたが何も気付かずに赤い視線はキュリーさんの下へ。

「ひとり?」

「そうだけど」

 と噛み付くように答える。

「そんな物騒なものを取り出さなくてもいいじゃない。私とあなただけでしょ。七賢人の魔術師は」

 俺が知る限りだとイギリス魔術結社の七賢人はほとんど教術師だ。魔術師なのはキュリーさんが始めてだ。

「だから、同じ魔術師として仲良くしましょ」

「私はまだ七賢人の名前を受け取ったつもりはないわ」

 キュリーさんの発言にユーリヤが頭を抱えてため息をつく。

「いい加減にしたら?あなたも分かっているでしょ?ロズはもういない。何年連絡が取れていないと思ってるの?」

 ロズ?誰だ?

 キュリーさんはそのロズの名前を出された途端、握る刃をユーリヤに向ける。

「彼はまだ死んでいない!どこかで生きている!」

「はいはい、分かったから剣をおろして」

 慌ててキュリーさんを落ち着かせる。一応、俺はイギリス魔術結社の七賢人にはほとんど会ったことになる。第7のフローラ、第6のグレイ、第5のキュリーさん、第3のゴンザレス。俺が知らないのは第4と第2、第1だ。少なからず七賢人だというユーリヤはキュリーさんよりも数字は高いが、どうして戦うことを避けるような発言をした?

「あなたと正面から戦ったところで私には勝ち目がないのは分かってるから。あなたは強い。ロズから学んだその技術は教術師が相手でも十分通用するものね」

 ロズの技術ってなんだ?キュリーさんの魔術の使い方について俺たちにはまったく明かしていないが、やはりシンの力のような特別な力ではなく技術的な力なんだ。でも、ロズってどこかで聞いた名前な気がするんだが・・・・・どこで聞いたんだろう?

「それ以上ロズのことを話すな」

「・・・・・・分かったわ」

 両手を挙げてキュリーさんを落ち着かせる。

「それでどう考えても武闘派のあなたがどうしてこんなところにいるの?しかも、私の見張り部下を拘束までさせて」

 赤い視線は疑いをかけるが殺気は感じない。

「少し気になっただけよ。新しい遺跡って言うのに」

 言葉を濁すように答えるがそれが余計に怪しさが増す。

「気になった?このクラスの遺跡は過去に何度も見つかっているわ。私はそのたびに現場に訪れて調査をしているわ。そこであなたの姿を私は一度として見たことないわ」

 魔術師の中にはふたつのタイプの魔術師がいる。まずはキュリーさんのような戦闘タイプ。戦うことに魔術を知り扱う魔術師だ。そして、もうひとつはハンナのような頭脳タイプ。戦うことではなく新しい魔術を発掘や研究をする魔術師だ。アキはそのふたつをかねていた。だから、魔女として恐れられた。

 あのユーリヤはどちらかといえば頭脳タイプのようだ。

「まぁ、今回ばかりは今までの発見とは少し違うのよね」

「少し違う?」

 その言葉に透明化していて見えないが隣にいるハンナが反応した気がした。

「そう、まだ完全に解明は済んでいないけど、カントリーディコンプセイションキャノンと同等かそれ以上の威力を発揮するかもしれない古代魔術兵器を召還するために魔術の可能性が高い」

「・・・・・はぁ?」

「しかも、カントリーディコンプセイションキャノンと違うのは発動素材に神の法則に守られた教術師という用意するのが面倒な素材を必要としない。まさに弱点のない魔術兵器よ!」

 カントリーディコンプセイションキャノンはその発動素材を用意するのがネックな分威力が非常に高い。しかし、そのネックさのおかげで乱用されずに済んでいる。だが、この遺跡にある古代魔術兵器はそれを超えるかもしれない威力を持ちつつも発動素材が簡易的であるとユーリヤは告げた。

「その効力は?」

「解明できていないけど」

 ユーリヤが上を見上げて俺たちもそれに釣られる。

「おそらく、人を喰らう魔術」

「人を喰らうって!」

「天上の壁画を見てそうじゃないかって言う予想に過ぎないわ。どうなるかは発動してみないことには分からない」

 でも、それには多大なリスクを生じることになる。もしも、その古代魔術兵器が魔術師や教術師では歯の立たない、押さえつけようがないものならば人を喰らう魔術兵器を誰がどう止める?

