閑話休題① パジャマパーティー!!
軟禁生活が終わり、部屋が移動になった。
でも、その場所はレオンハルトさんの私室の隣……。つまりは、王族の居住区域なわけで。
「アンネ!! 女子会に参加しなさい!!」
「おねえちゃん、あそぼー?」
ルリアーナ姫とロジェナちゃんが、わたしの部屋まで呼びに来た。
姫様の部屋で、パジャマパーティーをするらしい。開催地についたら、さっとネグリジェに着替えている。
わたしは部屋着がパジャマなんだけど、それを姫様が許してくれるわけもなく。
「アンネ!! あなた、素材は良いのだから、もう少しきちんとしなさい!」
ぷりぷりと怒りながらも、姫様は衣装部屋の中からフリルがたっぷりついているネグリジェを持ってきた。ベッドの上に並べられたのは、ピンク、クリーム色、ペールグリーンの三種三様なネグリジェ。
姫様はわたしの身体に当てて似合うかどうかを見てくれている。
「……」
「アンネ。何か言いたいことがありそうね?」
「えぇと……姫様は気づいていますか? わたしと姫様の体型の違いについて」
「あなたは背が高いじゃない。それぐらいなら、問題ないと思うわよ」
いや、姫様はわかっていない。胸の部分は、身長なんて関係ないと言うことを。
成長期の姫様に合わせて作られた、かわいらしいネグリジェの数々。それは、姫様が着るからこそポテンシャルを発揮する。
とりあえず着てみなさいと、ペールグリーンのネグリジェを渡された。衝立の奥に追いやられ、渋々着替える。
うん。短いよね、絶妙に。
「これが結果です。姫様、わかってもらえましたか」
「おねえちゃん、すごぉい! あんよ、ながいねぇ!」
「……寝るだけだし、問題ないわ」
ロジェナちゃんは感激してくれたけど、姫様。目をそらしたこと、見逃してないですよ?
って言いたかったけど。確かに寝るだけなら問題ない。
「さぁアンネ。こちらへいらっしゃいな。今日の議題を発表するわ」
「(今日って事は、またあるのかな)」
「ずばり、アンネはレオンお兄様のことをどう思っているのか!!」
ベッドへ行くと、姫様がノリノリで発表してくれた。そんな姫様を褒めるように、ロジェナちゃんが笑顔で手を叩いている。
「ずばりも何も、上司と部下ですね」
「お母様公認の! 部屋移動! これは、絶対に何かあるわ!」
「いえ、何もないですよ」
「ねぇ、おねえちゃん。みてー。クマちゃんのおともだちー」
一人盛り上がっている姫様に飽きてしまったのか、ロジェナちゃんが持っていた縫いぐるみを見せてくれる。
こ、これは、断定するにはかなりの推理力が必要だ……!!
ロジェナちゃんがキラキラとした目で持っているのは、恐らく動物。あのクマちゃんの友達ということならば、森の仲間かな?
左右で長さが違うけど、耳が長い。これは。
「可愛い兎さんだね」
「でしょー? ロジェナ、がんばったのー」
はい、優勝。
にこにこと笑っているロジェナちゃんが可愛いすぎる。
貴族令嬢って刺繍をするって聞くけど、ロジェナちゃんぐらいの年から針と糸を持つんだね。
「ちょっと、アンネ!? 聞いていますの!?」
「え、えーと……」
「ですからっ、レオンお兄様との関係ですわ!!」
「それは、先程も伝えたように」
「年頃の男女が二人! 共に危機を乗り越えてッ!! 何も起きないはずがありませんわ!?」
「何もなかったですよ? それに二人きりじゃな」
「アンネ!! まさかあなた……レオンお兄様と一緒にいて、何も思わなかったと!?」
両肩を揺らされ、ものすごく文句を言われている。
姫様はブラコンかなって思っていたけど、意外と良心的?
