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オノマトペ魔法師と堅物廷臣法官長の王宮事件録~わたしの魔法は、国家機密⁉~  作者: いとう縁凛
第一章 王宮内連続盗難事件

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006件目 幽霊の執着!?


 盗品が見つかり、レオンハルトさん達に戻された。それ自体は良かったんだけど、捜査はまた振り出しに戻っている。

 前世で言う指紋みたいな、魔力紋みたいなものを追えるかもしれないと考えてみた。でも、アスドート伯爵が布袋をしっかりと抱え込んでいたせいでそれも追えない。



「貴殿には尽力してもらったのに、不甲斐ない結果ですまない」

「いいえっ。レオンハルトさんが謝る事じゃないです」


 今は、真犯人についてザドルさんも交えて話し合っている最中だ。


「これまでの犯人の行動から考えて、次に狙われるのは母上だと思っている」

「ロジェナちゃんじゃなく?」

「私達が盗まれた物は、どれも懐にしまえそうな小さいものだ。ロジェナはまだそういった高価な物は与えられていない」

「でも、あの熊のぬいぐるみ。緑の目が宝石のように見えました」

「あれは……それほど、高価な物ではない。街でも売っている」

「そうなんですね」


 レオンハルトさんが一瞬目を泳がせたような気がするけど、気のせいだよね。売られている様子を思い出していただけかな。

 仮説からすると、あれは懐には入らない大きさだ。

 うんうんと納得していると、レオンハルトさんが何か言いづらそうな顔をしていた。


「どうされました?」

「……母上から、貴殿と話がしたいと要請を受けている」

「えっ!? 王妃様から!?」


 え、無理。一般庶民に王妃様との謁見なんて、絶対拒否案件。

 でも、庶民だからこそ拒否権を発動できるわけもなく。


「わ、わかりました。王妃様とお話します」

「そうか。それならば、私も共に行こう」

「共に、ということは……レオンハルトさんも隣にいてくれるということですか?」


 頷いてくれて安心した。

 王妃様と話すなんて緊張しかないけど、レオンハルトさんが隣にいてくれれば乗り越えられる気がする。


 それから。

 レオンハルトさんと一緒に王妃様が待つ謁見の間へ行った。両脇に兵士達が並んでいて、二つある玉座の右側にいた王妃様は威厳に満ちている。

 緑の髪は優しさではなく、大森林の厳かな雰囲気を。青い瞳は冬の海の厳しさを感じさせた。でも、その鋭い眼差しはレオンハルトさんと似ていて、初めて会うのにどこかほっとする。

 そんな王妃様から直々に、盗難事件の犯人を捕まえてほしいと捜査依頼をされた。


 緊張しっぱなしだったけど、レオンハルトさんが隣にいてくれたおかげでどうにかなったと思う。

 何より、犯人を逮捕できたらあの部屋から移動しても良いって! 陛下は今地方に行っていていないから、それからになるけど。

 これは、ますます気合いを入れなきゃね!




 王妃様との謁見を終えたわたし達は、会議室で大きな紙を広げていた。


「犯人は煙化ができる。そのことから、侵入経路は二つ。換気口と、秘密通路だ。これらはどちらも、監視の目をかいくぐって直接目的の場所に行ける。犯人を捕まえるためにも、まずそのルートを洗い出す」


