夕凪の天使たち 5
次の日の昼休み、あさみのアドバイスを受けつつ、美咲は懲りもせずに守の居ると思われる図書室にやってきた。だが、室内を見渡しても守の姿は見えなかった。ふと、壁を見ると『飲食禁止』の張り紙がしてある。途方に暮れた美咲が何気なく窓の外を見ると、中庭のベンチに守が一人座って弁当を食べていた。
美咲は、急いで中庭まで走り、守に声をかけた。
「守くん、こんな所に居たんだ。ね、寂しくない? 私達と一緒にお昼を食べない?」
覗きこむようにして美咲は守を見た。
「また君か。別に僕は寂しくないよ」
守が言うと、急に美咲の顔が曇る。見た事のない表情に、守は少々焦った。
「守くん、やっぱり私の事、嫌いなんだ……」
美咲は、顔を歪ませると、両手で顔を覆った。そんな美咲を見て狼狽した守は立ちあがって美咲の肩に手をかける。
「ご、ごめん。麻乃さんが嫌いで断ってるんじゃないんだよ」
美咲は、ひっくひっくと声を漏らす。
「じゃあ……一緒にご飯食べてくれる?」
「うん、食べるからもう泣かないで」
守が答えると同時に、美咲はパッと顔をあげた。泣いてる様子など全然無い。
「やった! じゃあ今から屋上に行こう!」
あさみから教わった――秘技・女の嘘泣き――は、効果てきめんだった。
「……やられた……」
額に手を当て、守はがっくりと肩を落とした。