「ひ……姫様、それ以上、揺らされると……」
「あら、ごめんなさい? わたくしとしたことが、少々興奮していまいましたわ」
責め苦から解放され、思わずベッドに倒れる。
すると、ロジェナちゃんが同じように横になった。
「おねえちゃん、どうしたの? おなか、いたいいたい?」
「ううん、違うよ。心配してくれてありがとう」
ロジェナちゃんの頭を撫でたい衝動に駆られる。思いっきり、ぐりぐりと頭を撫で回したい。
心を落ち着かせるために身体を起こして深呼吸をしたら、姫様の様子がおかしいことに気がついた。
「姫様。何か、悩みでも?」
「なっ、べ、別に、何でもないわっ。レオンお兄様には相談できないだけでっ」
「わたしで良ければ、お話聞きますよ?」
「そ、そんなに聞きたいのなら相談してあげますわ! アンネ、あなたはレオンお兄様をどう攻略するおつもり!?」
「えぇと、ですからそれは……」
「自分に厳しく他人にも厳しい方に、手紙はご迷惑かしらっ!?」
おぉっと、これはもしかして、恋愛相談かな? 確か姫様、隣国に嫁ぐ予定だって言っていたっけ。
「姫様は、どうしたいですか」
「……アンネにレオンお兄様からいただいた髪飾りを取り返してもらって、思ったの。王族としての義務ではなく、人としてきちんと対応しようと」
「良いと思いますよ。人と人を繋ぐのは縁と絆です。婚約者の方とはお会いしないんですか」
「ゼルヴァン様はお忙しくて、婚約してから一度もお会いしていないの」
「それならば、姫様の好きなものを書いてみたらどうでしょう?」
「わたくしの? そんな内容の手紙、ゼルヴァン様が読むとは思えないわ」
「そんな事ないと思いますよ。婚約者の事は知っておいて損はないですから。それに、姫様の好きなものを書いてから、お相手の好きなものを聞けば教えてもらえると思いますよ」
「な、なるほど……ッ。アンネ、あなた策士ね」
姫様は、早速書く内容を考えているのかな。頬が上気して可愛らしい。
「……アンネ。あなた、今何を考えているのかしら」
「姫様は可愛らしいな、と」
「なっ……あ、あなたに褒められたって嬉しくないですわっ」
プイッと、真っ赤にした顔をそらされてしまった。うん、姫様もやっぱり可愛い。
ニヨニヨが止まらないでいたら、ロジェナちゃんがつぶらな瞳を向けてきていた。
「おねえちゃん、ルリおねえちゃんとケンカは『めっ』だよ?」
まるでロジェナちゃんがわたし達の年上のように、腰に手を当てて人差し指を向けた。かと思うと、わたしと姫様の手を掴んで強引に握手させる。
「ケンカをしたら、ごめんなさい、だよ?」
「うん、そうだね。姫様、からかってしまいすみませんでした」
「わ、わたくしの方こそ……大人気ない態度でしたわ」
「これで、なかなおり! おねえちゃんたち、いっしょにねよー?」
ロジェナちゃんに手を引かれ、ベッドへ横になる。真ん中にロジェナちゃんがいて、すでに眠そうな顔をしていた。
もう耐えられなくて、ロジェナちゃんの頭を撫でる。柔らかくて猫っ毛な髪が、ロジェナちゃんらしい。
「時々、どちらが姉かわからなくなりますわ」
「ロジェナちゃん、大人ですもんね」
姫様も寝ることにしたのか、仰向けになった。
「……アンネは、レオンお兄様とのこと、本当に考えていないのかしら」
「レオンハルトさんは、王族ですからね。庶民のわたしが考える事じゃないですよ」
姫様からの質問に答えた。でも姫様は、何か言いたそうな顔をする。王族だけが知る、何かがあるのかな。
「……アンネ。これだけは覚えておいてちょうだい。あなたは、星渡人だと」
「え、えぇ。それは王妃様からも言われました」
「今は、それだけで良いわ。レオンお兄様と一緒にいたら、絶対に考えを改めるから」
そう言いながら、姫様も目を閉じてしまった。ロジェナちゃんのようにすぐ寝ちゃうかはわからないけど、これでパジャマパーティーも終わりってことだよね。
王族と並んでいても意外と寝れた、翌朝。
これからレオンハルトさんの隣に立つ者として自覚するようにと、姫様から保湿クリームをもらった。
次より、二章へ移ります。
よろしくどうぞ。




