第十七話 『十七』
『バン……バン……バン……』
僕は自分の頭に向けて、銃で何度も撃っていた。だが、弾なんか一発も入っていなく、決して僕の頭を貫いて死ぬことはなかった。ただ、カチカチと金属同士が擦れる音しかしなかった。
この銃は確かに本物だった。がっしりとした重さがあるし、黒色が煌びやかに輝いていた。そして、何よりも、僕はそれを見た瞬間、好きな人ができるのと同じように恋をしてしまったのだ。
初めて出会った場所は、家の近くにある公園のベンチだった。家で煙草を吸うと、親に怒られてしまう(自分はまだ未成年だから仕方がない)から、わざわざ公園へ出向くことになってしまった。だが、いつも座っているベンチにはある男が占領していた。酔いつぶれたどっかのおっさんが寝そべっていた。顔をよく見ると、額や鼻に大きな傷の痕ができていた。手には刺青が入っているし、派手な服装は明らかにどっかの暴力団だった。
僕は身震いさせながら、その場から離れようとした。そのとき、ドサッと何かが落ちる音がした。後ろを振り返って、確認してそこにあったのは銃だった。たぶん、おっさんの服のポケットから落ちていたのだろう。無用心だな、とか僕は思いながら、その銃を拾って、公園から出て行った。
そして、自分の部屋に至る。最初はこれでどんな相手でも倒せる、とか思っていたけど、弾が一発も入っていないことを知ってしまうと、僕は絶望に打ちのめされた。一体、何回頭を撃ったのだろう?一体、何回僕は死んでしまったのだろう?全てが霞んで見える。また、普段の日常へと戻っていく。
「くそったれ!」
そう叫んで、僕は銃を壁にぶつけた。だが、壁に当たった銃は僕の元へと跳ね返って来る。
「何だよ、お前だけは僕を見捨てないってか?笑わせんなよ。僕はそんなことで救われると思ってんのか?もう駄目なんだよ。もう間に合わないんだよ。救われるには、死ぬか、犯罪者になることしかできないんだよ。いつまでも逃げることはできない。いつかは見なければならないんだ。あの残酷な世界を見なければならないんだ。どうしてくれんだよ……」
僕の恋ははかなく終わってしまった。これで、彼女(銃)を愛でることができない。その逆の憎むことしかできなくなっていた。
『バン……バン……バン……』
この音が途切れないように
『バン……バン……バン……』
この音が聞こえなくならないように
『バン……バン……バン……』
僕は必死になって
『バン……バン……バン……』
いつか死ねることを願いながら
『バン……バン……バン……』
ゆっくりと
『バン……バン……バン……』
ゆっくりと
『バン……バン……バン……』
眼を閉じ
『バン……バン……バン……』
土のなかへと向かっていく
『バン……バン……バン……』
明日に僕はいなくて
『バン……バン……バン……』
今日が続かなくて
『バン……バン……バン……』
昨日ことは考えられなく
『バン……バン……バン……』
なればいい
『バン……バン……バン……』
だけど
『バン……バン……バン……』
その願いは叶わなくて
『バン……バン……バン……』
明日の僕は待ち構えていて
『バン……バン……バン……』
今日が続いて
『バン……バン……バン……』
昨日のことばかり考える
『バン……バン……バン……』
ただ
『バン……バン……バン……』
眼を瞑ることしか
『バン……バン……バン……』
できなかった