「だから、発動する前に周りの遺跡にほかに情報がないかを捜索しつつこの遺跡の完全復元を目指しているところよ。砂を掘り返して近くに遺跡が埋まっていないかを捜索しているところなんだけど・・・・」

「ところなんだけど、何?」

「先住民というかこの近くの遺跡に人が住んでいるの」

 人が住んでるってここは砂漠のど真ん中だぞ。

「なんでこんなところに人がいるのよ?少し行けば水も食料も豊富な町があるじゃない」

「何度も同じようなことを言ったけど、聞かないの。ここは自分たちが守っている土地だからって」

 こんな砂しかないところを守る価値があるとすればそこに何かがあるからだ。

「私はそこに隠されているであろう何かを探り当てるためにいろいろ手をうっているの。でも、」

「まったくうまくいっていないようね」

「だから、強行作戦を考えてるの」

「え?」

「要するに先住民ども力をもってして排除させるの」

「それが許されるとでも思ってるの?」

「ばれなければどうとでもなるわ。適当に砂嵐にやられたとか言い訳はいくらでも作れるわ」

 赤い瞳から感じる感情は何もない。新たな古代魔術兵器のためなら人の犠牲をまったく苦としていない。これが霧也たちを機関という地獄で生き死に晒したことやアテナの体を女性としての機能がなくなるまで実験に使ったりといった非道なことができるんだ。

 そして、機関を作った女は再び非道なことを行おうとしていた。俺はそれを阻止するべきだ。霧也が俺の立場ならきっとすでに斬りかかっていてもおかしくない。ここでシンの力のことが書かれていたとしても俺は新たな犠牲を出すくらいならこの力を使う。それがこの力を持っている俺のあり方だ。

 右手に力をこめて一歩踏み出そうとしたときだった。

「ふざけるな!!」

 甲高いキュリーさんの声が地下遺跡中に広がる。その声は外まで響いているんじゃないかって思うくらいだ。

「私はあなたが嫌い!そうやって目的のためなら人を簡単に虫みたいに殺すあなたは嫌い!魔術って言うのは人を豊かにする力よ!力ない人間が少しでも楽に幸せにするために神様がくれた力よ!私はこの力を使って人を笑顔にする。それに反するあなたを斬ることに私は容赦しない」

 剣を顔の前に持ってきて突き立てるとはたられる重圧の殺気は向けられていない俺たちにも伝わった。こんなキュリーさんと正面から戦って俺は勝てるのか?魔術師ながら戦ったことのある七賢人は第6のグレイよりも高い称号を持っているキュリーさんは強い。その強さを今ここではっきりと分かった。最近まで規格外の風夏といたせいかその殺気が埋もれていたが、キュリーさんは強い。ユーリヤが武器を収めるようになだめる理由が分かる。

「まぁ、落ち着いて。私もいろいろと昔はやらかしたわ。でも、今はそんな非道な方法をいきなりとるっていうことはするるもりないの」

「なら、なぜ力を行為するって言った?」

「それは最終手段の話で今はその段階じゃない」

「どういうこと?」

 ユーリヤの話では先住民をどかす方法があるということだ。

「住み着いている奴らを引き剥がすの。お金とかじゃダメだったから他の方法で。例えば、弱みを握るとかね?」

「その方法のどこが非道じゃないって言えるの?」

「非道じゃないでしょ?殺すよりは」

 キュリーさんもそれ以上は言わない。なぜなら、弱みを握ることは非道なことだと否定すればユーリヤはそれならほかに方法がないからといって実力行使しかねない。歯を食い縛ってただ耐えるしかなかった。

「ある魔術師は言ったわ。犠牲なくして魔術の発展はないと」

 俺は思わず隣にいるであろうハンナのほうを見てしまった。彼女は言ったことがある。魔術の発展に犠牲は必要だと。

「その犠牲が弱みを握られて代々守ってきた土地を手放す程度で済むならそれでいいじゃない」

 もう、これ以上は言い返すことはできない。キュリーさんはプルプルと剣に力をこめたまま刃を下ろす。

「しかし、私が交渉に入ってもすでに面が割れてしまって交渉もままならない。だから、キュリーあなたがやりなさい」

「はぁ?なんで?」

「魔術で人を笑顔にしたんでしょ?ならば、その魔術とやらとロズの技術を使って」

「ロズの技術を口に出すな」

 キュリーさんの口調が再び険しくなる。彼女は自分の魔術の発動技術を誰にも明かさない。それは戦うためじゃなくて人を笑顔にするために使う力だからだ。だから、技術のことを聞くといつも拒絶される。だが、目の前のユーリヤはその技術のことを知っている口ぶりだ。

