001件目 相性最悪の相棒!?
本編、初回。ちょーっと文字数が多いです(-_-;)
5000字は、いっていないのでっ(;^_^A アセアセ・・・
時間に余裕がるときに読んでいただけると幸いです。
衣食住は整っているけど、暇すぎて死にそう!
七日間ずっと外に出たいと伝えているけど、何も変わらない。
「ほかほかに部屋を暖めて」も「ギュンッと空の花瓶を引き寄せて」みても、すぐに飽きる。
この部屋で過ごせと言われているから、と考えた時に思った。
ここで過ごすようにと言われたけど、ここから出るなとは言われていない。配膳係が出て行く時、施錠される音はなかった。それなら、外に行けるんじゃない?
どうしてこんな簡単なことに気づかなかったんだろう。そう思いながら扉に近づき、絶句した。
「……え、なんでドアノブがないの? まさか、こんな重そうな鉄の扉が引き戸ってことは」
なかった。小さな穴に指を入れて開けようとしたけど、思いっきり力を入れたら指を痛めただけ。
ぐぬぬ、と悔しさを滲ませていると。
ガチャリ、と扉が開いた。思わず数歩下がる。
「ふゎ……」
入ってきたのは、二人の男性。一人はがっしりとした体格の、茶色の髪と瞳を持った人。恐らく、地属性の魔法師。
もう一人は、サファイアのような鮮やかな青い髪を後ろに撫でつけ、エメラルドのような輝きが見える瞳を持った御仁。扉が開けられてから入ってきたし、シンプルな装いながらそれを感じさせない気品は絶対に貴族。左手の白手袋も、何か意味があるんじゃない?
ずっと見ていたいと思えるような美しさに見惚れる。
「お初にお目にかかる。私は廷臣法官長のレオンハルト・ヴァランタン。貴殿の要請により、王命を受けこちらへ来た。私が傍にいることが条件で、貴殿を外へ出す」
「ていしんほうかん長……?」
「事件の犯人を捕まえる役と、法の下に罪人を裁く役割を与えられている」
「つまり、警察と裁判官が一緒になったという?」
「けいさつ、という言葉は何かわからないが、恐らく貴殿が想像している通りだ」
すごい役職の人が来たと驚いていると、レオンハルトさんにじっと睨まれた。
「あの、何か?」
「何かとは」
「その……」
「なんだ? 言葉は最後まで発言しなさい」
「は、はい!! 睨まれたくないから、あなたとは一緒にいたくありません!!」
「睨む……?」
まるで教官と生徒のように、ぴーんと背筋を伸ばして発言した。
でもレオンハルトさんは、どうやら睨んでいるという認識がなかったみたい。未だに鋭い眼光のまま、首を傾げている。考えこむように顎に手を置くから、さらに威厳が増したと思う。眼鏡をかけ直す幻覚まで見える。
……はっ。レオンハルトさんが美形すぎて、変な妄想をしちゃった。
「ふむ……私の顔に関しては、すぐには変えられない。外に出たいのならば我慢してくれ」
「いえ、ですからっ」
話を聞いてもらえない。
同じ言葉になってもしっかりと反論しようと思っていたら、半開きだった鉄の扉がノックされる音がした。
レオンハルトさんの付き人の男性が、扉をしっかりと開ける。兵士の人はピシッと背筋を正して言う。
「廷臣法官長様に申し上げます! 王太子様の私物が盗まれる事件が発生! 至急、対応願います!」
「え、何それ。面白そうッ」
うっかり発言をしっかり聞かれてしまい、また睨まれてしまった。
睨まれてもすぐにそらせば、怖くない。
「わかった。至急、兄上の元へ向う。言伝を」
「兄上!?」
「……兄上に、言伝を頼む」
イケメンで役職持ちの王族なんて、レオンハルトさん、スペック盛りすぎでは。
さすがファンタジーの世界だと思っていると、レオンハルトさんがわたしを見た。
「兄上の元へ行ってくる。この部屋を出るのは、またの機会にさせてもらう」
「はい!!」
「なんだ」
「面白そうなのでついて行きます!!」
元気良く挙手をし発言したわたしに、レオンハルトさんは今日見た史上一番の鋭い眼光になる。
「ふざけないでもらおうか。捜査は遊びではない。ましてや、被害者は兄上だ。どん」
「はい!!」
「……なんだ」
「捜査は、初動が大事です! 時間が経てば経つほど解決が難しくなります! なので、わたしも一緒に行けば良いと思います!」
「確かに、一理ある。では貴殿の同行を許そう。私に続きなさい」
「了解です!」
早速、レオンハルトさんを先頭に部屋を出た。
ぐるぐると下る螺旋階段は、それだけで大変だ。でも盗人を捕まえたら、もしかしたら完璧な自由を手に入れられるかもしれない!
