表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/34

10.どっちが、良い?

10.どっちが、良い?




 転移石(トラベルノーツ)で第四階層にあるミウの家から第一階層の水族館(アクアリウム)がある場所の入口まで一瞬にして移動する。

 白く塗られた木製の可愛らしい小さな(さく)に囲まれた長閑(のどか)な村といった雰囲気で、『アクアリアス』と書かれたアーチが出迎える観光地。

 平日の今はただただ静かに湖畔(こはん)の村として(たたず)んでいる。

 宿泊施設とキャンプ場は横目に、ミウとサラはアクアリウムの入場口(エントランス)がある建物へと向かう。

 白い壁と青い屋根の綺麗な建物で、迎賓館(げいひんかん)とか貴族の屋敷と言っても通じそうだ。

 天気も良く大きく開かれている両開きの扉をくぐり、大理石の床を踏む。すると目の前に「ようこそアクアリウム・ラグーンへ!」と書かれた映像が表示され、数秒でその表示は切り替わり、事前受付済みか、それともこれから受付かを問う。

 今回は事前受付済みなので(ちゅう)に浮く項目の受付済みに触れた。

 再び表示は切り替わり、受付をした携帯端末をかざすように指示が出たのて従うと、床に矢印が表示される。真っ直ぐに向くのは『案内受付(サービスカウンター)』、その右斜(みぎなな)め先に向く矢印が指しているのは『食料預り受付(フードクローク)』と『荷物受付(クローク)』だ。

「先に、案内受付」

 そう言ってサラが真っ直ぐ進む後ろにミウも続く。

「いらっしゃいませ。ようこそアクアリウム・ラグーンへ。事前受付のお客様ですね」

 受付の女性が笑顔で出迎え、受付(カウンター)の上に、角皿(スクエアプレート)の上に載せたブレスレットを置く。

「ただいまアクアリウム二号館のオープンカウントダウンキャンペーンを行っておりまして、ご来館下さったお客様にノベルティブレスレットをプレゼントしております。ペアとシングルでご用意しておりますが、いかが致しますか?」

 ペア、として示されたのはピンクと水色のデザインは一緒だが色違いのもの。シングルはペアとはデザインが違い、色は無色透明。

 どちらも海月(クラゲ)に見立てた石が一つ、その左右に泡やヒトデを模したチャームがある。

 ペアの方の海月は華海月(ハナクラゲ)と呼ばれるもので、名の通り小花模様が本体にある。その模様が入った丸い石がそれぞれピンクと水色で。

 シングルは星海月(ホシクラゲ)でやはり名の通りの模様が入っている。

「どっちが、良い?」

「あ。えーと……」

「補足致しますと、ペアは複数人でご来館下さったお客様限定となっております」

 シングルはいつでも一人でくれば貰えるが、ペアは誰かと来ないと貰えない仕組みらしい。あざとい。

「…………ペア、が欲しいです」

「はい。ではこちらをどうぞお受け取り下さい」

 サラが一旦角皿からブレスレットを取り、どっちが欲しいの? と首を(かし)げた。

 ミウはどちらの色も嫌いではない。だがサラにピンク……という所まで考え。

「ピンクの方ください」

 受け取ったブレスレットをせっかくなので()める。海月石はピンクだが、その左右にあるのは無色透明なのでワンポイントで甘過ぎなくてバランスが良い。わりと可愛くてミウの気分が少し上がる。

「お弁当、預ける、よ」

「はい」

 今度は二つのクロークがある方へ。お弁当が入ったバスケットを食料(フード)の方へ預ける。引き換えのドッグタグを受け取った。

 ここで預けたものは、内部のピクニックエリアにあるクロークで引き出せるのだ。持ち歩かず手ぶらで楽しめて便利なサービスである。なお、危険物でないかなどのチェックも通されるので安全対策も完備だ。

 身軽になり、いよいよ水族館の内部へ。

 進んだ奥の広間には、下へ続く自動階段(エスカレーター)があり、反対側には上りの自動階段が見えた。帰りはあちらから上がって出る仕組みだ。

「わぁっ。これが……」

 自動階段は二人が一枚の階段板(ステップ)に横並びで乗れる幅。ゆっくり螺旋(らせん)を描いて地下へと降りるその道は、降りはじめてすぐにガラス張りで水の中。

 大規模な螺旋階段が下りと上り、合わさってガラスの円柱の中にある珍しいものだ。

 下に降りていくに従って水の色が青さを増していく。底である水族館に着くと、蒼灰色(ブルーグレイ)の柔らかなカーペット床とまるで温室のようなガラスドームの高い天井があるエントランスホールが出迎えた。

 ホールの中央には巨大な水球(すいきゅう)が浮かび、それは水の流れで出来ている。小さく色鮮やかな小魚が水球の中や水面を泳ぎ回るのが見えた。

 どんなに水面を泳いでも、小魚が水球から落下する事はなく、サラによれば重力などの操作がされた特別な水槽(すいそう)に近いものなのだと言う。

「詳しいんですね。サラ先輩」

「開発、少し、手伝った、から」

「へえ……」

 と、そこまで考えて、ミウはビクッとする。


 ――あ。これ、怒られる? シェルディナード先輩の所で働いてるのに、詳しい内容知らないって。


 そろりと隣に立つサラを見上げた。

「?」

 ミウの視線にサラが気づいて顔を向ける。が、それだけだ。

「どうか、した?」

「あ。いえ。何でもないデス」

 まあ、何でもかんでもサラだって怒るわけではない。ミウはホッとしつつ、気分を切り替える為に辺りを見回した。

 今年も頑張りましょう。

 明日も更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