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R033話 増加

 1942年前半 『アメリカとソ連』


 100万人。

 史実において独ソ戦が開始された1941年に餓死したソ連国民の人数である。


 6月に侵攻を開始したドイツ軍は破竹の勢いを見せ、数ヵ月でソ連の最も豊かな穀倉地帯をその占領下においた。

 ロシアの大地における麦の収穫は8月から9月。

 ソ連はこの年、秋の収穫の大半を失った。


 それは当然、どこかにその皺寄せが行くという事でもある。


 また、多くの人々がドイツ軍から逃げる為に西から東へ向かったが、当然、長期間凌げる程の食料を持って逃げる事などできない。当座を凌ぐ分だけだ。


 戦争中であるから食料は優先的に軍や軍需工場で働く者達、軍関係の労務に従事している者達に配給された。

 そうなれば後は言わずもがなである。

 一般市民に多数の餓死者が出る事となった。

 故に100万人もの餓死者が出たのだ。


 1942年になってもウクライナ地方を中心とする最も豊かな穀倉地帯はドイツ軍の支配下にあった。

 更にはドイツ軍との戦闘で多くの兵士を必要としたソ連軍は徴兵を強化する。

 それは農民を兵士にするという事だ。

 当然、食糧の生産は減る。


 だからこそ史実においてアメリカからのソ連への軍事供与(レンドリース)の半分を食糧が占めていたのだ。


 しかし、今回の歴史において、そのアメリカが日本の攻撃により崩壊寸前だった。

 ソ連に食料を送る余裕などない。


 それどころかアメリカ国内で食料が国民に行き渡っていなかった。

 いや、奪い合っていた。

 日本軍の攻撃と侵攻に端を発して、国内の通信と流通は寸断された為に、どこもかしこも食料を始め生活必需品が不足した。


 人々は生き残る為に食料や薬を求め、盗み奪い略奪していた。


 州政府が健在なところや日本軍の攻撃が限定的な被害に収まっている地域はまだ良かった。

 何とか治安機関と近在の軍の力で一定の秩序を保てたからだ。


 だが、日本軍の攻撃により治安機関や軍が手薄になった地域は最悪だった。

 秩序は崩壊し人々は物資をめぐり争い合う。


 そうした中で移民コミュニティ、有色人種、秘密結社、郡、市、村々で、それぞれが自衛の為に団結し始め抗争が激化した。

 移民コミュニティではかつてのヨーロッパの旧王家が旗頭に担ぎ出されている。


 もはやアメリカの多くの地域で内戦が始まっていた。

 死者は一日ごとに増加していく。


 史実とは違いアメリカからの軍事供与(レンドリース)での食糧供給が途絶えたソ連でも餓死者が増加していた。


 ソ連とアメリカにおいて史実以上に死者が増加している。

 だが、その終わりは未だ見えない。

 死者の国に入る者は日々増えていた……


【to be continued】

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