軟禁生活からの解放だ!!
成人男性の全力移動に、女性のわたしが追いつけるわけがない。
危うく置いて行かれそうだったけど、レオンハルトさんは卓越した魔法操作ができる。わたしはまるで風の雲に乗っているかのような感覚で、王太子様の部屋まで運ばれた。
わたしを床に下ろすと、レオンハルトさんはすぐさま王太子様に駆け寄る。
ザ・王子様というような、肩の辺りで切りそろえられた紫の髪。大きな丸眼鏡の下にある茶色と緑のオッドアイは、珍しくて思わず見てしまう。
レオンハルトさんのお兄さんだけど、見た目だけならレオンハルトさんの方が年上に見えた。
「ひっ」
じろじろと見ていたことが気づかれてしまったらしい。思わず悲鳴が出てしまうような鋭い眼光が、レオンハルトさんから飛んできた。それどころか、わたしからの視界を遮るように立つ。
レオンハルトさんが王太子様から話を聞いている間に、わたしはわたしでできることをしよう。
この部屋に入ってから、なんか気になるニオイがあるんだよね。なんのニオイだろう。
わたしはスンスンと鼻を動かしながら、そのニオイの元を捜す。
鼻を前に突き出して部屋の中を歩き回っていたら、急に身体がふわりと浮いた。そして、レオンハルトさんの付き人の男性の隣に戻される。
「ここは盗難事件があった現場だ。同行することは許可したが、現場を荒らす事は許さない」
「レオンハルトさん! このニオイ、気になりませんか」
名前を呼んだら、隣からわたしを案ずるような気配を感じた。
あ、もしかして名前を呼んじゃダメなやつか! そうだよね、レオンハルトさんって王族だもんね。名前を呼んだら、不敬だって沙汰が出るかも。
ビクビクとしながらレオンハルトさんを見ると、王太子様の所からこちらへ来ていた。
「ニオイ、というのは? どこが臭い?」
「具体的にはわかりません。ただ何となく、この部屋に入った時に臭いなぁって」
「どんなニオイだ」
「あれ、わかりませんか? こう、甘く焦げた、煤けた油のような独特な臭さというか……。どこも燃えていないので、犯人の残り香ですかね?」
わたしの言葉を受け、レオンハルトさんがニオイの元を探ろうと鼻を動かす。でも、首を傾げた。
「貴殿は鼻が良いのだな。特技があるのは良いことだ。是非とも、その特技を活かしてもらいたい」
「えぇと……歩き回っても良いってことですか?」
「早期解決のためだ。兄上から話も聞いたし、許可する」
「わかりました。頑張ります」
わたしは早速、積極的に鼻を動かす。四つん這いになってレオンハルトさんを驚かせたけど、自由のためには恥など捨てる!
「……ん? ベッドの下?」
ニオイの元を探っていくと、王太子様のベッドの下から強いニオイがしたような気がした。
確かめるため、ベッドの近くでもっと顔を下げる。
「何かが逃げた! 追うぞ!!」
「うわっ」
言うや否や、レオンハルトさんはまた風魔法でわたしを運ぶ。突然浮いて驚くけど、それ以外は繊細な魔法操作で怖くない。
驚くべきことは、レオンハルトさんは詠唱をしていないってこと。これぐらいの魔法操作なら、無詠唱でできるってことかな。
そんな風に思っていると、レオンハルトさんが足を止めた。後ろから来ていた付き人の男性も追いつく。
「駄目だ。見失った」
がっくりと項垂れるレオンハルトさんが魔法を解き、床に下ろされる。
王太子様の所へ戻るかと呟いている姿を見て、思いつく。
レオンハルトさんはきっと、ブラコンとまではいかないけど王太子様のことを好きなはず。それなら、ここでわたしの力を示せば、この先の自由は約束されたようなもの。
「はい!」
「なんだ」
「わたしが犯人を見つけ出します!」
「どうやって? もう痕跡は消えた」
「ふっふっふ。わたしを誰だと思っているんですか。オノマトペを使いこなす希代の魔法師ですよ? 期待してくれて良いです」
「? それは、「きたい」という言葉をかけているのか?」
「こ、細かいことは良いんです! 見ていてください!」
わたしは、喉を押さえて発声を確認する。詠唱するなら、綺麗な声じゃないとね!
