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頑張れ!笑顔なPKくん!  作者: ミスタ
7/33

第7話:初殺

ここからが始まりだ

 それからそれなりの時は流れた。

この時点でプレイヤーはおおまかに6つの陣営に分かれた。

一つ、あの後知ったのだが、最初と二番目にボスを倒したのは、

驚くことに両方ともソロだったらしい。

そんな感じにソロで生き、ボス戦の時にだけ顔を見せ、

そして大活躍をする”キチガイ”共。

二つ、ボスやクエストの情報を収集し、解析し、報告し、

レベリングに邁進し、

一つ目のグループと共にボスを討ちクリアを目指す”攻略組”。

俺たちもその中にいる。

三つ、前線には出てこないものの、

安全マージン<自分と比べて敵が弱い場所>を大きくとり、

こつこつとレベルアップにいそしむ”準探索組”。

四つ、攻略組を手助けするものと、準探索組を手伝うものに分かれ、

生産活動をひたすら行いあまり街から出ないもの”生産組”。

五つ、攻略の最前線に立っていないくせに、

「我らは一丸となってこの世界から脱しなくてはならない」とか、

「そのためには皆の協力が必要だ」とか言いながら、

治安を守ってるのか悪化させてるのか分からない行為を繰り返し、

悪評高くなっている”攻略軍<笑>”

しかし爵位クエストをクリアして牢屋の権限を持っているので、

無駄にたちが悪くなっている。

最後に開放された街などを巡り歩き、

商売に励んだり、吟遊詩人の真似事をしたり、

面白そうなクエストを楽しんだり、家を建ててみたり、

この状況を満喫している”自由人”

この頃はまだPKというのはやはり抵抗があるらしく、

不可抗力で殺してしまったのが数件、加減が分からず殺してしまったのが数件ある程度。

まだまだ平和は保たれていると言っていいだろう。


 俺は攻略組といっても基本的にβーテスターであるタロットを前に出し、

そのサポートに徹している。

まあ、もともとアンノウン時代も黒幕とかそういうのになるのが好きだったから、

立ち位置的には大して変わらない。

だがサポートといってもレベルは順調に上がり、

キチガイ共は除いたトップクラスの中でだったら十分すぎるほどだ。

というかキチガイ共のレベルがおかしいんだよ。

トップクラスがいまだ80台が限界なのに、

もう既に3桁に達しているってどんな冗談だよ。

というかSRの必要経験値激減とかどんなチートだよ。

その効果を使用している間はステータスが下がる仕様だとはいえ、

そんなん使ったまま一日モンスターハウスのなかに篭られてみろ。

効率とかを考えないで狩りをした場合の一週間分に相当するんだぞ。

ほんと酷い冗談だよ。

まあ、ステータスが下がっている最中に、モンスターハウスの中に飛び込む勇気と、

そこで生き残るだけのプレイヤースキルがあってこそなんだけどな。

それを考えてもやっぱ悔しいもんがある。

ちなみに今の俺のステータスはこんな感じだ。

それと本当ならレベル10上がるごとにスキルを新しく一つ増やせるんだが、

今は保留にしてある。

今のプレイスタイルはなんだか違うような気がするからな。

自分がこれだって思ったら、それに合わせて取得していくつもりだ。


#人形 男<Lv83>

Str:420 Vit:42  Int:42 Min:42

Dex:42  Agi:840 MP:42  Luk:210

スキル:エフェクト<10>、ノックバック効果上昇<10>、状態異常発生上昇<10>、

隠蔽<10>、感覚上昇<10>、付与魔法<10>、製作<料理><8>、連撃強化<10>、

製作<薬><7>、スマイルパワー<10>

装備:武器:戦闘用シャチ型フロート 属性水 特殊効果省略

      魔改造超高圧水圧砲 属性水 特殊効果省略

   防具:深海用ダイバースーツ 属性水 特殊効果省略

 

