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第15話 修行開始

 俺はサティの指示に従い魔法の羽根ペンを走らせた。

 

「それでは、あとはよろしくお願いします」


 俺は困窮した。


「お願しますって……。ここから先、俺は何をすればいいんだ?」

「先ほど申し上げた通り、その羊皮紙を燃やすだけにございます」


 あまり難しく考えても仕方ないか。

 

 俺は精神を集中させる。

 十秒ほど経つと、やはり風が凪いできた。

 そして魔力が駆け巡る感覚。


 来たっ!

 そう思うと同時に、放出のイメージをする。

 すると思い通り、


 ブゥォオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!


 俺が取り込んだ以上の炎が放出された。


「無限ってのがいまいちピンとこないんだけど、とりあえずはこの羊皮紙が燃え尽きるまで炎を出し続けてればいいんだな?」

「はい。とはいえ、普通はそれが不可能なのですが……」


 サティは苦笑した。

 不可能なことをあっけからんとした顔で言ってのける規格外の少年。この少年がどんな人生を歩むのか。どんな人生だろうと、最後までそれを見守りたいとサティは思う。




 全力!!

 イメージするのはそれだけだった。

 そして全力をイメージして炎を出し続けていると。


 やがて、空気が揺れ始めた。

 さらには地響きまで。


「くっ、う……。なんて魔力量……。当てられるだけで頭痛がします。流石はソード様」


 いまいち実感が湧かない。

 けれど、凄いことが起きているのは理解できる。


 さらに火力を上げる。

 すると、瓶が割れるような音が響いた。


「……っ!?」

「契約が破壊されました。もうすぐにその羊皮紙も燃え尽きるでしょう」


 その宣言通り。

 数秒後、俺の手にする羊皮紙は灰になった。

 そして風に舞って、完全に消えた。


「これで契りは上書きされました。これからは従魔として尽くしてまいりますので、なにとぞよろしくお願い致します」

「ああ。俺のほうこそ、よろしくっ!」


#


 魔力の操作練習。

 その一番手っ取り早い方法が実戦とのこと。


 というわけで俺は、スライムやゴブリン相手に手当たり次第に魔法攻撃を放っていった。もちろん倒せればそれでいいというわけじゃない。


 放出と吸収。

 この二つの要素を完全にコントロールできるようになるまで、いろんな強さの魔法攻撃を繰り出す。


 同時に、相手の攻撃は吸収する。

 だけどこれが滅茶苦茶に難しかった。

 インパクトの瞬間に吸収のイメージをするのだが、俺の場合、イメージを始めてから十秒くらいで魔法が発動する。


 ということは事前に予想して吸収のイメージをすれば打撃を防げそうだが、それができる人間って未来予知してるのと同じなんだよな。


 結局のところ。


「とにもかくにも修行あるのみにございます!」


 というのがサティの教えだった。

 千里の道もなんとやら。

 地道な訓練に勝るものはこの世の中にはないのかもしれない。




 そしていざ食事!

 サティのお陰で食べ物は選び放題だ。


 魚の串焼きにシイキノコ焼き、他にもブナキノコやエノキノコなんてのもあった。中でも一番感動したのが、リゴの実ジュースである。


 器さえあれば作れそうだなと思っていたアレがついに実現した。

 

 ちなみに器は魔力そのものだった。

 魔力によって空間を四角形に縁取り器にする。

 そしてそこにリゴの実の果汁を流す。

 そうすることによってリゴの実ジュースが完成したのだった。


 この「魔力で空間を縁取る」という技術はあり得ないくらいの高等技術で、これを成し遂げた人間は過去に三人しかいない――ということを、俺は後に知ることになる。


 何ごとも当たり前ではないということだな。



 次の日も実践練習。

 まずは「一撃で倒さない程度」の炎を繰り出す。


「はっ!!」


 ブォオオオッ!!


 敵はスライム。

 火力の調整をミスれば一瞬で倒してしまう。

 事実、どんなに威力を弱めたところで、


『ピギャ――ッ!!』


 スライムは断末魔の雄叫びと共に煙になってしまう。


「ぜぇ、はぁ……。流石はスライム。最弱の称号は伊達じゃないな」


 一体全体なにと戦ってるんだ。

 たまにそう叫びたくなる時もあった。

 それでも俺は必死に修行を続けた。


 環境が良くなった。

 だから修行に耐えられた。

 だが、俺が必死に修行を続けられたのはそれだけが理由じゃない。


「はぁ、はぁ……」


 修行の最中、何度も虐待の記憶が呼び起こされた。


 リンド・ダクヴェルム。

 ラウド・ダクヴェルム。

 二人の兄には何度も魔法攻撃を味わわされた。


 痛くて泣いてもやめてくれない。

 それどころか俺の泣き顔を前に笑っていた。

 二人には歯止めという概念がなかった。

 何故なら、父が治してしまうからだ。


 そして一番忌まわしい存在。

 それが父――ダルヴェンディ・ダクヴェルムだ。

 もう名前を聞くことすら嫌になる。

 それほどまでに、俺の中の怨みは大きくなっていた。


「こんなところで挫けてたまるか。俺は決めたんだ。アイツらに復讐すると!」


 自分と同じ境遇の子を助ける。

 その目標のためには、まずは自分を救わなければならない。自分一人救えないようなヤツが他人を救おうだなんて、そんな烏滸がましい話はないからな。


 それにしても……。


「本当に弱いな、スライムって。敵が弱いということにここまで苦労する日が来るだなんて思わなかったよ」

ここまで読んで頂きありがとうございます!

面白い、続きが気になる、期待できそうと思って頂けた方には是非、ページ↓部分の☆☆☆☆☆で評価してほしいです。☆の数は1つでも嬉しいです!そしてブックマークなどもして頂けるとモチベーションの向上にも繋がりますので、なにとぞ応援よろしくお願いします!!

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