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第16話 ハルメッタの街

 それからさらに時が流れ――。


「はぁ、はぁ――。流石はソード様。もう魔法の扱いは完璧にございますね」

「収納した物体の増減はまだコントロールできないけどな」


 多分、この森にやってきてから半年は経過した。

 拠点が街道を外れていたので、人が通るのを見ることはほとんどなかった。一度、道に迷ったハルメッタからの商人を見かけたくらいだ。その時はサティに対処してもらった。


 追放された俺がどこで何をしているのか。

 復讐達成のために、その情報が漏れ出るリスクを避けたかったから。

 

 ところでサティだが、なんと擬態の魔法まで扱えるらしく、


「私が道をご案内しますよ」


 と商人を案内した際には銀髪赤眼の美少女へと変貌していた。その姿のほうが似合ってるぞと褒めると、それからはずっとその姿のまま。


 そしてルドーだが、これはかなり溜まった。

 ちょっと豪華な宿屋でも半年は泊まれるかも?

 その額なんと、15000ルドーだ。

 

 途中からは一日100匹くらいのペースでモンスターを倒していたので、かなり稼げた。たまに拾い忘れることもあったが今となっては小さなことだ。

 

 ちなみにサティなのだが。

 商人を正規ルートに案内する際、ちゃっかりルドーを要求していたそうで。

 どれくらい要求したのかを問いただしてみたところ、「5000にございます」とか言ってた。

 

 いくらなんでもぼったくりすぎだ!

 そう思ったのだが、対する商人はというと「命の恩人ですからそれくらいお安いものですよ。この度は本当にありがとうございました」と泣きながら感謝していたらしい。


 正直どこまでが真実かは分からない。

 けれど泣いてたってところだけは本当な気がする……。


 なにはともあれ。

 これにて準備期間は終了。

 ようやくハルメッタの街へと繰り出せる。


「準備はいいか?」

「はい。手抜かりは一切ございません。それに必要なものは全てソード様の虚無空間に収納されておりますから」

「それじゃあ行くとするか。ハルメッタの街へ!」


#


 ――ハルメッタの街――


 ハルメッタの街の少し手前。

 林道部分へは、森から五分程度でやって来た。

 というか飛んできた。

 サティには羽があるから。

 目立たないよう低空飛行を心掛けさせたので、人目にも触れてないハズ。


「おやおや……。旅の、御仁ですかな?」


 街への入り口は八ヵ所あるそうで。

 ここは南門になるのだそう。

 そこには二人の兵士がいたのだが……。


 なんか、聞いてた話と違う。

 ハルメッタの兵士といえば勇猛果敢を体現したかのようだと聞かされていたのに。目の前にいる二人からは疲れの色が伺えた。


 なんというか、目に生気がない。

 声にも元気がないし。

 もしかしたら連続的な勤務が続いているのかもしれないな。


「実は冒険者志望でして、あちこちを旅してるんです。最近はヴェルムの森を観光していたのですが、行きすがりの商人に街のことを聞きまして。――しかし耳にした話とは少し異るようですね。元気がないようですが、なにかあったのですか?」


 行きすがりの商人というのは、例の5000ルドーぼったくられた哀れな御仁のことだ。サティがハルメッタの街のことを聞いて、それを俺に伝えてくれた。


 その時は「以前よりかは落ち着いたが、活気のある街だよ」とのことだった。


 しかし――。

 門の奥、行き交う街人や店主。

 彼らもみな、門番と同様の表情を浮かべていた。

 街が疲弊している。

 そんなふうに感じた。


「なにかあったのか、ですか。まぁ、あったと言う他ありませんな。……悪いことは言いません。迂回するなりして、近隣の『ジャラッダ』へ向かわれるべきでしょう。この街は今、疲れ切っていますから」


 ジャラッダというのはハルメッタの北東に位置する町だ。ダクヴェルム領にしては治安が悪く、詐欺や盗みが横行している。


 俺に虐待を加える時。

 父はよくこの町のことを口に出しては憤っていた。

 そして決まってこう続けるのだ。


「今からでもお前を捨ててこようか」


 それでもそれを実行に移さなかったのは。

 ストレス発散の道具を手放すのが惜しかったからなのだろう。


「随分な物いいですね。ジャラッダといえば、最近ますます治安が悪くなっていると聞きます。そんな町へ向かえだなんて信じられません」


 サティがもっともらしい意見を述べる。

 すると門番は「では、お好きにして下さい」と道を譲った。


 もはや反論する気力すらない。

 そんな雰囲気である。

 一体全体この街で何が起きているのか?

 まずはそれを調べてみよう。

 もしも困ってる人がいるのなら。

 もしかしたら、俺の虚無属性の魔法が役に立てるかもしれない。


 門を潜り抜け、街の土を踏む。

 まっさきに感じたのは陰の気だ。

 空気が淀んでいる。

 そんな気がした。


「サティ、魔力探知的なことはできるか?」


 魔力探知。

 昔読んだ本によると、それは高等技術。

 

 かなり難易度の高い技術だ。

 けれどサティなら習得しているかもしれない。

 なんたって聖書には邪神と記されるほどに強力なモンスターなのだから。


 すると思惑通り。


「えぇ、習得しております。私の魔力で街全体を覆えば、ある程度の事情は分かるかもしれません。ですが、一つだけ問題があります」

「それはどんな?」

「魔力探知は魔力を発することで遠くの声を盗み聴いたり、生物の位置を特定したりする技術。当然ですが、この街の住民全員がそれに当てられることになります」

「……なるほどね。どう見ても疲弊しきったこの街でサティほどの存在が魔力を解き放つ。そんなことをしたら最悪の場合、人死にが出るかもね」

「そういうことです」


 話しながら歩いていると宿屋が見えてきた。

 俺は宿の手前で立ち止まり、周囲を見渡した。

 それからサティに問いかけた。


「ところで、サティの擬態魔法なんだけど、アレは他人にも使えるの?」

「はい。可能にございます」

「なるほど。やっぱりサティは優秀だな」

「……っ!! お褒めに預かり光栄です!」


 ハルメッタの街はかなり大きい。

 ともなると、ダクヴェルムの人間がいてもおかしくはない。


「その擬態魔法、いつでも発動できるように心がけておいてくれ。もしも俺が合図したら瞬時に発動して欲しい」

「では、ソード様のお気持ち一つでオート発動するようにしておきます」


 さらっととんでもないことを言うサティであった。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

次話は18時頃更新予定です。

引き続き応援よろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ソウが幼少時から地獄の痛みを味わってきてそんな子が1話から読んでこれから何処まで痛めつけられるのか、本当魔法使えないままユニークでも覚えるかと思いきや、実は地獄の長年の経験でとんでもない属…
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