~踏み出す2人、既知の向こう側へ~
夕闇迫る山道に、サイドカー付きのバイクが奏でる重厚な鼓動が鈍く響く。
中腹の少し広くなった場所でバイクを止めると、先ほどまで自分の両手をまじまじと見ていたニナが神妙な面持ちで視線を眼下へと変えた。
「なんだ、浮かない顔をして。もうホームシックか?」
「そんなわけないでしょ。むしろ、ワクワクが止まらないわ」
「そうか」
強がるニナに、ガルズは口角を上げた。
その2人の視線の先、遥か裾野には砂粒のような村が落ちる夕陽に混ざり始めている。
「……大きいようで、全然小さいのね。ほんとちっぽけ……」
ニナからは笑みが消え、無表情でぼーっと景色を眺めていた。
「嫌なこともあっただろうが、故郷を忘れるな。いざという時、それがお前の根になる」
「私の根っこ……たしかに、パパもいるしね」
サイドカーを一瞥してから祈るように胸に手を当てて目を瞑るニナを横目に、ガルズはグローブを締め直す。
「さて、休憩も終わりだ」
「ねえ、ガルズ。どうして——」
ニナはガルズに問いかけようとして言葉を飲み込む。
どうして旅をしているのか、どうして輪廻転生を繰り返してもなお旅を続けられるのか。
「ん? どうして?」
「……どうして、急いでいるの?」
しかし、ニナの口から出たのは全く違ったものだった。
ガルズとの距離感を測りかねた彼女は、まだガルズが抱えているはずの何かに踏み込めないと一歩引いた形になる。
彼は彼女の様子に気付いてか気付かずか、小さく笑った。
「峠を越えれば、町がある。寒くなる山で野宿は御免だからな。それとも、寝袋1つで俺と抱き合って温め合うか?」
「にゃっ!? そ、そっか! じゃあ、早くしないとね!」
焦るニナをしり目に、バイクのエンジンは再び咆哮する。
こうして、徐々に赤らむ陽光に背中を焼かれながら、2人の轍は次の場所へと伸びていった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本作は短編読切版として公開しましたが、今秋〜冬頃を目標に本作の内容を再構成し、人物描写やエピソードも加筆した長編版の連載を予定しています。
長編版では、村での出来事やガルズ、ニナ、村長、エペルたちの描写をもう少し掘り下げつつ、その後の2人の旅も描いていく予定です。
開始いたしましたら、活動報告やこの後書きにてリンクを設置しお知らせいたします。
もし『ガルズとニナの旅の続きが読みたい』と思っていただけましたら、ぜひブックマークや評価、感想などでこの短編版を応援いただき、二人の出発を見守っていただけますと幸いです!




