第37話 VSラウド
な、な、な、なにぃーーーーーーーーーーーっっ!??!????
なっ、なにがどうなってる!!
なんで! なんでコイツが生きてるんだ!!???
「良い顔するじゃないか、クソ兄貴」
「なっ、何故……どうしてお前が生きている!?」
驚いているのはラウドだけじゃない。
ソード――ソウ・ダクヴェルムを案内したマリーナも同じく驚愕していた。
部屋に入ったと同時に顔が変わる。
そしてその顔は、ファントムに似た部分が多い。
さらには「クソ兄貴」発言。
驚くなというほうが無理な相談だ。
「親父から聞いたぞっ!? お前はダクヴェルム家を着の身着のまま追放されたって!! 親父は言ってた! 数日後にはヴェルムの森かどこかで野垂れ死んでるだろうって!! なのに、それなのにどうしてお前がっ!?」
「足掻いて藻掻いて必死になって生きた。生き延びて、名前をソード・ダリアスと偽った。それだけの話さ」
「ソード・ダリアスだと? ってことは、俺の計画を台無しにしたのは、ソウ! お前だったのかっ!?」
「計画ねぇ。家族同然の領民を酷い目に遭わせてまで達成させたい計画ってなんだよ」
家族同然。
その言葉にラウドは噴き出した。
「はあっ!? 領民が家族ぅ? ひゃははっ! バカも休み休み言えよ。いいか、領民だろうがそうでなかろうが、この世に存在する人間の全ては俺たちの格下、つまりはゴミ同然なんだよ」
驚きっぱなしのラウドだったが。
すっ……と冷静な顔つきに戻った。
「ゴミをどう扱おうが俺の勝手だろ」
サティはマリーナの傍に付き、両者のやり取りを見守っている。ラウドはそこに視線を向けた。
「おや? 随分とかわいい子がいるじゃないか。マリーナもいいけどそっちもいいね。クク、血を分けたよしみだ。その子を置いてくなら命だけは助けてあげるけど……どうする?」
終わったな、とサティは確信した。
そして確信と同時に呆れの溜息を漏らした。
「いい加減にしろよ、クソ野郎」
ああ、こんなにも。
こんなにも歪んでいたのか、俺の兄貴は。
幼少の頃、俺をイジメ楽しんでいた。
そしてその矛先は……。
いつしか、領民にまで。
「徹底的に痛めつけてやる」
「ははっ! 痛めつけるだと? お前ごときが誰に口効いてる。ちょっとキツイ生活生き延びたからって図に乗るなよ~? そもそもそんな足手纏い二人もつれてさ、本気で俺とやり合う気あんの?」
ラウドは勘違いしてる。
サティは戦力的に不足はない。
そしてマリーナちゃんには相応の役割がある。
つまり、どちらも足手纏いではない。
「御託はいいからさっさと来い。お前の全部を叩き潰してやる」
「……影魔法の真髄を見せてあげるよ。泣いて後悔するなよ?」
ラウドが詠唱を開始する。
すると、部屋の絨毯に円形の影が出現。
それらはズズズ……と盛り上がり人形となった。
「このシャドーズは俺の意のままに動く。操作性を考慮しなければ100体、考慮するなら10体は出せる。しかもその強さはC~Bランクモンスターにも匹敵するんだ。ま、俺の魔力が強すぎるせいだけどね。要するに、お前は一人でBランクの冒険者パーティ二組を相手取らなければならないということだ。もちろん後方からは俺の魔法が容赦なく飛んでくる。つまりは詰みってこと」
「……伝わらなかったか? 御託はいいと言ったんだ。同じことを二度言わせないでくれ」
「……ッ、あ~~~、決めた。殺す、お前はこの場で惨たらしくグチャグチャに殺してやるからな。行け、シャドーズ!!」
無数の影が一斉に飛び掛かる。
もちろんターゲットはソード。
だが、その全てが一瞬で掻き消えた。
「……えっ」
「えっ、じゃないよ。次は? 宣言しただろう。お前の全部を叩き潰すと。早く次の魔法を出すんだ」
バカな。
何が起きた。
俺は操作性を加味して10体しか出さなかった。
シャドーズは数が少ないほど強くなる仕組み。
なのにそれが一瞬で消える?
そんなバカな……。
「なにしてる」
「はっ!」
「早く次の魔法を出せ」
「ぐっ! クソガキが……ッ!」
一歳しか変わらないのにクソガキとは、これ如何に?
「泣き喚くことしか出来なかった雑魚の分際で生意気なんだよ!」
次のシャドーズは一体だ!
これなら俺とほぼ同じ強さ!!
どう足掻いても対処できるワケ……。
その影も一瞬で消えてしまった。
「……はあ?」
今の影は俺とほぼ同格の強さだぞ?
なぁああああんでそれが触れるだけで消え……えっ?
触れるだけ?
それってまさか!
「まさか、お前は闇属性を獲得しているのかッ!?」
待て待て待て待て、そんなことってあるか?
人生の良し悪し、その全ては5歳で決まる!
5歳の時に属性鑑定の儀を受け、獲得属性によって身分が決まると言ってもいいくらいだ! そしてソウの獲得属性は前代未聞の【無し】……ッ!!
「あり得ない。属性【無し】のお前が、なんで闇魔法をそこまで使いこなせるんだ……。もしも闇魔法をその精度で操るとなると、その強さは親父を上回る……。そ、そんなバカなこと認められるかッ!!」
「早く次の魔法を出せ。お前の持ち得る全てを叩き潰す」
「ぐうぅ……ッ!!」
まさか追放されるようなクズにこの魔法を使うことになるとは……。
「は~あ。そこまで言うなら見せてあげるよ。影属性最強の魔法をね」
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