 不意に俺とユーリヤの赤い視線が合う。

「ロズの技術って言うのは視線誘導とポーカーフェイスだったわね」

「黙れ!」

 地面を蹴ったキュリーさんはその刃をユーリヤの口の中に入れて止まる。本当に一瞬の出来事で目で追うとはできなかった。

「それ以上しゃべれば口を裂く!」

「怖い怖い」

 と身を引く。

「まぁ、これ以上ロズの技術を明かされたくないというなら私の変わりにその人を笑顔にする技術とやらを屈指して先住民の説得をしてもらおうかしら」

「嫌だといったら?」

「そこに隠れている奴らを殺してあなたに殺されようかしら」

 不意に自分たちのことを言われていると気づいて体がこわばる。

「いつから?」

「最初からどこかに潜んでいるんじゃないかって思ったの。武闘派のあなたがここに来ること自体が怪しい。誰か研究熱心な魔術師でもいるんじゃないかって・・・・・出てきなさい。そして、ここから出て行け」

 明らかに目線は俺たちのほうだ。どうする?俺はイギリス魔術結社に割れている。もしも、ユーリヤが俺のことを知っていたらどうなる?捕らえろという命令が下っている俺と行動していることを隠しているキュリーさんがどうなる?

 葛藤せめぎあう中、俺の服の裾が引っ張られた。

「フードを深くかぶって」

 それをハンナの声だった。慌ててフードを深くかぶるとハンナの姿が見えてきた。

「ふたりもいたの」

「はじめましてイム・ハンナですぅ」

「え?イム・ハンナって」

「はい、そうですぅ。魔女ですぅ」

 と完全な作り笑顔に感じるが非常に友好的に感じる。ここに来てもハンナの演技は分かっていても騙される。 

「どうして黒の騎士団の魔女とあなたが行動を共にしてるの?」

 おいおい、結局怪しまれてるぞ。

「黒の騎士団ってクズですぅ」

「・・・・・・え?」

 固まるユーリヤ。

「目的は世界の秩序を守るためとか言ってやっていることは非道なことですぅ。団員の中には当たり前のように悪魔術を使う魔術師もいますぅ」

 香波ことだな・・・・・・。

「意外と普通じゃないことをやっているのに持っている魔術の情報はたいしたことありません。でも、魔術の発祥の地で初めて発足された魔術組織であるイギリス魔術結社が持っている魔術の情報は非常に有意義なものですぅ。キュリーと出会ったときに私は決心しましたぁ。魔術の情報をろくに持たない形だけの正義の味方をする黒の騎士団よりも魔術の発展のために働く結社の元で働きたいと。私の知らない魔術の情報がいっぱいあるところに行って私も魔術の発展のために働きたいですぅ」

 半分以上はハンナの本心だろう。新しい魔術のためなら興味のためならなんだってするような子だ。

「本当なの?」

「本当ですぅ。なんなら、コミュ障のキュリーに代わって私が先住民をどかせてあげますぅ」

「誰がコミュ障よ」

 人望ないもんな・・・・・。

「私は魔術の発展のなめなら多少の犠牲は気にしないですぅ」

「ちょっと!ハンナ!」

「ちょっと黙って欲しいですぅ。コミュ障」

 ビチッて音がしたけど、それは怒っているのを我慢している証拠だ。良しとしよう。

「私が七賢人であるユーリヤさんの代わりに先住民をどかしてここに眠っている古代魔術兵器の謎の解明をお手伝いしますぅ」

 非常に良心的で友好的なハンナの提案をユーリヤは疑う理由がない。

「キュリー。あなたが見張っていなさい。結社に歯向かうようなら殺しなさい。といってもあなたが結社を裏切っていなければの話だけど」

「結社を裏切る気はないわ」

「そう、ならいいわ。次からはあなたたちが自由に出入りできるように手配しておくから今度は見張りを気絶するような真似はしないこと」

「分かってるわ」

 目配りで外出に出るぞという合図を貰って出口へ向かう。

「ああ。そうそう、ひとつ」

 俺たち3人は肩をびくつかせる。俺のことを何も触れなかったから気になったんじゃないんかって。でも、違った。

「弱みを握るならいい人物を紹介してあげるわ。そいつは他人の記憶を盗み見ることができるの」

 ・・・・・その能力聞いたことがある。

「名前はレイランって言うの。あいつが協力してくれたら作業がはかどるから使いなさい。分かった?」

「・・・・・・・い」

 キュリーさんが嫌だといいそうになるところを俺が抑える。するとハンナが笑顔で。

「分かりましたぁ。ありがとうどざいますぅ」

 といって遺跡を後にした。

 でも、まさか二度と会わないと思っていた奴ともう一度会うなんて・・・・・嫌だな~。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。