27クラスを味方につけて先に進もう
タナカとの一悶着から数日、この数日間は某ビルの爆破事件、銃撃事件としてテレビでもネットでも世間を騒がせていた。なんでも消防はガス爆発との発表で、警察としては、どこかの指定暴力団関係でのもめ事としてあのビルで銃撃戦が行われ多と発表していた。
ただ気になるのは、そこのビルが何もないただのワンフロアで、家具などの道具は一切なく、そこのフロアを借りたものはいなく、数年前からずっと空きテナントのような状態だったという発表だ。だとすると不思議なことだ、僕が入った時にはホテルのロビーのような内装があったというのにそれが警察や消防が到着する前に片づけることなんて可能なのだろうか?
もし可能ではないのなら、何らかの形でブルバキか教団のほうが圧力をかけて、事実をもみ消す、あるいは隠ぺいしてカバーストーリーとしてこの結果を発表しているという可能性がある。そうなるとまずい、すでにその手の関係者が警察とかメディアの中にいるという事。
そうなれば、今後能力者に襲われたときなんかに、うかつに警察に頼れなくなるし、何ならもうこの時点で警察を信用しない方がいいかもしれない。教団なんて言うやつらもあんなに大量に武器を持っていることから察するに、それくらいの人員を忍び込ませる、あるいは一から教育して送り込むなんて造作の無い事なのかもしれない。
教師からの注意もあってしばらくの間は教室でも話題になっていた。気をつけろと言われてもあれに巻き込まれた当事者からすると無理です。というか僕の場合は初めから向こうが狙い撃ちみたいにしてきたので避けようがありません。
それとは別に騒がせているのが僕だ、あの日にボロボロになってしまったであろう参考書、それをわざわざその日に買いなおしてそれで勉強していると、クラスの人からは「ついに振られすぎて頭がおかしくなったのか」とか「意外と明華さんの成績がいいから明華さんにふさわしい人になろうと努力しているのかも、推せる」とか「多分サンタクロースの実現方法を模索してる」とか言われている。ちなみに最後のは言わずもがな一路である。
明華にふさわしい人になろうとしているというのはあながち間違いではない。相応しいというのが彼氏とか恋人とではなく、ラブコメの主人公のように助けられるようになるという理由なので、ベクトルが違う。
今日も昼休みの時間に勉強しようと思い立ち、あの日に買った参考書を取り出した、今日は物理の勉強の予定である。すると一緒に昼ご飯を食べていた一路が話しかけてきた。
「よく続くなぁ、俺は2日持てばいい方だと思ってたのに」
「まぁ、やっていて損はないしね、僕も多分大学受験することになるだろうしさ、それか公務員」
損はないどころか、やらない方が損まである。前回のタナカを回収しに来たやつと言い、知らない分野を少しでも減らしておかないと、とっさの対応が逃走一択になってしまう。あの時はたまたまエンコンの時のような異空間ではなかったからよかったものの、もし異空間だった場合、脱出するために空間の補完、補修、解決が必要になるのに、そんなことを戦闘しながらできるほどの力と知識は今の僕に力はない。
どうせ勉強しないといけない学生の身、それなら勉強して僕自身も現実世界で強くなるなら、やらないやつはいないだろう、なんてたって勉強の成果が目に見えてわかるし生きるか死ぬかに関わるのだから。
「いや、何があったか理由は分からねぇけど、素直にすげぇよ」
「まだ数日だし何も結果出てないんですがそれは」
「素直に受け取っておきなよ、ていうか理数系やるならそれこそ明華さんに教えてもらえばいいのに」
僕の返答に笑顔の晴斗が僕の肩に手を置いていう。もしかしてこの子わざと言ってる?
「結果は火を見るよりも明らかでは?」
「いやぁ?わからないよ?だってデートしたんでしょ?」
「なんで晴斗の中には僕が知らないデート回の記憶があるんですか?」
ゴールデンウィーク明けの日以来、僕と明華は否定しているし、クラスの人たちもそんなことはあり得ないか、みたいな認識なのに、晴斗だけ頑なにその説を信じている。信じているというかまぁ……真実なんだけど、自分の説を必死に推してる厄介オタクみたいになっている。
「ぼくはぼくの信じたいものを信じることに決めた。だから湊と明華さんのデートはあったはずなんだ!!証拠はここにある」
「いつか陰謀論とかにはまらないでね?はまるならはまるで今のうちに経験しておいてね」
そんな将来が心配になる発言をした。証拠はここにあるとか言って頭の方を指さしたけど、それもう自分の妄想っていうんだよ、証拠でもなんでもないんだよ。
「まさか晴斗までお前と明華のカップリング推しみたいになるとは、お前一体どんな高校2年生デビューしてんだよ」
「新しすぎる普通入学のタイミングとかでデビューなのに、学年上がるだけでデビューは成長期くらいだろ」
そんなやり取りをしながら参考書に目を通しぺらぺらとめくる。この範囲は一年生の時に習った範囲だから、復習がてら見ていたつもりだけど、意外とレベルの高い問題が出ていたりする。これ解けないと大学受からないとしたら今のうちに難易度知れてよかったかも、力学の初めの方しか触れてないけど、ここ先に進むと万有引力とかやるんだ。やば、この式いじったら重力操作できるってことじゃない?