 換気口に関しては、宝物庫にお城の設計図の一部として残されていた。それを見ると、広く大きなお城の中を縦横無尽に張り巡らされているとわかる。

 犯人は、こんな複雑なパイプをどうやって把握したんだろう。

 換気口だけじゃない。レオンハルトさんでえすら知らなかった秘密の通路まで、頭の中に入っているみたいだった。


「私達は、秘密の通路内を捜索する」

「わかりました」


 近衛達と他の兵士達。その違いは鎧で見分けられる。近衛の鎧は白地に金の紋様が、兵士の鎧はねずみ色の鎧と赤い房を剣につけていた。

 あとは、近衛職の方が魔法に長けているらしい。

 兵士達は、設計図を見ながら換気口の蓋を確認しにいく。


 そしてわたし達は、すでに判明している入口、ルリアーナ姫の部屋から捜索を始めた。

 入ってからすぐは人工的な壁だった通路は、すぐに土がむき出しになってくる。そして、暗い。三方向に分かれる道に来た時、近衛達の数を確認した。


「ニャーンと猫の目を借りよう。九対の目を光らせて」


 暗視効果が出るような魔法をかけると、みんな驚いたような声を上げていた。


「これから、三班に分かれて捜索をする。各自が互いを守れ。ただし、深追いはするな。相手は三人じゃ手に負えない知能犯だ」


 ザッと揃った礼をした近衛達が、左右の道へ進んでいった。

 わたし達は、正面の道。


「私達も、捜索開始だ」

「はい! 今度こそ、犯人確定の証拠をつかみ取りましょう!」


 レオンハルトさんとザドルさんと道を進む。この道には、時々ツルッとした表面の壁があった。ここを、犯人が利用しているということ。

 この先に犯人がいるかもしれない。そう思って緊張しながら歩を進める。


「出口です!」


 緩やかな坂を上っていくと、淡い光が漏れている扉が見えてきた。先頭にいたザドルさんが扉越しに外の様子を窺い、頷く。

 扉を開け外へ出ると、そこは街中の路地裏のような場所だった。


「こんな所から王宮へ行けてしまうのか」

「緊急時の抜け道と考えると、ここを封鎖するわけにもいかないですしね」


 路地裏にいくつも並ぶ扉の一つで、カモフラージュはできていると思う。でも場所を覚えてしまえば、外から侵入し放題だ。かといってここに人員を割いたら、この扉は重要なものだと伝えることになる。


「今可能な対策としては、扉の内側に人員を置くぐらいか」

「もしくは窪みを作って、そこにいてもらうとか」


 配置された人が買収されたら意味をなさなくなるけど、今考えられるのはそれぐらい。


 街に繋がるという結果を得た。残りの二つの道もどうだったかを確認しに、王宮へ向けて進む。

 分岐点へ近づく頃、一人の近衛が駆け寄ってきた。


「何かあったのか」

「報告します! 右の分岐先にて、魔法障壁を発見。解除した所、近衛が一名負傷しました!」

「何!? その近衛は無事か」

「王宮内へ運び、現在治療中であります!」

「わかった。では、その件の場所へ案内を頼む」


 近衛を先頭に、通路を進む。いよいよ対決かと思いながら分岐点まで行くと、左に行った近衛達もそこで待っていた。

 三人加わり、七人で右の道へ進む。

 右の分岐点はさらに分岐が重なっていて、ちょっとした迷路のようになっていた。


「この地点より五十歩ほど進むと、件の場所になります」


 敵は近い。一気に緊張感が増す。歩む足も自然と重くなる。

 四十歩辺りから、さらに進む速度が下がった。


 あと七歩。

 あと三歩。

 あと、一歩。


「おかしいですね。先程はここでッ!?」


 首を傾げた近衛が、急に炎に包まれた。


「! 大気を巡るマナよ、水属性」

「ピタッとゴロンとゴロゴロと、止まって倒れて転がって! 仕上げにビシャッと濡れ鼠!」


 レオンハルトさんが詠唱をし始めた時、わたしも燃える近衛に手を向けてオノマトペ魔法を放つ。

 転がる事によってある程度の火が消えた近衛の、鎧の下が濡れるようにした。火傷はあるみたいだけど、命に別状はなさそう。

 ここで、火傷した近衛と肩を貸す二人が離脱。こちらの陣営は残り五人。


「どうしましょう? 人数が減ってしまうと対応も難しいと思います」

「一理ある。しかし同時に、この先に犯人がいる可能性が大きい」

「追いつめるチャンス、ですね……」


 さっき、罠のスイッチみたいなのがわからなかった。でもどこかにあると思う。無から有は生み出せない。


「どこにあるかわからない罠の位置を把握するのは効率が悪い。この先に罠が仕掛けられていると考えて、それを一掃できないものだろうか」

「考えてみます」


 一掃……掃除……。

 これでいけるかも!

