21.紅茶缶の中身は、本
21.紅茶缶の中身は、本
「じゃあこっちは何ですか?」
レストランとは城を挟んで反対側。岸方向に張り出した場所にあるボコッとした蓋と円柱状の本体を持つ紅茶葉の缶にも似た窓の無い建物を見て、ミウが首を傾げる。
「図書館」
「図書館……?」
「映画館、と、同じ様に、水や海に関する書物だけを集め、た、図書館」
見た方が早い。そう言うかのようにサラがスタスタと入城して。
壁は白く、所々に青と金で差し色が入っているが、派手と言うより高級感と言う言葉が似合う。大理石だろう床は万華鏡の様な美しい模様が描かれ、城の案内を行っているらしいサービスカウンターまである。
サラは入ってすぐ左手にある四、五人が並んで通れる両開きの扉へと向かった。
近づくとゆっくり扉が奥へと開く。
紅茶缶の中身は、本だった。
「うっわぁ……圧巻ですね。これ、全部、本」
本、本、本。全ての壁に設える限りの書架を備え、その全てにぎっしり詰まった書籍。
どこを見ても、本が目に入る。
この建物自体が本で出来ていると言われても信じてしまいそうなほど。
床は全て青みのある緑の毛足が短いカーペットで覆われ、音は吸い込まれ、閲覧の為にある一番大きなチョコレート色の長机に至ってはどこの食堂で使用されるものかと言うほど長い。
基本は机と同色の椅子は背もたれと座面に紺のベルベット生地を張ったクッションがあり、デザインはクラシックだが意外と快適らしい。
机の上は勿論、館内の至るところに緑のランプシェードを持つ大小様々な読書灯が静かに辺りを照らしている。
天井の一番高い所には、浮遊光源の球体が寄生木のように枝分かれしたシャンデリアの幹に集っていて。
ぐるりと螺旋を描く階段と踊り場を見上げると首が痛くなりそうな規模だ。
入館してすぐ横には司書カウンターがあり、貸し出しはしていないものの、検索や書庫の本を取ってくるサービスを行っている。変わり種の業務としては、クッション貸し出し。
「クッション……貸し出し?」
「そう」
サラの視線の先を追えば、平日でもチラホラ見える利用者達が思い思いの場所でクッションを持って寛いでいる。
「好きなだけ、持っていって、好きな場所、で、読める、よ」
よくよく見れば、何か館の一角にもはや巣と呼べるクッションの塊が見えた。なお、閉館時にはきちんと返却するのがルールである。
「飲食、は、良いけど、匂いの強い、の、とかは、ダメ。あと、汚損は弁償することに、なる」
「まあ、そうですよね」
「あと、クッション、以外にも、遮音のベールも、貸し出してる」
被るもよし、簡易の更衣室みたいに骨組も一緒に貸し出しているので蚊帳みたいに囲うもよし。
それぞれが快適と思える環境構築が可能なように気が配られている。好きなように読書しやすい場所が作れて、テーマは限定されているが好きなだけ本が読めるというのは、本好きにはたまらない。
「時々、住めないか、交渉してくる、のも、いるって」
「あ、あはは……。なるほど。好きな人にはたまらない空間みたいですもんね」
ミウも本は好きだが、取りあえずここにいるのはガチ勢。
「読んでく?」
「いえ。回りきれなくなるともったいないので、今日は無しで」
ミウとサラは自分の世界へ楽しくダイブしている住人達を見てから、そっとその場を後にした。
再び戻った入城してすぐの広間を見ると、図書館と反対側には先程説明のあったレストランのお洒落な入口があり、入ったのとは反対側にはその先に続く通路が見える。
「こっち」
サラが足を向けたのは、サービスカウンターの横にある上階への階段だった。ミウは城の内装に見惚れつつ、慌ててサラの後を追った。
「わぁ、ここ、何ですか?」
辿り着いたのは四階分の高さがある高い天井と百人以上が一度に入る大広間。
「舞踏広間」
床はピカピカで、一階とはまた趣の違う幾何学模様が美しい。
高い天井に合わせた大きく高さのあるガラス窓の外には湖中の風景が淡く蒼く陽光に揺らめいて、幻想的なまでに綺麗だ。
「サラ先輩? 何やってるんですか?」
ふとサラを見ると、何やら壁にはめ込まれた端末を操作している。
「丁度、いい、から。ミウの、成果、見ようと思って」
「え」