今は波動のところやっているけど、ちらっと先のページを見たりしたけど、なんか熱とか電磁気とか原子とか、この本完ぺきにマスターしたら僕結構やばい能力者になれそうな気がしてきて少しテンションが上がる。
「でも、なんで理系科目だけ?お前文系科目大丈夫なの?」
「国語と社会科目は大体ラノベとゲームで知ってるから意外といけるんだよね、英語はほら、今なら翻訳機が優秀だから」
「英語の理由がアレだけど、知識の仕入れ先がラノベってあながち馬鹿にできないな」
「国語なんてギャルゲやっていれば余裕」
「妙な説得感が嫌だな、その調子で明華にも行けばいいのに」
「は?二次元と三次元の区別も付けられないとか雑魚か?半年ROMってろ」
「拙者はすでに彼女がいるわけだが」
「判定の結果湊のコールド負けとします」
「彼女点高すぎだろ、禁止カードだろ」
いつの間に晴斗が審判になっていたんだ、こいつのガバガバ判定どうなってるんだよ、というか勝利条件がわからん。
「そして湊は敗北したので明華さんに勉強見てもらえるようにお願いしに行くこと」
「なんでだよ!!」
こいつ、厄介オタクが過ぎる。というかこのクラスが本当に厄介オタクみたいになってる。当事者じゃないからと言って好き勝手言いやがる。僕はいいとして明華がそれに付き合わされるのが可哀そうだとは思わないのかね?あ、そんなこと僕が言える立場じゃないわ。始業式からの行動を振り返ると僕の方が圧倒的に明華に迷惑をかけていたわ。
「いいよ、今別に躓いてるわけじゃないし」
そういって軽く流すと晴斗は不服そうな顔をした。頬を膨らませているのはまるで女子、仕草が圧倒的に女子だ。やはり晴斗は女の子なのではないだろうか?もう女の子として認識していいのではないだろうか?晴斗、僕の中では女の子として生きてくれ。
「らしくない、勉強を一緒にするとかラブコメで結構ありがちな展開だと思うんだけど」
「確かに」
晴斗にそういわれて、確かにと思った。そこでなんやかんやあって関係が進むことがあるのはラノベでも漫画でも見てきた、そうなれば意外と勉強のお誘いは悪いことではないのでは?むしろ誘わないとフラグとかが進まないのでは?
「ね?お願いしてもいいんじゃない?」
そういう晴斗は教室の廊下側、明華の座る席に目を向けた。あのゴールデンウィーク明の一見以来、明華の周りには女子が何人か集まって一緒に過ごす機会が増えた。明華も始めのうちは断わったり逃げたりしていたのだが、どうしてか捕まって、悪いことを飼い主にばれた犬のような顔で戻ってくる。
そのうち諦めたのか、もう空気と認識することにしたのか、感情が消えた表情で昼食を食べることにしているらしい、何を話しているのかはこの距離ではわからないけど、まれに明華が面倒くさそうな顔をするのに、それにも関係なく話し続ける彼女たちはもしかしたら、僕以上にしつこいかも知れない。
「こうやって応援されてるうちに仕留めたほうがいいんじぇねぇの?」
一路は一路で面白いものが見れるとしか思ってないのがまるわかりな顔で僕に提案する。長年の付き合いだぞ、なめるなよ僕がお前の考えを見抜くなんて簡単なんだからな。
「お前は絶対に僕がフラれる回数増えるのが面白いから言ってるだけだろ」
「さすがにそんなことは無いぞ、8割しかそう思ってない」
「一路の感性バグってるだろ、やっぱ彼女持ちはどっか狂ってるっていうのは本当だったんだ」
「でも今の状況が一番やりやすいんじゃねぇの?ほぼクラスがお前の味方みたいなもんじゃん」
現状は確かに一路の言うとおりだと思うんだけど、クラスの思いと僕の思いがすれ違っているというか、なんだろ、ラブコメの主人公にはなりたいんだけど、別にそれが明華って決まっているわけではなくて、今は明華を助けてあげられるように自分を強くするターンというか。
なんか冷静に考えるとあれだけしつこく付きまとっておいて別に明華と付き合いたい訳じゃないですってよく考えたら意味わかんねぇな、そりゃ僕が明華に片思いしていると思われても仕方がないか、ほんとは始業式の一件が気になって追っかけていた、というのが正解なんだけど。
「まぁ、無駄だと思うけど」
そういって僕は立ち上がって明華に教えを乞うために明華のところに向かうことにした。ある意味クラスのやつらに見てもらって頑張ってるんで放っておいてくださいっていう事を伝えるためでもある。
