06
呼吸をすることすら忘れてしまうような、そんな美しさだった。
涙が出るならば、零れ落ちてしまいそうなほど。
「あぁ……叶うなら、あの子にも、見せてあげたかった……」
かつて、路地裏で隠れるように人の営みを見に来ていた時に、自分を露天商だと勘違いして、マリッジ・アルテミスフラワーがないかと、尋ねてきたあの少女にも。
花がないなら、種から育てて見せてあげるからと口にしていた、あの少女。
見せてあげたかったと、嬉しくも、少し寂しい気持ちで、花を見下ろすグランに、ルミアは何とも気まずそうな表情で、目を逸らしていた。
「もうこの際だし言っちゃうけど、たぶんそれ、私だよ」
ぼそぼそと口にするルミアに、グランもしばらく、ルミアの言葉の意味を理解するのに、時間がかかってしまった。
「…………え、えーっと……」
ルミアさんが、あの時の少女?
そもそも、なぜそれを?
いや、確信なんてないのでは……?
「私も、昨日見て、思い出しただけだけど……いかにも怪しい薬を売ってそうな、真深いフードに口布と、目元の大きな傷の路地裏の露天商……」
それはまさしく、自分だった。
「それに、花が無くても魔力をあげればいいなら、種からでも育てられるから大丈夫。なんて、今の時代、そうそういないでしょ……」
「え、あ、って、ことは…………へ……?」
すでに頭の中は答えが出ていたが、ただただ羞恥心で、言葉が出てこない。
「私も、子供の時の好奇心で、こんなに人を巻き込んでたとは、少し申し訳ない気持ちにはなってるんだけどさ……」
ただの町のブームで、ただの子供の頃の探求心という、悪意なんてこれっぽっちも無かった。
だが、確かに、目の前の獣人にとっては、この十数年を費やしてしまうほどの出会いになってしまったらしい。
「……まぁ、なに……見れて、よかったね」
分厚い服に隠されているにも関わらず、目の前の獣人は、きっと顔を真っ赤にさせているであろうことが想像できては、ルミアも困ったように笑みをこぼすことしかできなかった。




