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第36話 再会

「あ……え?」


 あ、危なかった……。

 もし走り出してなかったら。

 それを考えると最悪な気分だ。

 この子が無事で本当に良かったよ。


「ソード様!」


 あとからサティが走って来た。

 サティは事情を呑み込めずにいるみたい。


「何が起きたのですか!?」


 少女もサティも。

 そして少女の両親も。

 俺以外の全員が混乱していた。


 だが、魔法の爆発は【虚無】の力でかき消せた。

 少女は助かった。

 今はそれを喜ぼう。


#

 

 俺は起こったこと(影から魔法が出てきて爆発しそうになったこと、なんとかそれを止めたこと)を説明した。

 

 助けてくれた礼をしたい。

 そう言われ、俺たちは彼らの住まいを訪れた。

 もちろん礼を受け取るために訪れたわけではない。

 俺には俺なりの考えがある。

 

 豪勢な建物が並ぶ中、ところどころにボロい家屋がある。

 招かれたのはそんな家屋の一つだった。


 そして全員が腰を落ち着かせるなり、

 ダァンッ!!

 もの凄い勢いで木机が叩かれた。


 少女――名はマリーナという。

 マリーナの父・ディーノさんがキレたのだ。


「もう我慢できんッ!! 娘をここまでゴミのように扱われて黙ってられるか! やるぞ、俺はやるっ! 闇の権力者だかなんだか知らんが、ぶっ飛ばしてやる!!」


 四角い顔立ちの熱血漢。

 でも見た目に反して髪は真っ白。

 よっぽど苦労してきたのだろうな。


 怒り狂う父の横で。

 同じく白髪の美人さん――母・ネロさんがマリーナを抱きながら涙する。


「ああ、どうしてこんなことに……」


 ディーノさんは「娘をここまでゴミのように扱われて」と口にした。身なりから察するに、彼女は奴隷なのだろう。

 

 マリーナちゃんはかなりの美人。

 のんのん男の証言もある。

 照らし合わせれば、この子がファントムのお気にでも不思議はない。ならば――。


「この件は俺たちに任せて下さい。こう見えてそこそこ腕が立つんです。さっきだってマリーナちゃんを助けられたでしょう?」

「し、しかし……」

「安心してください。ディーノさんの気持ちは俺も分かります」


 ディーノさんは「え?」と目を見開く。

 そして「まさか」と。


「まさか、君も闇の権力者に苦しめられた人間なのか?」

「詳しい事情を話すつもりはありません。とにかく、この件は俺に一任して頂きたい。闇の権力者は俺が叩き潰します」


 力強く宣言したのは自身を鼓舞するため。

 あの一瞬。

 マリーナちゃんの影から魔力が出た時。

 あの時、俺は恐怖した。


 あの魔力は純粋なラウドの魔力。

 独立した影魔獣からは感じられなかった、色濃いラウドの気配がこびりついていた。


 俺はその気配によって過去を思い出した。

 そして恐怖してしまった。

 身体に染み付いた恐怖を払拭すべく、俺は再度力強く宣言した。


「いいですか、ヤツは必ず俺が地獄に叩き落します」

「ソード様がこう仰っているのだ。お前たちは大船どころかノアの箱舟に乗ったつもりでドンと構えていればいい」


#


 マリーナの命の恩人。

 どうにかして恩返しをさせてくれと頼まれたが断った。


 奴隷はそのほとんどが貧民。

 苦労人から施しを受け取るほど俺は飢えていない。


 と思ったら。


「実は私、ファントム様から金貨を頂きましたのよ。それと十日間の自由も。見て下さい、この腕の傷」


 促されたが、それはその傷跡には一瞥もくれなかった。代わりに一つ質問する。


「やはり君はファントムの奴隷だったんだね?」

「えぇ、そうですが……。この傷は葉巻を押し付けられた時に出来たもの。そのお詫びに金貨と自由期間を頂いたのです。まぁ、もうすぐでまた奴隷生活なんですけど。でもまだ時間はあります。お礼くらいなら……」

「その金貨は受け取らない。というより受け取れないかな。その代わり、金貨以上のモノを渡してもらうよ」


 マリーナは困った。

 金貨以上のモノ。

 そんなモノあるわけがない。

 そう思っていたから。

 

 しかしマリーナは持っていた。

 何故ならマリーナはファントムのお気に入り。

 奴隷という弱者は心が折れている。

 つまり反旗を翻すハズがない。

 油断していたファントムはお気にの奴隷にだけ(・・)は拠点を隠さなかった。結果、それが仇となる――。

 

#


 ――遡ること数日前――


 影魔獣の消滅反応。

 さらにはレイヴンの無反応。

 これらが意味することは明白だった。


「まさか影魔獣とレイヴンを投入しても返り討ちにされるとは」


 ラウドは歯軋りした。

 その歯茎からは血が滲んでいた。

 さらに、握り拳からも血が滴る。


「こんな屈辱は生まれて初めてだよ。まぁいいや。あの子の影には爆散する魔力を仕込んであるからね。近い内に見られる爆破を肴に美酒に酔うとしよう」


 そしてそのあとで。

 直々にハルメッタへと赴こう。

 自らがハルメッタの街へと繰り出す。

 ラウドからしてみれば屈辱極まりないことだ。

 だが……。


「気に入らないヤツは全員ブチ殺せばいい。それに、俺は何をしても許される身分だからね。――ふふっ、ソードとやらの命乞いを見れば、少しは溜飲が下がるかな?」


#


 数日後。

 大宮殿の一室が二度ノックされた。


 ラウドは不機嫌に「入れよ」と応じた。

 不機嫌なのには理由がある。

 それは爆破を見られなかったから。

 

 理由は不明だが、起爆の時刻に爆破が起こらなかった。

 そのせいで、ラウドは溜飲を下げられずにいた。




 ああ腹立たしい。

 ここ最近ずっとこんなことばかり。

 なんで思い通りにならない?

 俺はダクヴェルム家の次男。

 要は神に選ばれた存在なんだ。

 それなのに、どうして!!


 そんな折、扉がノックされる。

 ラウドは閃いた。

 この苛立ちはここで収めるとしよう!

 つまり入室者を殺してしまえばいい。

 そう思うと、不機嫌が一瞬で吹き飛んだ。


「どうした? 早く入っておいで。今の俺は気分がいいからね。そぉ~だ、金貨をあげよう。それも10枚! 100万ルドーだ、欲しいだろう?」


 召使いにせよ奴隷にせよ。

 呼び方が違うだけで所詮は下僕。

 それがラウドの考えだった。


「じゃあ、お言葉に甘えて。失礼するよ」


 俺はサティの擬態魔法で召使いに扮していた。

 それを解除し、元の顔に戻る。

 そして室内に踏み入ると。


 ラウドの表情が石みたいに硬直した。

 かと思うと、数瞬後にはグシャグシャになった。

 全身から汗が吹き出し、驚きのあまり鼻水とヨダレまで垂れ流していた。


 正直言って、ラウドの驚愕の表情はすごく面白かった。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

面白い、続きが気になる、期待できそうと思って頂けた方には是非、ページ↓部分の☆☆☆☆☆で評価してほしいです。☆の数は1つでも嬉しいです!そしてブックマークなどもして頂けるとモチベーションの向上にも繋がりますので、なにとぞ応援よろしくお願いします!!

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