 これらを売ってたのは人形系装備の旦那から紹介してもらった店だ。

何事も同類は引き合うものがあるのかもしれない。


 今、俺はタロットとは別行動をとり、前線である樹海の中で探索をしている。

基本的にソロ活動と言うのは危険なのだが、

前線と言っても南方面であり、敵はそこまで強くなく、

推奨レベルが50であるここならば、負けることはまずない。

だが油断はしない。 その点に抜かりは無い。

なおどうしてタロットとは別行動なのかというと、

ここである話を聞いたからだ。

このまえ、ここらへんに邪悪なモンスターが出没する伝説を、

樹海の中にひっそりと存在する村の婆さんから聞いた。

婆さんは鏡がどうのこうのとも言っていたから、

光線系は無効化されるのだろうと思って、

普段装備していた蓬莱人形はホームにおいてきた。

また、ここまで樹が密集していると団体戦は厳しいので、

お付きの兵隊人形も置いてきている。

それで話を戻そう。

そのモンスターはMPを外付けできる何かをドロップしたらしい。

あいつはMPさえあったらINT値に補正をかけるアイテムは出来ているので、

これでアルカナ使い<笑>と呼ばれず、

更なる戦力補強が望めるわけだ。

それに俺にとってもいい話があって、

そのモンスターと戦ったことで、

複数のスキルが一気にハイスキル化したらしい。

俺のスキルはカンストこそしてるものの、

いまだに一つもハイスキル化していないので、

これは絶好のチャンスだろう。

待ってろよ、謎のモンスター!


 しかし謎のモンスターとやらは見つからない。

こういう風に言及されているモンスターというのは、

ザコモンスターとは違って一定のエリアにいることが多く、

少なくとも道中潰してきたモンスターが謎のモンスターでした、っていう事はないはず。

そうやってなるべくいろんなところを見て回るように歩いていると、

他のプレイヤーに遭遇した。

そのプレイヤーはこっちを見かけると、とてもにこやかに近寄ってくる。

「キミ、プレイヤー?」

「うん、そうだよ。

いま、謎のモンスターを探してるんだけど、

ユニークモンスターみたいなのって見なかったかな?」

最近板についてきたしゃべり方で話すと、

すっかり気を許したのか、それともモンスターの情報を独占する気がないのか、

簡単に教えてくれた。

「コッチダヨ」

そういって案内してくれたのは少し狭い洞窟だった。

いままで歩いていたのはなんだったのかと言わんばかりに、

あっさりと到着した。

中の様子は暗くて見えづらく、狭いので一人ずつ縦に並んで歩くことになりそうだ。

本来の体であったならば少し行動が制限されていただろうけれど、

この体なら戦うだけなら十分すぎるほどの余裕はある。

「ソウイエバ、コレ、イルカイ?」

そう言って渡されたのはたいまつだった。

片手がふさがってしまうがどうせシャチ型フロートを振り回す広さなんて無いので、

ありがたく受け取り装備する。

話によると樹海のモンスターは火属性が苦手だからもってきたものの、

すばやくて何の意味も無かったと言ってた。

というか腰に立派な剣があるのに、

たいまつで攻撃する必要あるのかいって突っ込もうかと思ったけれど、

結局役に立って結果おーらいなのでスルーすることにした。

そうして俺たちは俺を先頭にして洞窟の中へと入っていった。

それはともかくさっきから気になってたけど、

声が妙に高くて洞窟で無駄に反響してうるさい。

あんまりしゃべらないでほしい。


 この時俺は…

剣にたいするたいまつの不自然さを。

ガイドするのに後ろで行動する不自然さを。

最初にプレイヤーかどうか聞いてきた不可思議さを。

裏声で話し続ける人間なんぞあんまりいないという常識を。

何の変哲も無い洞窟の中にユニークモンスターがいると確信しているのかを。

そもそもプレイヤーかどうかは判別できない中でプレイヤーだと思ってしまったことを。

もっと よく しっかりと 注意深く 深く 油断せず 考えるべきだったのかもしれない。


 あれがユニークモンスターかな?