 名案を思いつき、前方へ手を向ける。


「ささっとパパッと掃除する。邪魔な異物は取り除く!」


 詠唱と同時に、箒型の魔力波が洞窟内を螺旋状に進んでいく。奥の方まで、「ポンッ、ポンッ」と罠が弾けるような音がした。


「これで、良いと思います!」

「さすがだ! では行くぞ。私に続け」


 レオンハルトさんの指揮の下通路内を進む。でも、すぐに異変が訪れる。

 右斜め上、左斜め下というように、所々で罠が解除できていなかった。そのせいで一人、また一人と離脱していく。

 ついにはザドルさんまで離脱することになってしまった。残ったのはわたしとレオンハルトさんだけ。静けさが、怖い。


「……すみません。わたしのミスです」

「恐らく、螺旋状以外の所にあった罠だろう。問題ない。残っていたのは小さなものだった」


 慰めてもらって思わず目が潤んでしまった。

 でも、現場はそんな空気を壊してくる。コツコツと、足音が響いてきた。

 わたしはとっさに、気配を消して声を小さくする意味を込めて詠唱する。


「こそこそ、ひそひそ身をかがめ。二人は外から無認識」


 詠唱が終わると同時に、正面からローブを目深に被った人物がやってきた。でも、その人物はわたし達に気づくことなく左折していく。

 レオンハルトさんと頷き合って、後を追う。

 道の先には、扉があった。ここもどこかの出口と繋がっているのかと思ったけど、そうじゃなかった。


 ――ッ!!


 そこは部屋になっているようで、土壁の一面にびっしりと王妃様の絵姿が貼られていた。

 一枚一枚の表情が違う。様々な角度から見た王妃様の絵姿から、犯人の執着がわかる。


「あぁ……憎い。ラフィーナのために動いただけなのに……なぜ!」


 がらがらの声だけど、男性には思えない。ダンッと机に拳を下ろした時に見えた手も細かった。

 王太子様のカフスボタンが盗まれた時に感じた、あのニオイがする。甘く焦げた、煤けた油のようなニオイ。

 目の前にいる人物が、連続窃盗事件の犯人だ。


「あぁ……ラフィーナ……あなたは、どうして……」


 犯人が、振り返った。とっさに口を手で塞ぐ。

 犯人はわたし達の目の前まで来た。ローブの下に見えていた顎の辺りに火傷のような痕が見える。犯人はわたし達に気づかず、部屋から出て行った。

 今は、わたしとレオンハルトさんだけ。深追いはできない。

 犯人の執着がわかる部屋でしばし待ち、外へ出る。今回も目の前で逃してしまったけれど、大きな収穫があった。


「顔の火傷。あれは犯人特定のヒントですね! あの独特なニオイもしました」

「大きな進歩だ。あれだけ特徴的ならば、すぐに判明するだろう」

「犯人が呼んでいた方は誰だか知っていますか」

「ああ、あの名前は母上のものだろう。記憶している限りで、貴族に同じ名前の女性はいない」

「ということは、犯人の狙いは王妃様!!」

「そういうことになる。至急、母上に知らせよう」


 レオンハルトさんと部屋を出て通路を戻っていると、途中で小さな罠にかかったザドルさんや近衛達が待機していた。

 合流し、ルリアーナ姫の部屋から出る。そして、その足で王妃様の元へ行って危険性が高まったと伝えた。




 ▲▲▲


「宝物庫に侵入者有り!! 至急出動、を……って、どうなってんだ!?」


 声を上げる兵士の前で、いくつもの宝物がふわふわと宙に浮いていた。


 ▲▲▲



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