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光と土の狭間にいる僕  作者: 二十四時間稼働中
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第十九話 『十九』

 僕は誰かのために、何かをしたかった。誰かを救いたかった。こんなことを言ったら、そんなのはただの偽善だ、お前はそうやって優越感に浸っているだけだ、と言われるかもしれない。確かにそうなのかもしれない。僕は自分のためだけにこんなことを言っているのかもしれない。他人を想うことができるという気持ち、それだけは嘘ではないと信じたかった。たとえ、それがどんな形であっても。

「なあ、僕はヒーローになれるかな」

 テレビ画面には、ヒーローが世界を脅かす怪獣を倒している映像が流れていた。テレビを見ている誰もが、さすがヒーローだ、と喜んでいるだろう。だが、僕は少しだけ違っていた。ヒーローと怪獣の戦闘によって、破壊された建造物、山、道路、その中に人はいるのではないか?確かに、怪獣から世界を救うには多少の犠牲というのは仕方がないことなのかもしれない。それが分かっていたとしても、僕は心を痛んだ。できれば、何の犠牲もなく、世界を救って欲しかった。ただの欺瞞なのかもしれない。それでも、怪獣を倒せるのはヒーローだけなんだ。

「本当にただの欺瞞だよな」

 僕はテレビのスイッチを切った。唯一の光源、テレビの光がなくなったことで、真っ暗になった部屋には物のひとつも見えなかった。乱雑に置かれている本、ゲーム、CD、DVD、ノート、何ひとつも見当たらない。月の光すらも届かないから、僕はまるで視力を失ったようになってしまう。

 僕はこの時間が好きだった。何の情報も入ってこないからだ。頭だけを働かせることができる。誰にだって、考えながら落ち着ける場所を求めているはずだ。僕はこの部屋の真夜中に感じることができる静けさと暗闇が好きだ。ずっと続いてくれればいいのに。そうすれば、僕の不幸な出来事は何もかも綺麗さっぱり消えてなくなる、と言うのに。

 今日、見たヒーローアニメを思い浮かべる。彼たちは力を持たない僕たちのことをどう思っているのだろうか?本当に純粋で救いたい、と思っているのだろうか?それとも、お前の命は俺が握っているんだぞ、と優越感に浸っているのだろうか?

「結局、ヒーローって何だろうな?」 

 僕が中学二年のときに、ヒーローについて書いた小説があったような気がする。過去にノートに書いた小説が、押入れのダンボールの中に入っていると思うのだが、それを探すのを迷った。もしも、探すために電気を点けると、この空間を壊すようで、気が引けた。だが、あのノートを探し出さなければならない、という使命感があった。夜が明けたからでは遅いような気がした。今でなければならない気がした。

 僕は部屋の電気を点け、押入れを開ける。そこにはたくさんのダンボールが積まれていて、中学生、高校生の思い出が一杯に詰まっていた。僕はその中の一番奥にあるダンボールを、他のダンボールをどかしながら、取り出した。開けてみると、百冊以上のノートが入っていた。どれも、ノートの一、二ページぐらいしか書かれていなく、ほとんどが余白だった。無駄な買い物をしたな、とノート百冊分を見ながら後悔した。その中から、やっとの思いで『どっちなんだ』というタイトルが表紙に書かれてあるノートを見つけた。中学生時代に書いたから、結構下のほうに置いてあった。

「さすがに百冊もあったら、重量も違うか」

 僕は溜め息混じりに、ノートを開いた。内容は至って簡単だった。その世界には二人のヒーローがいて、その二人が対立したとき、どちらにも憧れを抱いている主人公はどうするのか?という話だった。中学生にしてはよく書けた作品だ、と思う。文章は悲惨で、自分に酔っているところはあるようだが。とは言っても、そういうことは今も昔も変わらないような気がした。いつまでも言葉を知らなくて、いつまでも自分に酔っていた。

 この物語の終わりは、対立した二人のヒーローのやっていたことはただの演出に過ぎなかったことを知った主人公は、二人のヒーローのことを信じられなくなり、自分が正義のヒーローになってやるという感じだ。こんなにも自分の作品を語るのが恥ずかしい、とは思わなかった。どうせ、こういうことはこれっきりであろう。

「で?ヒーローというのは?」

 テレビに出てくるようなヒーローはこっちからすれば、ただの偽善者に過ぎなくて、本当のヒーローは自分のなかにある、と言いたいのか?本当にそれでいいのだろうか?それを結論として終わらせていいのだろうか?いいはずがなかった……と思いたい。だが、自分の納得できるようなことを考え出すことは、これ以上は限界だった。

 僕はノート類が入ったダンボールだけ、部屋の隅に置き、他のダンボールは押入れに片付けた。一通り、片付けを終わらせたら、部屋の電気を消し、辺りを真っ暗にさせる。時計はこの部屋にはないが、今はまだ真夜中なのだろう。シャッターを開けば、そのことは一瞬で分かるだろう。だが、そんな面倒なことなんかしたい、とは思わなかった。今が何時で、今が何日で、今が何曜日かなんてどうでもいい。僕にとって、時間はただの拘束でしかない。だから、僕はそんなことを思いたくもなくて、考えたくもないから、時計なんて持っていない。

 二段ベットの上の方へ行って、眠りに着く。僕は今日のことを考える。一体、ヒーローというのは何なのだろうか?一体、何のために存在しているのだろうか?彼らはどういうことを考えて、生き続けているのか?僕はその問いたちに一言だけ言えるとしたら、彼らヒーローはただ単に人を救いたい、それだけだと思った。これはただの意見で、答えではない。たぶん、この意見に他の人も僕自身も納得しないだろう。

『その子から手を離せ!』

『シュワ』

『変身』

 僕はヒーローになることができるのだろうか?皆を救えるようなヒーローになれるのだろうか?誰も死なない、誰も犠牲にならない、そんな世界を創り出すことができるのだろうか?


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