黒く深く光るコールタールのような液体をまとった人型のゾンビモンスターが、

洞窟の奥のほうから歩いてきた。

まだこちらは認識していないみたいで、

何かを求めているかのように壁にぶつかったり、

転がったりして蠢いている。

今のうちにこっそり近づいて潰そう。

まあ、レベルが10まで上がったエフェクトが少しウざいが、

どうやら視覚は無いか使われていないようだから、

きっと大丈夫だろう。

そう思って近づこうかと思ったら、

後ろにもまだ何匹かいた。

というわけで射撃タイムのお時間です。

まずは一番近い奴から撃っていこう。

そう思いながら何発か撃っていると、

さすがに気付いたのかこちらへ走り寄ってくる。

それにつられて後ろのモンスターも付いてくる。

ちょっと、一緒に来んなよ。

めんどくさくなるでしょうが。

その思いは聞き入れられたのか分からないが、

後ろの奴はある程度進むとすぐに飽きたようにまた蠢くだけの作業に入る。

それに安心してまた射撃を行う。

この時俺の頭の中からは一緒に来たはずのプレイヤーの事は、

頭の中から消えうせている。

後ろで立っているなら気配で気付くだろうが、

後ろには誰も立っていなかったからだ。

その後走り寄ってきたユニークモンスターは、

俺の目の前で力尽きたかのように、地面に崩れ落ちる。

それを確認し、またいざというときのために頭にもう何発か撃っておき、

とどめをきっちりさしておく。

このまえ、不用意に近づいたら死んだ振りだったみたいで、

見事に反撃食らっちゃったからね。

そしてそのうえで反応が無いのを確認すると、

ドロップを獲りに死体の元へと進む。

こうしてみると本当に人が死んでるみたいだ。

まあ、その程度はゾンビを倒したときにもどうって事無かったから、

たいして感情は揺さぶられないけどね。

「よしよし、いい子だからMPの外付け装備をドロップしてね~」

こんなことを言ってると結構な確率で物欲センサーが仕事するのだが、

そんな事いってても仕方が無い。

そんなことを考えながら死体に触ろうとした瞬間、

背中から激しい痛みが伝わってくる。

あわてて前に跳び、後ろを振り向くと、

刺す格好のまま剣をもったさっきのプレイヤーがそこにいた。

まさかこいつ

「まさか、君ってPKなのかい?」

恐る恐る聞いてみると予想からかけ離れた返事が返ってくる。

「チガウナ、ワレハドッペルゲンガー。

オマエノイウユニークモンスタートイウヤツダヨ」

そしてさっきまで死体だとモンスターだと思っていた物体から、

コールタールのようなものが蠢いて、

ドッペルゲンガーの元へと移動していく。

そして移動した後にはドッペルゲンガーが今まで成りすましていたプレイヤーと、

何一つ変わらない顔がそこにあった。

そのことに驚いているうちにドッペルゲンガーはコールタールもどきとの融合を終え、

体の表面が一部のすきまもなく黒く染まっている。

そしてそのコールタールは役目を終わったかのように剥がれ落ち、

その中から

俺の顔、俺の体、俺の銃何もかもが再現されてそこにあった。

そして俺の声、俺の口調で残酷な事実を告げる。


「僕はユニークモンスター、PKなんかじゃないよ。

この人は殺されたもの、君に殺されたもの、

PKは君だ。 


君こそが”PK”だ」

”キャラ紹介”

サダオ<四糠輪 定男>

ごく普通の剣士タイププレイヤー。

噂につられてドッペルゲンガーを倒そうとしたものの、

自分の姿を切れず、

そのまま取り込まれた。

周りが覆われているだけで意識はあったので、

衝撃を受けた際に、

そちらに駆け寄って助けを求めようとしたが、

あえなく脳天を撃ち抜かれ死亡。

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