本日のお姉様は、香りを残してくださいました。
転職したら社畜過ぎて、中々執筆出来てませんでした。
「疲れた……」
重い体を引きずるようにして、ベッドに顔を埋める。来月から始まる学園生活の準備に、フローラの体は確実に疲労を蓄積させていた。
しばらくそのまま動けずにいたが、ふと視線を向けた先――テーブルの上に、丁寧に畳まれたストールが目に入る。
それに手を伸ばし、そっと抱き寄せた。
「はぁ……お姉様の匂い……」
やわらかく香るその匂いに、フローラの頬がゆるむ。
――ふと、あの時のことを思い出す。
ストールを差し出してくれたお姉様。少し震えていた指先も、赤く染まっていた頬も――
そして、いつも冷静なお姉様が見せた、あの驚いた表情。
あの一瞬が、頭から離れない。
「……あの時のお姉様……」
胸の奥が、じんわりと熱を帯びる。ストールを抱きしめる腕に、無意識に力がこもった。
「……可愛らしいお姿でしたわ」
――もう一度、見てみたい。
自分でも驚くほど素直に浮かんだその想いに、フローラはそっと目を伏せる。
「……変、よね」
ストールを抱きしめたまま、ゆっくりと息を吐いた。
その時――
「フローラ様、よろしいでしょうか」
控えめなノックと共に、ミアンの声が扉越しに響く。
「……ええ、どうぞ」
名残惜しさを感じながらも、ストールをそっと膝の上に置く。
扉が静かに開き、ミアンが一礼して部屋へ入ってきた。
「お疲れのところ失礼いたします。明日のご予定について確認が――」
そこまで言いかけて、ミアンの視線がふとフローラの手元へ落ちる。
「……そのストールは」
「あ。ロゼリアお姉様にお借りしたの」
ミアンは一瞬だけ目を瞬かせた。
「左様ですか。それでは、明日お返ししておきますね」
「あ! いえ、自分で……!」
一瞬言葉を詰まらせてから、フローラは小さく続ける。
「……私が、直接返したいの」
少しだけ頬を赤らめるフローラに、ミアンは優しく微笑んだ。
「左様でございますか」