「クンクン、クククン。このニオイはどこから来たの?」
「まさか、それが詠唱か?」
レオンハルトさんが疑っている。本当は、もっとちゃんと言うのかな?
まぁ、他の人のことはわからないから、わたしはわたしの方法で。
詠唱後、王太子様の部屋でしていたニオイが強くなった。このニオイを辿れば、自ずと犯人がわかるはず。
なんて、ぬるゲー。これで自由をゲットだ。
「さぁ、こっちです! わたしについて来てください!」
詠唱によって強くなったニオイを辿り、先陣を切る。その姿はまるで、某ゲームの勇者のよう。レオンハルトさんが魔法使いで、付き人の男性は格闘家かな。
勇者は常に仲間を守り、敵に痛恨の一撃を与えるんだ!
——なんて、思っていたこともありました。
「……痕跡は辿れず、か」
「はい……。すみません」
勇者になれずに勇み足。
ニオイを辿り始めてからすぐ、ニオイの元は外へ出ていってしまった。室内なら追えたニオイも、外に行かれては無理だ。天然の風もあるし、ニオイが拡散してしまう。
レオンハルトさんからは、責めるような言葉はない。でも態度が……眼光が、鋭くなっている。
あんなに余裕だと見せたのに、失敗してしまった。あのニオイを辿れなきゃ、犯人を特定できない。
犯人が特定できないということは、わたしは自由を勝ち取れなかったということ。部屋まで送ると言われても、否とは言えなかった。
わたしを先頭に、螺旋階段をぐるぐると登る。鉄の扉の前まで行くと、レオンハルトさんが懐からお札のようなものを取り出した。
すると、閉まっていた鉄の扉がふわりと開く。なるほど、そういう仕組みか。それならわたしが開けられなくて当然だ。
部屋に入る前に、振り返る。
「……あの、最後に教えてもらいたいです。王太子様は、何を盗まれてしまったんですか」
「私が貴殿を焚きつけたようなものだ。貴殿には伝えておこうか。兄上が盗まれたのは、五年前に病気で亡くなった婚約者殿からもらったカフスボタンだ」
「えっ……」
聞いてしまったことを後悔する。好奇心で参加して良い捜査じゃなかった。
「あ、あの……ごめんなさい。そんな大切な物だったなんて……」
「貴殿が落ちこむことではない。兄上も、亡くなった婚約者殿をそろそろ忘れろということだろうと話していた」
そう言うレオンハルトさんは、悲しそうな顔をしているように見えた。
「はい!」
「なんだ」
「わたしが、犯人を捕まえます!」
「無理だ。もう痕跡も追えない」
「いえ、やってみせます。やらせてください! 好奇心で参加したこと、後悔しているんです。どうか挽回させてください」
「部屋から出たいだけだろう」
「いいえ! レオンハルトさんのために犯人を見つけたいんです!」
「私の? そこは兄上のためじゃないのか」
「レオンハルトさんが、悲しそうだったので!」
「……そうか。それなら貴殿を臨時の廷臣法官補佐に任命する。共に捜査し、犯人を捕らえよう」
一瞬。ほんの一瞬だけ、レオンハルトさんの表情が緩んだような気がした。
幻だったかもしれないその表情を見ただけで力が湧いてくるのは、気のせいかな。
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「わあああっ。で、出たー!!」
夜の見回りをしていた兵士が、悲鳴を上げて腰を抜かす。四つん這いになって逃げる兵士の背後で、ゆらりと揺れる煙のような人影が見えていた。
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