明華の席の近くに行くと教室がシーンと糸が張り詰めたよな静けさが広まった。なんでこんな注目されいるのかわからないけど、当の明華本人はうんざりしたような顔をして、周りの女子たちは何やら口元を抑えて目を輝かせていた。人気ドラマの盛り上がりどころかなんかを見るような眼をしてるじゃんか。マジでクラスの覇権コンテンツだな。
「明華、今僕理系科目勉強してて、できれば教えてくれないかなって思うんだけど」
その理系科目を強調したことで、明華がなんのために勉強しているのか悟ったようだった。しかし、そのあとの返答は僕も予想がついている。
「悪いけど私には……」
「教えてあげよう!!うん絶対その方がいい、もう私たちの方からこの教室出ていくから安心して!!」
「大丈夫私たちが誰も寄せ付けないから」
「今日の部活は早めにいかないとだなぁー」
「いやぁ、いつもだらだら残ってたけど今日たまたま放課後予定あるんだよなぁ」
明華が断ろうとした瞬間に、明華に粘り強く話しかけていた女子が声を上げる、それに続いてまるで打ち合わせ済みとでもいうかのようにクラスのやつらがわざとらしく声を上げる。見ると一路は笑いをこらえているし、晴斗は目を輝かせている。
「いや私は別に……」
これまた珍しく明華が少し面食らっている表情をしていた。というか僕もこんな雰囲気になるとは思わなかった。本当に僕クラス中に応援されてる?なんか申し訳ないどころか、マジで明華と付き合わなきゃいけない気もしてきた。実際明華と付き合うなんて考えもしなかったけど、僕なんかでいいんですか?っていうレベルで僕にはもったいないと思うのが正直なところだ。
「大丈夫、阿智良くん、今日はきっとこの教室がなぜかすっからかんだから、きっと明華さんが教えてくれるよ」
明華に反論もさせない勢いで僕に向かってまくしたてる。ボブカットの女子よ悪いが名前は覚えてないけど、ここ最近明華によく話しかけに行っているのを見ている。多分あれが始業式のころの僕なんだろうなと思いながら見ていた。同性の分、僕みたいに邪険に扱われていないけど。
「あーもう!」
明華が机に突っ伏した。これはもう無駄だと諦めた証拠。ごめん明華、僕もこんな展開になるなんて予想外だったんだ。僕が明華に心の中で謝罪していると。明華が急に席を立つ、そして僕の制服のネクタイを引っ張った。
その瞬間クラスから色めきだった声が響いた。これは明華が悪いよ?僕のせいじゃないからね。
「いちいちクラスで言う必要ないだろ、とにかく教えるにしてもマリアのところだよ」
こそっと耳元でささやっく、明華の息が当たるのに少しドキッとしたが、それ以上にクラスのほうが盛り上がってしまった。しかも近くにいたボブカットの女子に至っては内容まで聞こえていたようで。
「どういう事!?もしかして他に連絡手段があるというの!?」
そういって大きな声で言うもんだからさらに湧き上がるクラス。そんなまるで一大事件みたいに言わなくてもいいだろうに。
「いや、わざわざ目立つように言わなくても、スマホで連絡すれば……あ」
「明華さんさぁ……」
明華は自分で言っていて、その言葉が今この状況だとまずいことだと自覚したが、時すでに遅し、驚いたように目を見開いて口を押え僕を見る。代わりに僕はあきれた顔で明華に返す、言葉の外には「今のは明華の失敗だよ」という意味を載せて
その瞬間にクラスがまるで地区大会とかで優勝したように一気に湧き上がる。もうお祭り状態のようになるし、男子どもが円陣組んで喜ぶし、女子はなんか抱き合って震えているし、一路は驚いて顎が外れたような顔をしているし、晴斗はなんか後方腕組み彼氏みたいに腕を組んでうんうん頷いている。
「阿智良!!よくやった!!」
「キマシタワー!!」
「ハァッ!ハァッ!!公式からの供給がすさまじすぎる」
「もうすでに二人は私たちの知らないところでねんごろな関係に!?」
もう手も付けられない状態。明華は力なく自分の席に座り、頭を抱えた。僕は何も言わずに席に戻ろうとしたのだが、クラスの男子どもの円陣に巻き込まれてフェスの観客みたいに揉みくちゃにされた。こういうのは嫌いではないので、僕もとりあえず騒いでおこう。
もちろんそのあと、騒ぎを聞きつけた担任のお叱りを受けるのはなぜか僕だけなのだった。
ここから第三章スタートです、仕事の関係でかなり間が空いてしまいましたが、これから定期的に更新していければなと思います、予定としては、火曜、木曜、土曜、日曜を予定しています。ラストパートだけ木曜、金曜、土曜、日曜と連続で更新していくつもりですのでよろしくお願いします。
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