その手は誰のためにある
「ハァッハァッ」
六花は魔力不足でろくに動かない身体に鞭打ち、英雄機関への道を急いでいた。
途中で何人か倒れているヒーローや怪人を見かけたが、全員がダメージを負って動けないものばかりだった。正直助けている余裕はない。それよりも今は弓塚を助けなければいけない。本部に通信を試みても返事がなく、状況が掴めなかった。怪人は弓塚が食い止めているためか、六花の方には来ていない。しかしあんな無理がいつまでも続くとは考えづらかった。
六花は英雄機関に到着するとすぐに本部へと向かった。
先ほどの弓塚の魔力が一瞬だけ大きくなった後消えた。それがどういう事なのか、六花にはわかっていた。とめどなく出る涙を拭い全力で走る。今の自分にできる事は急ぐ事しかない。
「司令!!」
息を切らして六花は作戦本部の扉を開ける。しかしそこにはオペレーターがいるだけで、司令はおろか司令代理すらいなかった。
「あっ! 六花さん。よかった無事で。基地から退避命令が出ています。速やかに退避してください」
「そんな……今戦っている仲間は……弓塚さんはどうなりますのっ」
「私にそんな事を言われても……あっあと桜花さんも退避させるように言われてたんです。えっちょっと六花さん! どこに行くんですか!? そっちは避難経路じゃないですよ」
六花はオペレーターの話を聞かず飛び出していた。向かう先は桜花の病室だ。弓塚を助け出すには、もう桜花の復活に賭けるしかない。
バタンッ
六花が乱暴に扉を開け放つ。そこには変わらずベッドに寝かされたままの桜花がいた。
「あ……」
今六花が部屋に入って来た事にさえ、全く反応を示していない。相変わらず目を開け焦点が定まっていない。あまりにもな状態に思わず六花は言葉に詰まった。しかし躊躇している時間はない。
「お願いします! 起きてください! このままだと英雄機関が! 弓塚さんが死んでしまいます」
六花は桜花の体を強くゆする。しかし桜花は何の反応も見せなかった。
「あなたに頼むのは間違いだってわかってます! でももう頼れるのはあなたしかいないんです……お願いします弓塚さんを助けてくださいっ!! お願いだからっ! 私達を助けてください!!」
ドクンッ
六花の言葉に桜花の体が大きく脈を打った。
「こ……これは……」
突然、倒れている桜花の体から膨大な魔力が溢れ出していた。その巨大な力に押される様に六花は後ずさっていた。弓塚の話は嘘でも誇張でもなく本当だった。それだけの力を間違いなく桜花は有していた。
音もなく部屋を出た桜花は、高速で弓塚のもとに向かう。みんなを助けるヒーローになる。それが紅太郎の最後の願いだったから。




